半減した奄美のアユ 産経新聞MSNより
奄美大島のリュウキュウアユには太平洋側に生息するグループと南シナ海側のグループがある。その昔は両方のグループが奄美大島と加計呂麻島の間の瀬戸内海峡を介して交流していたと思われるのだけれど、個体数が減少して独立したグループになったらしい。この辺りの研究は澤志さんが20年ほど前アイソザイムから明らかにしている。
さて、その二つのグループだが、住んでいる環境がずいぶんと違っている。南シナ海のグループの住む川内川の河口部(焼内湾)にはマングローブが全くない。対して 太平洋岸のグループの最大の生息地 役勝川、住用川の河口域(住用湾)には西表島に次ぐマングローブ林が広がっている。
この辺りのことは新聞記事にあるとおりだ。焼内湾のリュウキュウアユ、具体的には宇検村河内川のリュウキュウアユは極めて危険な状況にある。
ボクはこの島のアユを守ろうと21年ほど前から行動してきた。書き出したらきりがないほどの時間と想いをこのアユたちと供にしてきたのだが、そのことについては「宿題」としよう。
そして川内川河口を何とかしようと、こんなことを企てているのだが…。
ところで、長辻さんが期待を込めて書いている山中のダム湖だが、ボクはダム湖陸封という可能性を検討に15年ほど前に住用川のダム湖を調べたことがある。ある雑誌の特集として「探検」したのだが、その経験から、その計画にはいくつかの問題があると思っている。
1.そのダムの優占種はキバラヨシノボリなのだが、そのヨシノボリとアユが餌資源を巡って競合する可能性がある。
2.アユの生息は可能だが、そのダム湖にはアユの産卵する「良好な」場所がない。(上流の流入部分が砂防堰堤になっている)全くできないというわけではないが!
3.フォレストポリス(大和村)の開発でかなり土砂が流入した。堆砂が進んで容量がかなり減少している。
4.未確認だが、そのフォレストポリスからコイが流れ込みかなり大型の個体もいるという。地元の方から聞いた話だ。これなどは、やはり希少種であるキバラヨシノボリにとっても脅威だろう。
5.奄美にはほかにもダムがあるのだが、いずれにしてもダム湖に移動させるリュウキュウアユを現在の状態の河内川から、安全に効率的に移動できるものかどうか?その点が一番の問題だと感じている。
ところで、長辻さんには誰も説明しなかったのかな?リュウキュウアユは「年魚」とはかぎらないのだけれどもね。
☆テキスト版
【生きもの異変 温暖化の足音】(19)半減した奄美のアユ (1/2ページ)
2008.5.19 09:27
「温暖化で、奄美大島のリュウキュウアユの将来が気がかりです」
鹿児島大学水産学部の四宮明彦教授は語る。
二十数年前には、島内の河川に4万匹以上いたリュウキュウアユが激減しているからだ。近年は半減以下の状態になっている。
リュウキュウアユは、本州などにいる普通のアユの亜種である。
アユは低水温を好むサケの近縁種でありながら南にまで生息する魚。そしてリュウキュウアユは、日本列島の最南端に分布する仲間なのだ。
リュウキュウアユは沖縄にもいたが、1970年代末に絶滅した。今では奄美大島の個体群が残っているだけだ。九州や四国、本州のアユと比べて、リュウキュウアユは小型であるだけでなく、姿形も違っている。体ががっちりしていて、鱗(うろこ)も粗いし、胸びれの筋の数は少ないのだ。
150万年から100万年前に、奄美大島や沖縄は大陸と日本列島から切り離され、すんでいたリュウキュウアユの先祖も、独自の進化をとげることになったのだ。
◇
リュウキュウアユは、四宮教授らのグループの調査で、昨年1万8900匹、一昨年1万6700匹が確認されている。奄美大島の主要4河川に生息する総数だ。
過去には大激減した年もある。90(平成2)年と91年には大型の台風で川が荒れ、1600匹と3900匹にまで減った。95年と98年にも激減しているが、これらは渇水と、道路工事による赤土が川に流入した影響だった。
琉球大学や東京大学、九州大学、水産総合研究センター、鹿児島県環境技術協会の研究者らも加わった最近の研究で「水温上昇」も危険因子として注目されるようになってきた。
奄美大島のリュウキュウアユは、島の中南部の東西両岸の湾に河口を持つ川にいる。西岸が埋め立て地の広がる焼内(やけうち)湾で、東岸がマングローブの干潟が残る住用(すみよう)湾だ。リュウキュウアユの減少は、焼内湾の河内(かわうち)川の方が住用湾の住用川と役勝(やくがち)川より激しい。
その差の理由は、仔魚(しぎょ)が湾内に下り始める12月の湾の海水温が違うことにあった。住用湾の18・7度に対し、焼内湾は21・3度で、2・6度も高かった。冷水性のこの魚にとって、ひ弱な幼少期の高水温は命取りだったのだ。
「このまま温暖化が進むと焼内湾は無理になるかもしれない」。東大海洋研究所の西田睦所長も憂慮する。水温と仔魚の生存率の関係は、四宮教授らの飼育実験でも確認済みだ。
◇
今、奄美大島では海辺の湾から川の中流域に向かってリュウキュウアユの子供が遡上(そじょう)している。
本州などのアユは秋に産卵するが、リュウキュウアユの産卵は11月末から翌年の1月にかけてと遅い。
だが、遡上期は本州と違わない。リュウキュウアユの子は、温度に追われて川を上る。5月の海の温かさには耐えられないのだ。
アユの寿命は1年限り。だから、その年の環境次第で全滅し得る。
四宮教授らは温暖化による暖冬からリュウキュウアユを守るため、山中のダム湖に群れを避難させる保全策の検討も開始した。陸封型にして、種を保存する窮余の策である。(長辻象平)
奄美大島のリュウキュウアユには太平洋側に生息するグループと南シナ海側のグループがある。その昔は両方のグループが奄美大島と加計呂麻島の間の瀬戸内海峡を介して交流していたと思われるのだけれど、個体数が減少して独立したグループになったらしい。この辺りの研究は澤志さんが20年ほど前アイソザイムから明らかにしている。
さて、その二つのグループだが、住んでいる環境がずいぶんと違っている。南シナ海のグループの住む川内川の河口部(焼内湾)にはマングローブが全くない。対して 太平洋岸のグループの最大の生息地 役勝川、住用川の河口域(住用湾)には西表島に次ぐマングローブ林が広がっている。
この辺りのことは新聞記事にあるとおりだ。焼内湾のリュウキュウアユ、具体的には宇検村河内川のリュウキュウアユは極めて危険な状況にある。
ボクはこの島のアユを守ろうと21年ほど前から行動してきた。書き出したらきりがないほどの時間と想いをこのアユたちと供にしてきたのだが、そのことについては「宿題」としよう。
そして川内川河口を何とかしようと、こんなことを企てているのだが…。
ところで、長辻さんが期待を込めて書いている山中のダム湖だが、ボクはダム湖陸封という可能性を検討に15年ほど前に住用川のダム湖を調べたことがある。ある雑誌の特集として「探検」したのだが、その経験から、その計画にはいくつかの問題があると思っている。
1.そのダムの優占種はキバラヨシノボリなのだが、そのヨシノボリとアユが餌資源を巡って競合する可能性がある。
2.アユの生息は可能だが、そのダム湖にはアユの産卵する「良好な」場所がない。(上流の流入部分が砂防堰堤になっている)全くできないというわけではないが!
3.フォレストポリス(大和村)の開発でかなり土砂が流入した。堆砂が進んで容量がかなり減少している。
4.未確認だが、そのフォレストポリスからコイが流れ込みかなり大型の個体もいるという。地元の方から聞いた話だ。これなどは、やはり希少種であるキバラヨシノボリにとっても脅威だろう。
5.奄美にはほかにもダムがあるのだが、いずれにしてもダム湖に移動させるリュウキュウアユを現在の状態の河内川から、安全に効率的に移動できるものかどうか?その点が一番の問題だと感じている。
ところで、長辻さんには誰も説明しなかったのかな?リュウキュウアユは「年魚」とはかぎらないのだけれどもね。
☆テキスト版
【生きもの異変 温暖化の足音】(19)半減した奄美のアユ (1/2ページ)
2008.5.19 09:27
「温暖化で、奄美大島のリュウキュウアユの将来が気がかりです」
鹿児島大学水産学部の四宮明彦教授は語る。
二十数年前には、島内の河川に4万匹以上いたリュウキュウアユが激減しているからだ。近年は半減以下の状態になっている。
リュウキュウアユは、本州などにいる普通のアユの亜種である。
アユは低水温を好むサケの近縁種でありながら南にまで生息する魚。そしてリュウキュウアユは、日本列島の最南端に分布する仲間なのだ。
リュウキュウアユは沖縄にもいたが、1970年代末に絶滅した。今では奄美大島の個体群が残っているだけだ。九州や四国、本州のアユと比べて、リュウキュウアユは小型であるだけでなく、姿形も違っている。体ががっちりしていて、鱗(うろこ)も粗いし、胸びれの筋の数は少ないのだ。
150万年から100万年前に、奄美大島や沖縄は大陸と日本列島から切り離され、すんでいたリュウキュウアユの先祖も、独自の進化をとげることになったのだ。
◇
リュウキュウアユは、四宮教授らのグループの調査で、昨年1万8900匹、一昨年1万6700匹が確認されている。奄美大島の主要4河川に生息する総数だ。
過去には大激減した年もある。90(平成2)年と91年には大型の台風で川が荒れ、1600匹と3900匹にまで減った。95年と98年にも激減しているが、これらは渇水と、道路工事による赤土が川に流入した影響だった。
琉球大学や東京大学、九州大学、水産総合研究センター、鹿児島県環境技術協会の研究者らも加わった最近の研究で「水温上昇」も危険因子として注目されるようになってきた。
奄美大島のリュウキュウアユは、島の中南部の東西両岸の湾に河口を持つ川にいる。西岸が埋め立て地の広がる焼内(やけうち)湾で、東岸がマングローブの干潟が残る住用(すみよう)湾だ。リュウキュウアユの減少は、焼内湾の河内(かわうち)川の方が住用湾の住用川と役勝(やくがち)川より激しい。
その差の理由は、仔魚(しぎょ)が湾内に下り始める12月の湾の海水温が違うことにあった。住用湾の18・7度に対し、焼内湾は21・3度で、2・6度も高かった。冷水性のこの魚にとって、ひ弱な幼少期の高水温は命取りだったのだ。
「このまま温暖化が進むと焼内湾は無理になるかもしれない」。東大海洋研究所の西田睦所長も憂慮する。水温と仔魚の生存率の関係は、四宮教授らの飼育実験でも確認済みだ。
◇
今、奄美大島では海辺の湾から川の中流域に向かってリュウキュウアユの子供が遡上(そじょう)している。
本州などのアユは秋に産卵するが、リュウキュウアユの産卵は11月末から翌年の1月にかけてと遅い。
だが、遡上期は本州と違わない。リュウキュウアユの子は、温度に追われて川を上る。5月の海の温かさには耐えられないのだ。
アユの寿命は1年限り。だから、その年の環境次第で全滅し得る。
四宮教授らは温暖化による暖冬からリュウキュウアユを守るため、山中のダム湖に群れを避難させる保全策の検討も開始した。陸封型にして、種を保存する窮余の策である。(長辻象平)
ご無沙汰です。お元気ですか。
たぶん。ミナミからの台風エネルギーのせいさ!