リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

岐阜新聞 「鮎の12か月」 連載 2007年 11月

2008-01-01 21:30:53 | アユの12ヶ月 川面からの記録
 産み落とされたアユの卵はどこにあるか。

 産卵の瞬間、雄の鮎、雌の鮎がひとかたまりになって川底の小石の間に潜り込む。産卵はその時に行われて、受精するのも小石の中だ。

 産卵する場所というのは、川の流れが小石の間に潜り込んでいく場所なので受精した卵はそのまま小石の間に吸い込まれ、そこで孵化するまでの時を過ごす。
 小石の間で卵は写真のように、小石から少し離れた格好で表面にくっついている。卵から柄のようなものが出ているように見えるのは、自然の巧妙な工夫の一つだ。
もし、卵がべったりと小石の表面に付いていたとしたら、卵の表面に泥などがついて卵が窒息して死んでしまう。こんな風にすこし小石から離れて、水の流れに揺れているから、卵の表面には泥が付いてしまうことはない。

 受精卵はおよそ1ミリメートルの大きさだ。孵化するまでの時間は水温によっても違うのだけれど、水温18℃で2週間くらい。やがて10ミリくらいの仔魚が生まれる。
仔魚はほとんど泳ぐ力はなく、お腹の部分に残った卵黄をエネルギーにして何も食べなくても2週間くらいは生きている。その卵黄をつかって海に下っていく間に成長して、自ら餌を食べるようになるのだが、孵化して4日目くらいから餌を食べ出さないと生きていくことは難しい。

 生まれたばかりの鮎の餌は、プランクトンと呼ばれる小さな動物だ。そしてプランクトンは川の下流、海水と川の水が混ざり合っている場所にたくさんいる。
海の水と川の水が混ざり合うと、川の上流から運ばれてきた栄養分が塊となって、プランクトンを増やしている。

 長良川で海水と川の水が混ざり合うのは、木曾三川公園のあたりから下流だった。
長良橋を孵化した仔魚が、木曾三川公園まで川の流れで下っていくには、およそ30kmの道のり、結構な時間が掛かっただろう。
ここで、自然は一工夫している。

 長良川では名神高速道路の橋まで下ると潮は上がってこないけれど、潮の満ち引きで水面が上下した。満潮には押し上げられた川の水が上流に押され、干潮時には下流に向かって早く流れていた。

 川を下っていく鮎の仔魚は昼間ジッと河床にいて暗くなると水面に向かって浮いてくる。釣りをする方はよくご存じだと思うのだけれど、秋から冬にかけて、潮がよく引くのは夜の潮だ。暗くなるのを待って河床から浮いてきた仔魚は、夜の引き潮に乗って、速やかに下っていくことが出来た。

 泳ぐ力の弱い仔魚でも、河床から水面までほんの少し泳ぐだけで潮の満ち引きの力をつかって下っていくことが出来たのだった。

 川に海水が上がってこないように、潮の干満で水の逆流が無いように、今の長良川には河口堰が作られている。孵化した鮎にしてみれば、餌場は遠くなるし、引き潮は利用できないし、難儀なことになっているということだ。

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