先だってライブを終えて帰宅。
玄関ドアを開けたら
「麻呂!ねーちゃんで」
「ねーちゃんが帰って来た」
リビングから母の声がする。
まだ靴も脱がない私を
見るまでもなく声が続く。
「あんたを待っとったんで。」
「ずっと外を見とったんで。」
と言う。
車から降ろした荷物が山のよう
だった。
音響機材を持参する場合は
こんなもんじゃないけれど。
車の荷物をとりあえず玄関に。
その荷物の向こうに麻呂登場。
甘えたくてもそばに来られない。
困惑気味の麻呂をひとしきり
ヨシヨシする。
かわいそうに白内障が進み
最近急にまた悪くなくなった。
自分のお茶碗が見えないから
ご飯が入っているかどうかも
見えない。
足元が見えないので玄関から
上がれなくなった。
物言わぬ彼は見えないだけじゃなく
足腰が痛んだりたまには
内臓も不調かもしれない。
不安になっても仕方ない。
眠っている時は安心しているが
ひとたび目が覚めると不安気に
私を探して後追いをする。
昨日は昼前から不在にした。
今朝、帰宅するや
「昨日は麻呂が大変だった」と
母が言う。
夕方麻呂がいないことに気づき
探しに出るとお隣さんの
裏庭つまり崖下に居た。
高さはゆうに2メーター以上。
転がり落ちたのだろう。
見に行くと溝があって確かに
泥がたまっていた。
麻呂は泥だらけだったそうだ。
崖下を覗き込んだ母も
そのままずるずるっと
転がり落ちたという。
泥だらけの麻呂を抱えて
畠を横切って帰って来たそうだ。
母は脚が不自由。
普段は自分の体を運ぶのが
やっとなのに?!
緊急事態に「火事場の馬鹿力」的
パワーを発動したんだろう。
先だっても麻呂はかなりの
高さから田んぼに落ちた。
私が見ていたので
あの時はすぐに助けられた。
今回はひたすらラッキーだった。
「散歩」とはおしっことうんち
のこと。
おじいちゃんになってから
回数が半端ない。
その都度リードをつけられない。
フリーダムに歩かせて来たが
考えなくてはいけない。
それでなくてもこの頃は
家内を徘徊する時がある。
国道に出て車にはねられるか
そのまま帰って来られなく
なりそうだ。
泥まみれになった麻呂を
母がふき取ったそうだ。
顔や頭、胸元がちょっと
黒ずんだくらいでけがは
無かったのだろう。
話を聴き終えた私は
朝から猛烈な眠気。
麻呂はたいていリビングの
こたつの中にある
自分のベッドで居眠りしている。
が、麻呂の気配で目が覚めた。
そこに立っていた。
何か言いたげだが分からない。
抱っこしたら眠そうな顔だが、
ベッドに入ると出てくる。
私の顔が見えると安心する。
ベッドをこたつから出して
私の顔が見える場所で
やっと身体を横たえた。
それでも気づくとまたそばに
立っている。
溝にはまってから暫くの時間、
麻呂は心の中で私に助けを
求めていたかもしれない。
もしも真冬だったら・・
夜中か早朝だったら・・
と思うとぞっとする。
この頃何かと忙しい。
こんなことがあると留守に
するのは心が痛む。
私が居れば麻呂も母も
安心しているのだし。
「ごめんね。お姉ちゃんを
待っていたんだね。」と、
麻呂の頭をなでながら思う。
最近始めたフラは片道
1時間少々掛かる。
その上何やかやで
月1回しか行けない。
不定期のギターレッスンを
受けることにしたとだし、
麻呂と過ごせる残りの時間を
思うと後悔しそうだ。
相変わらずちょっとだけ
離れた場所から立ったまま
じっとこちらを見ている麻呂。
母が「どうしたんかの?」
と笑う。
物言いたげでどこか
不安げな表情。
と思うと急に踏ん張った。
はい、おうちの中で排便。
外で踏ん張ってもたいてい
空振りするがめでたく完了。
不安げな面持ちはどこへやら。
しっぽが誇らしげにきゅっと
上向きになって揺れている。
さっさとベッドに。
朝からウン〇したかっただけ
なのだった(爆)
無駄に深読みしたみたい(笑)
ま、それでもやっぱり
フラは1クール終えたら
休止しよう。
「麻呂が待っとった」
母は私にそう言うが
実は母が私を待っている。
私が家内にいるかを忘れて
四つん這いで階段を上がり、
探しに来るからね。
母との生活もそれほど
長くはなかろう。
母の認知機能がダダ下がり
なのは・・私に嫌われて、
逝くのだろうと思う
ことがある。
認知機能低下は母の愛情
なのかもしれない。
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