半袖で過ごした翌週、
いきなり冬が来た。
午後から降ったりやんだりの
「荒天」予報。
身支度をするばーちゃんを見て
置いてけぼりを警戒した麻呂は
尻尾が下がりに下がって、
お尻の下にもぐらせていた。
人にも尻尾があったら
気分が丸わかりだ(笑)
麻呂も行くんだよと声を掛ける。
多分理解した。
愛犬とお泊りできる宿ありき。
行き先は山陰の皆生温泉。
ばーちゃん(母)は杖をついて
麻呂は大喜びで車に飛び乗り
出発した。
母は食べ物にあまり関心がない。
お昼は車内で。
以前から海岸線を遊覧する船に
乗りたかったがあいにく午後から中止。
夕陽が売りらしい宍道湖の遊覧船も
この寒さでは意味がないな~と
運転しながら考えあぐねる。
で、島根県松江城のお堀の遊覧船を
思い出した。
どうしても船なのね?と
自分でツッコミ入れたけれど、
あまり歩けないばーちゃんと
散歩嫌いの老犬を連れて
旅するには制約が多い。
何十年ぶりかに乗った遊覧船。
乗るや作り物のような水鳥の
お出迎えがあったり、
お堀に突き出た大木のしなり具合が
これまた作り物のようで
テーマパークみたいだった。
テーマパークが真似しているのにね。
橋をくぐる時は船の屋根を
下げるのに合わせて人も前かがみになる。
ほぼ膝に胸がつくくらい!
ピンクのハートの浮き輪が
屋根を下げる印です。
船頭さんのご当地ソングも聞けて
なかなかに楽しかった。
途中で雨がざ~~~と降り込んで
こちらもなかなかなスリルだった。
大根島を右手に見ながら
走る道路の両サイドは海だ。
海を駆けあがって行く大きな橋。
その先が見えないから
海へ突っ込むんじゃないかと
怖いくらいだった。
そんなこんな珍なる光景を母は
大いに喜んだ。
薄暗くなった頃、米子市に到着。
食事なしの宿。
スーパーの総菜コーナーが
想像を絶する品ぞろえで
選ぶのに手間取った。
今回の宿は2度目だったが
母はまるっきり覚えていなかった。
どこに行っても覚えていないから
常に新鮮ではある(笑)
母はお風呂嫌いだが
麻呂が落ち着いたので
寝ている隙に大浴場へ。
満足の母だが着替えを持参せず。
私は持って行こうと言ったけれど
「入らん」と固辞したのは
あ・な・たです。
「ほうだったかいの~(そうだっけ)」
と長閑な母だ。
ま、お風呂に入らないよりまし。
ボディーシャンプーで洗髪したらしいが、
取り立てて問題なかった。
年を取っておしっこに近くなった
麻呂をその都度
外に散歩に行かせなくては。
ルームキーをエレベーターの
鍵穴に差し込み作動させる。
自動ドアを潜り抜けて
雨の中を出たり入ったり。
真夜中に気配を感じて
目覚めると麻呂が。
ああ、おしっこしたいのね。
深夜に浴衣で外に出るのも
仕方なし。
リード嫌いの麻呂を待つ。
数分歩いて気が済んだら
帰って来るおりこうさん。
枕が変わると根付けない母も
私もまずまず寝られた。
午前5時半起床。
薄暗い中、予報通りの激しい
暴風になっていた。
至近距離に見える波は
我々からすれば台風並み。
あいにくの荒天。
どんな日になるのやら。
(続く)
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