入湯求湯巡礼行記

これまでに訪れた温泉を紹介します。
時代に逆行し、写真は基本的に載せません。
変換できない残念な名称のブログです…

月岡温泉 熊堂屋 (新潟県新発田市) ★★★★★

2021-07-25 | 中部の温泉

※2011 年 8 月に廃業しました。

玄関から声をかけると、女将さんが出てきてくれ「ウチは小さな浴槽しかないけどそれでもいいか」、「ちょっと広めのもあるから、先に小さい方に入って、その後、広い方で寛ぐとよい」などいろいろと説明をしてくれた。600 円の入浴料を払うのに 1000 円札を出したら「今の若いのは金持ちね。お釣り持ってくるから待っていて」と。後で知ったことだが、話好きの名物女将だったよう。
浴室は男女別ではなく、貸切で使用するようだ。生活感あふる脱衣所で、なにか民家の風呂を借りているような感覚になる。

浴室を戸を開けると、澄んだ深緑色の湯が丸い湯舟に湛えられていた。なんとも美しい色だ。硫黄の香が立ち込め、水面には油膜が浮いていた。パイプから注がれた湯は、湯舟の縁の細い切れ込みから注がれた分だけかけ流されていたが、浸かると全周からあふれ出した。やや熱めの湯で、黒い湯の花が舞い、口に含むと苦味とアブラ臭がぶわっと広がる特徴的な湯だった。大変に温まりがよく、この浴室で出たり入ったりを繰り返し、だいぶ時間を使ってしまったため、もう一方の浴室はほとんど記念入湯のような駆け足の入湯となってしまったが、浴室の隅の湯舟は 1 人でも足は延ばせないような小ぶりであった。

特徴的な湯、使い込まれた浴室の雰囲気と大満足だったのだが、「小さい方に入ってから広い方の浴槽」の指図を無視してしまったため、湯上りは女将にとやかく言われることになった。


(2009 年 4 月 12 日)


梅ヶ島温泉 清香旅館 (静岡市葵区) ★★★

2020-11-23 | 中部の温泉

かなりの山の中であるが、ここも静岡市内である。嘘か誠か、開湯は神話の時代までさかのぼり、応神天皇から黄金の湯の名称を賜ったと伝わっている。徳川の時代になると、金の産地としても重用され、大御所として駿府城を居城としていた家康も入浴した記録が残っている。

清香旅館の浴室は内湯のみで、高低差のある 2 段の浴槽の上段が非加温の源泉かけ流しで、下段は加温循環となっている。上段の湯は下段にオーバーフローし続けているので、下段も循環かけ流し併用になろう。循環湯口はちょうど上段と下段の仕切りの辺りにあり、循環湯が仕切りではねて上段にコンタミしていたので、他に誰もいなかったのをいいことに湯桶を使ってガードを築いて入浴した。
上段の非加温浴槽は不感温帯で、白い浮遊物、腐ったような硫黄臭と味、ツルスベ感のある湯であった。下段は適温で、白い浮遊物はこちらの方が多かった。

梅ヶ島温泉は、12 の源泉を混合して各旅館に分湯している。温度がやや低いため、加温しているところがほとんどであるが、ここは非加温源泉も味わうことができるのでお勧めである。


(2019 年 11 月)


◆源泉情報◆
源泉名:混合泉 (梅ヶ島 1 号~12 号)
泉質:単純硫黄泉
湧出量:186.5 l/min
泉温:38.2℃
成分:pH9.6、溶存物質 248 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 65.8 (96.62) 炭酸イオン 44.0 (47.27)
メタケイ酸 58.1 硫化水素イオン 12.5 (12.22)
ガス成分 0.0 チオ硫酸イオン 11.4 (6.43)

分析日:源泉名、湧出量、泉温は「梅ヶ島温泉郷国民保養温泉地計画書(環境省、2017 年、分析は 2015 年 11 月) から、他は 2009 年 10 月 22 日の分析表から。

採水地では、ガス発生ありとのこと。


山口温泉 (山梨県甲斐市) ★★★★★

2020-09-13 | 中部の温泉

1986 年、ブドウ畑を掘削して湧出した温泉。山口温泉のある旧竜王町域は、70 年に人口が 1 万人を突破すると、86 年まで毎年 1000 人を超える増加を見せ、約 3 倍の人口に到達している。急激に農地が住宅地へと変貌して行く中で、誕生した温泉である。

住宅地の中にある普通の家のようで、外観からは温泉らしさは感じられない。内湯、露天とも石造りの浴槽で、かけ流し量が多い。特に内湯は竜頭の湯口からドバドバと注がれ、すべてかけ流されている。黄褐色透明の泡々の湯で、8 人サイズの浴槽の 1/3 程度は泡で白濁して見えた。露天は石の湯口が 2 つあり、こちらも十分なかけ流しである。露天ではモール臭も感知された。

好みの黄色く澄んだモール泉で、ドバドバのかけ流し。モール系の良泉が多い山梨県内でも屈指の名湯と認識しているが、北海道の「民宿つるい」が廃業し、大分の「北之園温泉」が休業状態の今、全国でも最高のモール泉かもしれない。


(2017 年 4 月)


◆源泉情報◆
源泉名:-
泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
湧出量:686 l/min
泉温:41.6℃
成分:pH7.56、溶存物質 1341 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 327.9 (81.35) 炭酸水素イオン 532.3 (50.69)
マグネシウムイオン 16.9 (7.93) 塩化物イオン 295.7 (48.4)
メタケイ酸 109.8 遊離二酸化炭素 48.8

分析日:1986 年 8 月 18 日


三蔵温泉 名古屋クラウンホテル (名古屋市中区) ★★

2020-08-16 | 中部の温泉

名駅から徒歩圏内にあるビジネスホテル。立ち寄り入浴もできるが、紀伊半島遠征の起点にと宿泊で利用した。

浴室には 20 人くらいは入れそうな大きな浴槽が 1 。露天はないが、窓が広くとられていて、内湯も閉塞的には感じない。湯は笹濁りで、臭素臭がした。加温、循環だが、非加温源泉と思しき投入もあり、浴槽の縁から静かにかけ流されていた。

大都市のど真ん中にあるビジネスホテルとしては、十分なレベルだろう。


(2016 年 9 月)
※お気に入り度は湯使いや浴室の設えによるもので、客室や食事は評価対象外としています。


◆源泉情報◆
源泉名:三ツ蔵温泉
泉質:単純温泉
泉温:28.7℃
成分:pH8.1、溶存物質 174.1 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

ナトリウムイオン 23.0 炭酸水素イオン 72.0
メタケイ酸 61.2 遊離二酸化炭素 11.1

分析日:2007 年 6 月 4 日


湯の山温泉 グリーンホテル (三重県菰野町) ★★★

2020-08-15 | 中部の温泉

湯の山温泉は、鈴鹿山脈のふもとに立地する温泉で、奈良時代に開湯されたと伝わる古湯である。源泉が枯れたり、他の温泉地に客を奪われ衰退したりと幾度もの危機を乗り越え、現在は四日市市の奥座敷として機能している。

グリーンホテルは、テニスコート 14 面を有すなど、レジャー機能を備えた宿泊施設である。ホテルを冠しているが、部屋は和室なので正確には旅館であろう。浴室には、内湯に 2 つと露天にも 2 つの浴槽があり、2 種類の源泉を引いてかけ流しにしている。内湯の小さい方の浴槽には 3 号源泉が引かれており、オーバーフローが多く、大変気持ち良い。やや黄色に色付いた湯で、ツルスベ感があった。露天にも同じ源泉が引かれており、こちらでは光の関係かうっすら緑色に見えた。眺望があるわけではないが、露天風呂自体が広く、さながら日本庭園のようで解放感は十分に演出されている。こちらもかけ流し量が多く、とてもよかった。一方、内湯の大浴槽には 4 号源泉が引かれており、循環併用で使用されている。源泉の湯温は 30℃ 程度だが、熱めに加温されていた。


(2016 年 9 月)


◆源泉情報◆
源泉名:新湯の山温泉 3 号源泉
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出量:500 l/min
泉温:45.9℃
成分:pH8.6、溶存物質 530 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 155.7 (96.16) 炭酸水素イオン 208.7 (50.07)
メタケイ酸 34.3 塩化物イオン 104.9 (43.34)

分析日:2007 年 3 月 20 日


源泉名:新湯の山温泉 4 号源泉
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出量:140 l/min
泉温:39.1℃
成分:pH8.5、溶存物質 690 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 183.7 (96.50) 炭酸水素イオン 427.6 (86.97)
メタケイ酸 31.1 炭酸イオン 12.9 (5.33)

分析日:2007 年 7 月 30 日


安代温泉 安代大湯 (長野県山ノ内町) ★★★

2020-08-13 | 中部の温泉

安代温泉は、夜間瀬川沿いに展開する湯田中・渋温泉郷のちょうど湯田中温泉と渋温泉の境に位置している。数件の旅館と共同浴場からなる温泉で、渋温泉とは地続きになっている。

大湯は、ジモ専の共同浴場であるが、安代温泉の旅館に宿泊すると鍵を貸してもらうことができる。緩やかな坂道に面しており、上手にも下手にも入り口と脱衣場がある立派な造りである。タイル張りの浴室には湯舟が 1 つ。パイプを伝い、注がれる源泉のほとんどを湯舟から逃がしているが、それでも 45-46℃ はあった。かけ流しで、加水もできるがしばらく誰も入浴していなかったのだろう。ビリビリ感、微石膏臭のある高温の湯で、湯底の一部には灰黒色の沈殿もみられた。湯上りにはさっと渇き、サラサラとした感覚が心地よい良質な芒硝泉であった


(2019 年 11 月)


◆源泉情報◆
源泉名:共益会 11 号ボーリング
泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
湧出量:75 l/min
泉温:91.3℃
成分:pH8.2、溶存物質 1623 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

ナトリウムイオン 362.1 (76.17) 塩化物イオン 533.8 (70.25)
カルシウムイオン 64.6 (15.59) 硫酸イオン 257.0 (24.95)
メタケイ酸 202.3 チオ硫酸イオン 1.4 (0.12)
メタホウ酸 89.5 炭酸水素イオン 38.2 (2.92)

分析日:2012 年 5 月 2 日


大門赤湯鉱泉 (富山県射水市) ★★★

2020-08-04 | 中部の温泉

大門は北陸街道が通り、庄川の川止めなどで足止めを食らった人が利用する宿場町として機能していたらしい。その後は水運を利用して米の集積地とし栄え、昭和の初めごろにはいくつもの料亭や遊郭が建ち並ぶ華やいだ街だったそうだ。大門赤湯鉱泉も昭和 5 年の創業で、料亭をやるのに井戸を掘ったら鉱泉が出たとのこと。

内外、かなり年季の入った佇まいの銭湯で、鄙びマニアには垂涎モノである。浴室は洗い場の奥に湯舟があり、仕切りで 4:1 程度に仕切られたうちの小さな方に鉱泉が張られている。1 人サイズの本当に小さなもので、残りは白湯のバイブラ浴槽だ。赤湯は鉄味系の複雑な味で、透明度は13cmほどだった。

この手の鉱泉は泉質云々ではなく、佇まいを楽しむものだろう。なんとか残って欲しい歴史ある銭湯であるが、オーナーは買い手を探しているよう。


(2016 年 1 月)


◆源泉情報◆
泉質:炭酸鉄泉
液性:アルカリ性
成分:溶存物質 275.2 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg)。

カルシウムイオン 16.9 炭酸水素イオン 113.6
鉄 II イオン 15.0 硫酸イオン 19.5
メタケイ酸 71.5 遊離二酸化炭素 40.6

分析日:1936 年 3 月 13 日


駒の湯温泉 駒の湯山荘 (新潟県魚沼市) ★★★★★

2020-07-19 | 中部の温泉

大湯温泉より山の中に分け入ったところにある一軒宿。住所も魚沼市駒の湯で、番地などはない。昭和 28 年の開湯とのことで、現在は細いながら舗装された道路が走り、車で到達することができるが、冬季は豪雪のため春~秋にかけての営業となっている。

豊富な湯量により、いくつもの浴室に惜しげなく源泉が注がれているそうであるが、立寄りで利用できるのは 1 ヵ所。5 人ほど入れる混浴の湯舟には、中央付近の湯底から大量の源泉が投入されており、水面には 50 cm 程の水柱ができていた。無論、かけ流しである。硫黄臭、泡付きのあるぬる湯で、小一時間ほど浸かっていたが、終始独泉状態であった。

全国的にみてもトップクラスであろうかけ流し量は見事で、言語を絶する名湯であった。余談であるが、日帰り客用の第二駐車場は、空間を埋め尽くすほどの虻が飛び交っていた。


(2016 年 8 月)
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<再訪>
ついに宿泊することができた。立ち寄りでは露天の 1 ヵ所しか入ることができないが、宿泊すると内湯、貸切風呂 2 ヵ所、宿泊者専用の別の露天に入ることができる。もちろん、すべての浴室に入浴した。宿泊者専用の露天はメインの湯口だけでも十分な投入量があるのに、さらに浴槽の横に這わせたホースには 15 cm ほどの間隔で穴が開けられており、ここからもドバドバと源泉が注がれていた。卵味、沼のような臭いのある湯であった。

尚、食事は山菜や川魚料理で、一品一品手が込んでいた。アケビの蔓など、初めて口するものもあって面白かった。山間なので日は早めに沈んだが、夜はランプの灯りのみなので、読書はむずかしい。温泉に入って、早々と眠るのがいいだろう。


(2018 年 5 月)


◆源泉情報◆
源泉名:駒の湯 2 号
泉質:アルカリ性単純温泉
湧出量:1800 l/min
泉温:31.5℃
成分:pH8.6、溶存物質 234 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。

カルシウムイオン 45.4 (72.76) 硫酸イオン 105.1 (74.24)
ナトリウムイオン 19.1 (26.60) 炭酸水素イオン 24.1 (13.22)
メタケイ酸 29.2 塩化物イオン 11.1 (10.51)

分析日:2008 年 10 月 31 日