豊富温泉は大正期に石油試掘の際に湧き出た温泉で、川島旅館はもっとも早く当地にできた温泉旅館である。その後、他の旅館や町営の日帰り温泉施設ができ、日本最北の温泉街として週末には賑わいを見せる。また、油分を含んだ泉質がアトピーに効くとのことで、近年は全国から湯治に訪れる人がいる。
現代受けしそうな外観、真新しい印象を受ける明るい館内は、2016 年に改装したものだそう。浴室には内湯と露天があり、内湯は非加温と加温浴槽に分かれている。露天も加温であったので、滞在時間のほとんどを非加温浴槽に浸かって過ごした。十二分のアブラ臭と塩味の感じられる温泉であったが、直前に「ふれあいセンター」の湯治用浴槽に浸かってきたためか、ややいインパクトに欠ける気もした。しかし、途中から湯口から懸濁した原油が吐き出されてき、浴感が一気に強化された。原油臭、泡付き、ツルツルオイリーな湯であった。
居合わせた男性は、アトピーがひどく、身動きが取れないこともあったというが、学生時代に豊富温泉に湯治に訪れたら劇的な改善がみられため、就職を機に移住してきたのだという。私は、温泉ヲタクでありながら温泉の効能にはやや懐疑的なのだが、これはモノホンの薬効であろう。
(2019 年 6 月)
◆源泉情報◆
源泉名:R-1A 号井、R-4 号井、R-10 号井混合
泉質:含ヨウ素-ナトリウム-塩化物泉
湧出量:151 l/min
泉温:35.0℃
成分:pH7.8、溶存物質 13190 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。
ナトリウムイオン | 4389 (96.31) | 塩化物イオン | 5734 (80.83) |
カルシウムイオン | 54.0 (1.36) | 炭酸水素イオン | 2302 (18.86) |
アンモニウムイオン | 36.6 (1.02) | 臭素イオン | 13.9 (0.08) |
メタホウ酸 | 550.0 | ヨウ素イオン | 13.0 (0.05) |
メタケイ酸 | 35.2 | 遊離二酸化炭素 | 28.4 |
分析日:2015 年 10 月 16 日 ※ガスセパレーター通過後の温泉水タンクにて採水