樅峰苑の建屋は大正 6 年 (1917 年) のもので、有形重要文化財に指定されている。当時は大地主だったそうだが、ルーツは関ケ原の合戦の後、国替えとなった佐竹義宜を慕って常陸国から移住してきた一族だそうだ。強首に温泉が湧いたのは 1953 年の油田調査の際とのことなので、温泉旅館としての樅峰苑はそれ以降となろう。
露天もあるそうだが、立ち寄りで入浴できるのは内湯のみで、湯舟はひとつ。黄土色に濁った湯がかけ流されていた。浴感は強く、夏にはとても長湯できない塩辛い湯で、杉の葉臭も感じられた。
立ち寄りにも快く対応していただけたが、宿泊して大正期の設えの中でゆるりとくつろぐのがこの旅館の醍醐味であろう。予定が押していたのもあり、殊更急ぎ足になってしまったのが悔やまれるが、浴室の窓際に置かれたカエルの置物にはほっこりとした気持ちになった (三猿をモチーフにしたもの)。
(2019 年 8 月)
◆源泉情報◆
源泉名:樅峰苑の湯
泉質:含よう素-ナトリウム-塩化物泉
泉温:49.8℃
成分:pH6.9、溶存物質 22240 mg/kg、主要な成分は以下の通り(いずれも mg、カッコ内はミリバル %)。
ナトリウムイオン | 7930 (93.05) | 塩化物イオン | 12705 (96.51) |
カルシウムイオン | 271.4 (3.65) | 炭酸水素イオン | 727.3 (3.21) |
カリウムイオン | 176.3 (1.22) | 臭素イオン | 70.7 (0.24) |
アンモニウムイオン | 60.6 (0.91) | ヨウ素イオン | 17.5 (0.04) |
総鉄イオン | 6.8 (0.07) | 遊離二酸化炭素 | 95.5 |
メタケイ酸 | 95.6 | メタホウ酸 | 126.5 |
分析日:2018 年 3 月 8 日