【三次元自我モデルと作業】
宮前は守屋の「自我発達の三次元モデル」を応用し、
対象者の特に作業との役割を考察するために自我の三次元モデルを提示した。
三次元の自我:生物的自我・社会的自我・時間的自我。
○生物的自我:衣食住が満たされ心身が健康で快適な
状態にあることを希求する自己。
○社会的自我:他者との親密で良好な関係を希求する自己。
○時間的自我:生きる意味を希求する自我。
三次元モデルでは、人は自我の三側面を充足すべく、様々な作業を求める。
作業は、自我の三側面のそれぞれを充足させる働きをもつものであり、
本人のみならず環境やそれまでの経緯を含む状況に依存するという
バランス上で展開されるものと考えられる。
これらが習慣化したものが役割である。
役割とは外部の期待に応えるものでもある。
作業が役割となることで、その作業がもたらす自我の側面は安定・充足する。
【オートポイエーシスと作業】
オートポイエーシス:自己制作、自己創出とも訳される。
チリ大学の神経生理学者マトゥラーナがヴァレラの協力により、
視覚神経モデルにして生み出したモデルである。
人間というシステムは、何かを取り入れ(入力)、何らかの処理をして、
行動する(出力)ように外からは見えるが、実際に作動しているシステムは
何かを取り入れることが絶対的な作動の条件(前提)ではない。
作動することによって、内部と外部の区別をするものであり、
作動に先立って内部も外部も存在しない。
オートポイエーシス的なシステムでは、開放系と閉鎖系という
二律背反的な古い対立はもはや成り立たないとされている。
システムは自己循環的な再生産という点では閉鎖系であるが、
環境世界との差異という関係を前提としている点では開放系である。
河本は代表的なシステムとして以下のシステムを挙げている。
①心的システム:思考
②神経システム:ニューロン
③身体システム:何気なく行うひとまとまりの行為(要素的行為;寝返り・瞬きetc)
④社会システム:コミュニケーション
上記のシステムは、
①相互浸透:心的システムと社会システム
②相互隠蔽:心的システムと身体システム
③相互投影:神経システムは心的システムを含むなどという様式で
カップリングしていると考えられる。
構成素:各システムを成り立たせているもの。
これらのシステムは固定的なものとして物理空間にあるのではなく、
食事、仕事、遊んでいる時など、時間の経過や状況の変化に伴い変化する。
つまり、我々が一般に「作業をしている」とは、各システムの構成素を産出するように
作動させている状態のことをいうことができる。
患者や子どもは身辺処理活動という身体システムの構成素を
産出すべく訓練しているが、同時にTherapistとの間に成立するコミュニケーションが
構成素となって社会システムをも作動させ始めていると考えられる。
逆に、身体に障害をもった場合に、身体システムの損傷が、
「以前のようにはできない」「お先真っ暗だ」といった心的システムの構成素である
思考を産出させ始める可能性が出てくる。
孤独な高齢者が生物学的死を迎える前に社会的な死を迎えるなどと言われるが、
コミュニケーションの連続的な不成立は社会システムの作動をあらゆる局面で、
停止させた状態と考えられる。
悪性の循環とは、あらゆるシステムが構成素を産出するように作動し始めたことが、
他のシステムとのカップリングにより全体的に作業機能不全の状態へと
向かうことと考えることができる。
以上のことからオートポイエーシスというシステム論では、
各システムの作動によってそれぞれの構成素を産出するという視点で
作業を捉えることとなる。 外部から見た従来の作業療法の視点からは、
①身体作業(肉体作業)
②社会的作業(活動)
③心的作業(知的作業) などと分類されてきた。
しかし、主にどの構成素を産出するようにシステムが作動しているのかが重要。
よって最初から決められるものではない。
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