白山吹の実は黒

山吹と言えば濃黄の山吹色が目に浮かぶが
この山吹は珍しい白山吹だ。
そして白山吹なのに、その実はご覧の通り黒色。
何だかややこしい具合だが‥。
また、山吹と言えば太田道灌の山吹伝説が有名だ。
その昔、扇谷上杉氏の家宰、太田道灌が鷹狩の最中に雨に遭い
一軒の家に立ち寄り、蓑を借りようとしたところ
その家の娘が黙って一輪の山吹の花を差し出したと言う。
貧しさゆえ心ならずも差し出す蓑がないということを
「七重八重花は咲けども山吹の（実）みのひとつだになきぞかなしき」
という後拾遺集に醍醐天皇の皇子・中務卿兼明親王が詠まれた歌に
託して、伝えようとしたと言われるこの逸話。
昔の人は実に奥ゆかしいと言うか、品格があると言うか‥。
今の日本人が忘れてしまった「何か」を
山吹の実を見ながら考えてみたいものです。