『看護師の仕事につきたい!命を救う看護のプロフェッショナル』

2011-09-30 10:08:52 | 本・論文の紹介(看護)
 本をいただいた。

 坂本すが著『看護師の仕事につきたい!命を救う看護のプロフェッショナル』中経出版刊

 坂本氏は、日本看護協会の新会長。先日のストックホルムの出張の時の日本代表だった。帰国後、すぐに届けてくださった。


 「教えて、先輩!私の職業シリーズ」の1つで、中高生に進路としての看護を説明した本だ。看護の面白さ、可能性、カバーする領域は広く、チャレンジできる内容も幅広く、将来的に魅力のある分野だと、リズムのよい文章で綴られている。表紙はコミックなのだが、女性と男性の看護師が並んで、それぞれが上を向き、期待に胸を膨らませているという感じだ。

 対象を意識して、読みやすくはしてあるが、内容は濃い。今の医療で看護の置かれている状況から、処方権も含めた役割拡大の話まで、よくまとまっている。看護職に適切だと思う本だ。

 通常、こういった本の書き方では、「保健師助産師看護師法(保助看法)*では。。。」と看護の法律の定義から入って、「療養上の世話」と「診療の補助」の2つから始まることが多く、ちょっとうんざりするのだが、この本はそうではない。

 私が一番いいなと思った表現が次のものだ。
「患者さんに寄り添うとか、優しい対応をするとか、じっくり話を聞くとか、ナースにはいろいろな役割が期待されています。これについては、もちろん私も異論はありませんが、まず、患者さんの生命を救うということ。ここにしっかり立脚してほしいと思います。。。」

 この文章には、著者の看護の考え方が明確に出ている。その前段ではフィジカルアセスメントの能力を強調して、急性期ケアで看護が果たすべきことを明確にしている。とても共感できる。

 看護の本でよく使われる「です、ます」調なのだが、一つ一つの文章が短い。メリハリの利いた文章で、情報提示も階層化されており、著者の考えの優先順位がよく分かる。

 坂本氏の実際に話す日本語がそのとおりで、短く、論理的にまとまっている。張りのあるよく通る声の持ち主だ。読みながら、あたかも、先日の仕事の続きのように、まるで耳の中にその声が入ってきて、それを訳しているような錯覚に陥った。

 中高生だけでなく、看護職にも薦められる本だ。

 以上。
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 *上記の保助看法に関して補足したい。制度管理で医療法と看護法があることは、大変重要で、その国の人々を守るために不可欠なことだ。看護法すらない途上国からすると、統括法を手に入れるだけでも、ものすごい努力が要る。ただ、私個人の意見では、看護を説明するときは、自分の考えを自分の言葉で語ることが必要だ。その自分の考えは、思いや情緒的なものではなく、今の世の中のニーズを踏まえた判断をベースにしたものであるべきだ。

 人々が必要とする看護は、時代とともに変わってくる。必然的に実践の範囲は変化する。そのときは、看護の本質的なものを踏まえた上で、将来展望を明確にして、変えて行く必要がある。「療養上の世話」と「診療の補助」は今の看護に適切な言葉なのだろうか?現在現場でナースの役割で重要とされているものに、行動変容(behavior change)を求めた保健指導や、多職種チームでのコーディネートがある。

 法律は固定的なものではなく、変えることができる(実際にはこれは大変なことなのだが)ものだということを認識し、そのような力を持たないといけないということを考える必要がある ― 看護と政治の話なのだが、規制と専門職と労働問題という、重要な看護の3点セット(ICNの3つの柱だといわれている)に関わってくる大変重要なことで、国際的にも大きなimplicationがある。これらは、看護の国際会議では、議論されていることだ。
  
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