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第三回OB/OG会(タイ・ラオスの最新事情勉強会) 議事録

2009-06-17 13:10:17 | 関東支部からの連絡
第3回ODA民間モニターOBOG会 講演録
                       2009.06.13(土)
                       2008チュニジア班 久保山和哉 記

●日時 2009.6.13(土) 9:30~12:30

●参加者
 田阪(在外交換派遣員OB、社会人)、王(社会人)、石井(社会人)、イスマイ ロフ(社会人)、岸本(社会人)、君塚(学生)、武田(学生)、堀内(社会  人)、河島(外務省)、芳島(在外公館派遣OB、外務省)、浅井(APIC)、山崎 (H20エルサルバドル、社会人)、原(H20フィリピン、社会人)、堀江(H20バ ングラデシュ、社会人)、早田(H20チュニジア、社会人)、久保山(H20チュニ ジア、社会人)

<<タイ王国概要>>
 講師:川村さん(外務省)
    勤務16年目。大学時代に国際交流、外務省に入省しタイ語を学ぶ。
  
●タイ情報
 ASEAN原加盟国で、日本の約1.4倍の国土に約半分の人口が住むゆったりした国。
 Per capita GDPが3,720ドルで今後、ODAによる支援から脱していく中進国。
 GDP比で1割の農業に5割ほどの国民が従事しており、主要農産品は米(ジャスミ ン米etc.)
 タイの主要宗教は仏教で国教として定めているわけではないが、王制を取ってい るタイの王になるための条件の一つに仏教徒であるということがある(人口の9 割以上が仏教徒)。タイで発生しているテロ活動については、国境線に在住して いるマレーシア国境沿いのイスラム教徒が引き起こしている。

●内政概要
 立憲君主制、議会制民主主義で日本の明治時代のイメージ。現国王のプミポン国 王は在位60年を越えているが、貧富の差が激しい国内で格差解消策などを実施  し、前王、前々王のときよりも国民からの敬愛を集めている。

タクシン元首相:
 草の根レベル、マクロレベルでの経済政策を行った。草の根レベルでは、貧困層 支援、農村地域に病院などの設立。マクロレベルではFTAをはじめとした貿易、 投資政策。
 都市貧困層、北部東北部農民に支持されていたが、富裕層である都市富裕、中間 層、労組、南部住民の反感を買った。また、タクシン元首相は自分の身内にビジ ネスを割り振った政策を取っていたため、様々な汚職事件に関する訴訟、逮捕状 が出た。

タイ国旗の意味
 青:王室、白:宗教、赤:国民 →タクシン派の赤いシャツは国民の色という説 もある。

空港の占拠
 デモ隊による1週間の空港占拠。
 →観光客に対する人的被害はほとんどなかったが、経済的な打撃(主に物流、国 際的な信用)が非常に大きかった。

タイのデモ活動による色
 赤(低所得者層)、黄(中高所得者層)で分かれており、単なる色の意味ではな く社会的な階層格差、国内の衝突を意味する問題となる。

●外交概観
 基本方針:
 全方位外交。ASEANだけでなく、日米中、イスラム諸国、北朝鮮など多様な国と 地域に国交を開いている。
 国際的強調:
 PKO活動に積極的な参加(イラク、スーダンへの軍派遣etc.)
 ASEAN関係:
 現加盟国であり、08年7月~09年12月まで議長国(議長はアピシット首  相)諸外国との関連:
 カンボジア:プレアビヒア寺院をめぐる国境問題。ただ経済関係は深い。
 ベトナム:経済的なライバル国、タイとベトナムは有力投資先、米の輸出 国。
 ラオス:歴史.文化.経済的繋がりが深くラオスの対外貿易額の約半分を占める。
 中国:歴史的に華僑系タイ人が政治と経済の中心。
    貿易・投資関係も一層の緊密化。
 アメリカ:伝統的友好関係。
      非NATO諸国としての軍事的、貿易・投資関係の両面。
 
日本との関係
 15世紀の琉球王朝・アユタヤ王朝間の交易が起源(泡盛の原料:タイ米   
 etc.)。
 皇室・王室が親密な関係で91年、06年に皇后両陛下の公式訪問。タイからも 王室の人間が頻繁に訪問している。
 政府では、首相レベルの交流が盛ん…だった。(タクシン・小泉政権時代に緊密 関係)クーデター後には政府レベルでの交流関係は薄くなった。麻生首相は、0 9年のAPECの議長会議のときに訪問したが、パタヤーのデモで出席できず。
 日本からタイへの渡航者は、年間約120万人。タイから日本への渡航者は約19万 人(アニメーション、漫画、J-POPなどが人気)

●経済概観
 Per capita GDPは4000ドルレベルまで成長したが、08年Q3以降は落ち込み、09年
 Q1はマイナス成長(-7.1%)。貿易関係は、日米中3ヶ国で輸出入ともに3位ま でを占める。
 09年4月のパタヤーでおきたデモ隊の衝突で、観光業が大打撃を受けた。
 タイで活動している日系企業は約7000社(商工会議所に登録されている大中企業 で1300社)。日タイEPAの締結後に、貿易額も上昇している。日→タイの鉄鋼の関 税が撤廃(これまでの関税額が還付されることを取り付けた)。

●対タイ経済協力の外観
 歴史的には非常に深いが、現在タイは援助国から被援助国になりつつある。日本 の試みとしてはタイが第3国を援助するための支援を行っている。タイにはTICA (タイ版のJICA)があり、タイ王国のODAレポートを作成するなど、将来的には DACリストへの参加も視野に入れている。
 また、現在は無償資金協力からは卒業しており、技術協力と円借款が行われてい る。円借款としては、バンコク市街の渋滞緩和のための地下鉄、バンコク新国際 空港の設立など。技術協力は農林水産、保健衛生、環境問題などに加え、高齢化 対策のモデル形成プロジェクト、農協のリーダー育成などが行われている。ただ 草の根無償、日本NGO無償はいまだ行われており、その傾向としてはタイ人より もより劣悪な環境での生活を余儀なくされている近隣諸国の住民を支援してい  る。

●Q&A
 Q:タイのクーデターやデモ活動など、何故防止できないのか?
 A:警察のデモの制圧能力は低い。また、現場の人間は赤シャツにシンパシーを 持っている。デモ活動による国際的な信用への被害などへの意識も低い。また91 年のクーデター後の92年の衝突(学生と中産階級、軍との衝突)以降、流血が起 きる衝突を嫌う傾向がある。軍の制圧能力は高いが政治的に非常に複雑で、軍の 出動はストレスになっている。また、タイ人はバランス感覚に優れていると言わ れ、そのバランス感覚で深刻な人的被害が発生しないように回避していた。タク シン派と反タクシン派の対立は特殊な事例で、タクシンによって低所得者層が自 我に目覚めてしまったという考え方もある。また、タイ南部に住むイスラム教徒 に国際的なテロ組織が接触する影響もあるという見方も出来る。

 Q:タイにクーデターなどが起きやすい文化的な風潮?
 A:WWⅡ以降、20回ほどのクーデター。タイでのクーデターは王室や政治を改 変するための一つのアクションとして行われがち。国民の意識として、クーデタ ーが悪ではなく正しい活動として考えられる傾向もある(ただ、流血が起きるよ うなデモは嫌う)。



<<ラオス人民共和国概要>>
 講師:二元さん
    入省して今まで9年間ラオスに関っている。

日メコン交流年2009:
 2006年に日メコンパートナーシッププログラムがはじまり、3年間で終了。2009 年は、次のプログラムに入る節目の年。周年ではない。

●ラオス情報
 ・インドシナ半島中央の内陸国。
 ・面積24万km2(≒本州)
 ・人口約580万人(≒北海道)
 ・Per capita GDP678ドル(2007年IMF推定値)。
 ・労働力の約7割~7割強が農業従事者。
  →自給自足の小規模農民。
 ・宗教:上座部仏教が75%、その他精霊信仰等が約25%。
  →アニミズムの影響が根強く、経済開発、社会開発の妨げとなっている。

●内政
 ・政治体制:人民民主共和制
 人民革命党による一党独裁で、86年の新思考政策(ベトナムでいうドイモイ政
 策)以降、市場経済化、対外開放に努めている。
 新聞は党・政府の機関紙のみ、集会の禁止など、言論や表現の自由が制限されて いる状況にある。ただ、タイ語とラオス語は非常に似ており、タイの本や映像な どの文化がラオスに入ってきており、社会的な制限は徐々に緩和されつつある。
 議会は国民議会(国会)のみで、議員は全国民による直接投票で選出されてい  る。ブアソーン首相は党内序列が7位で、党内に更に上が6名いる集団指導体  制。

●外交概観
 基本方針:全方位外交、対外開放、地域・国際社会への統合推進。
 近年、国際的な役割や地位を高めつつあり、ASEAN・ASEMへの加盟、04年ASEAN関 連首脳会議を主催、06年ASEAN対日調整国に就任。対日調整国に就任しているた め、日本がASEANに対してコメントを出すときは必ずラオスを介さなければなら なく、親日国でもあり日本との関係性が深い。

●日本との関係
 55年に正式に外交関係樹立。貿易・投資関係を含め深化・拡大化しつつある。
 91年以降は、日本は対ラオス二国間援助のトップドナー(4分の1強を占める) で、日本の橋の絵が貨幣に使われている。現在は、越、中、タイなどがドナーと して台頭しており、特に中国は目に見える援助が目立つ。
 近年は経済面の交流も活発化しており、観光では07年から日本人渡航者向けに15 日間のビザ免除を開始、08年には日ラオス投資協定が発効した。08年以降、日系 企業の投資視察が活発化しており、タイの賃金が上昇している背景からラオスへ 進出する企業が増えてきている。また、鉱物資源(レアメタル、金、銅、ボーキ サイト)、水力発電事業なども進出。直近では、09年1月に中曽根外相がラオス を訪問、2月にJALが民間航空初の直行便を運航、5月にブアソーン首相が来日  し、麻生総理と会談。

●経済概観
 2020年までのLLDC脱却に向け、市場経済化、国際経済への統合を推進。経済成長 率、インフレ率等は金融危機の影響はさほど大きくなく、豊富な資源(輸出の  55%ほど)、低賃金を背景に外国投資が近年急増中。自国産業としては手工芸  品、無農薬の農産品などが近隣諸国へ輸出されている。ただ、慢性的な貿易赤字 や未成熟な投資環境等、克服すべき問題がある(2010年に証券取引所を開設す  る)。

●日本の対ラオスODA
 ラオスにとって最大の援助国。
 重点分野は、primary Education、保健医療サービス、農村開発およびサステイ ナブルな森林活用、社会経済インフラ整備、民間セクター強化に向けた制度構築 および人材育成ほか。

●ラオスの教育
 5・3・3・5制。識字率:72.5%(地域格差あり)、初等教育就学率:84.2%、 中等教育就学率:54.2%。
 ※不完全小学校:最初の2年しか教育が受けられない。

●ラオスの不発弾(UXO)
 ベトナム戦争時代に、アメリカ軍が200万t程の爆弾を投下(うち10~30%が不発 弾)。被害者の多くは、農民で農作業中や鉄くず収集中に爆発事故に巻き込まれ る。
 →UXO処理による安全な土地利用の確保は、貧困削減やSustainable Development の前提条件。日本は2007年のラオスUXOセクターにおけるトップドナー。
 Cf.)カンボジアの地雷が取り上げられて、ラオスの不発弾が取り上げられない    理由
    地雷の目的は後遺症を残すこと。不発弾はその場で死者が出る。

●Q&A
 Q:何故元旧宗主国のフランスを抜いて、スウェーデンが高いか?
 A:スウェーデンの王族が訪問した際に病院を建てた?緊密な関係はおそらくな
い。EUとして、国連の貧困削減イニシアティブに協力。
 
 Q:ラオスに渡航する観光客
 A:世界各国から100万人強、日本から3万人。ラオスのルアンパバーン(文化遺
産都市)はNew York TIMESの行ってみたい国1位。

 Q:ラオスはどのようにすれば発展できるか?資本主義国が入るメリットは?国
民として開発が進む産業構造が見えない。
 A:鉱物、水力などの投資が伸びている。ただ、国民としては豊かにならない。
国土を資産に変えていく。労働力の8割近くが農業従事者だが輸出の55%が鉱
物資源。自然環境の保全や農業従事者を保護するために100ha以上の土地のコ
ンセッションを一時凍結し、国民の生活の保護するための土地政策を政府が
講じ始めている。国土の森林面積を2020年には70%に増やす方針(現在は
40%)。日本が出来ることは投資だけではなく、社会インフラの改善や環境
保護も支援すべき。経済的な発展を考えるだけではなく、今の生活を維持で
きていれば人間が飢え死にしていくような国ではないためそのような方向性
を目指すことも大切。                     
                                       以上

ヘルシンキ版グローバルフェスタ その1

2009-06-07 02:51:41 | 国際支部メンバーからの寄稿
フィンランド・ヘルシンキで「ワールドビレッジフェスティバル」というまさに東京・日比谷で毎年秋に行われるグローバルフェスタのヘルシンキ版が行われていましたので覗いてみました。規模も日比谷と同じくらいでなかなか盛大に行われていました。フィンランドの人達も途上国支援に関心を強く持っているようです。