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クロノ太陽・・・12

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耕太の子分たちが大泣きして、小便を漏らして、耕太は辛うじて泣きはしていないが恐怖で体が震えていた。
 健一も首吊りの遺体を見るのはもちろん初めてで体がやはり震えていた。健一は我に返って耕太に叫んだ。
「耕太!駐在さんを呼んで来い!早く!俺はここにいるから!早く二人を連れて呼んでくるんだ!」
「わ、わかった。」耕太と二人の子分たちは山を転げるような勢いで泣き喚きながら降りて行った。
 健一にとっても目の前の光景は想像を絶するものであり、
写真週刊誌ぐらいでしか遺体は見たことがなかった。だから、耕太たちにとってのこの遺体はショックがトラウマになるであろうことも予想がついた。
 健一も駐在が来るまでの時間なんでそこに残ったのか分からなかったが、次第に冷静に状況を見ている別の自分がいたのだ。
「なんて、無様だ!うおー!」健一は大きく叫び大粒の涙を流した。それは恐怖を忘れさせる為の彼なりの防御反応だったのかもしれない。遺体の状況は穴と言う穴から体液が流れ出し目玉も垂れ下がり、烏がつつかんばかりで、健一は烏めがけて石を投げつけていた。
 それから、五分もしない内に村の駐在と幾人かの村人が耕太とやって来た。村人の中には淳之介と柿杉の姿もあった。
「健一、大丈夫か?」淳之介の声がした。
「こりゃ、村の清二じゃなかかね?」と一人が言うと、
「たしかに清二たい。」と巡査が言った。そして、健一に簡単な状況の説明を求めた。健一がその説明をしているときに巡査の目が輝いた。それは、山本長官からもらった腕時計に気がつきニヤリと笑みを浮かべ、次の瞬間こう言った。
「子供が変わった時計をしとるが、この清二から取ったものじゃなかか?ちょっと貸しなさい。」
健一「これは、僕の時計です。」
巡査「いいから、渡しなさい!渡さんか!」
健一は渋々時計を外し巡査に渡した。
この巡査は古屋巡査といい、健一が山本五十六から腕時計をもらったことを聞いており、密かにこの時計を自分のものにしようと狙っていたのだ。そして、この青年の自殺にこじつけてまんまと自分のものにしたのだ。
 柿杉は巡査にすぐ時計を返すように言ったが、全く相手をせずに現場の検証を続けた。
 「健一、時計のことは後で何とかするから今は黙って家に帰っていろ。」と柿杉は申し訳なさそうに言った。
 「分かりました。」健一は、歯がゆい思いで家に帰った。
 健一の帰りを母、芙美、タミが同時に迎えてくれた。そして、芙美は健一に駆け寄り「怖かったね!大丈夫?」と声をかけた。健一はうなずき、母は何も言わずに家にあげた。
 淳之介も数分後には帰ってきた。
淳之介「死んだ清二は召集令状がきていたそうだ。それにこの戦争で片手、片足を無くしている兄のことでも悩んで戦場に行くことを拒んでいたらしい。」
 母「かわいそうに」
 淳之介「かわいそうだが、外で言うなよ。非国民扱いを受けることは間違いないから!芙美ちゃんもタミも分かったね。あと健一にも母さんから言っといてくれ。私はもう寝るから後を頼んだよ。」
 翌日、学校はこの話で持ち切りとなった。しかし、健一は父に言われたとおり黙って通した。このようにして健一の身の周りでも戦争の影が少しずつ襲ってきていた。
 年が明けて昭和19年、ある人物が小椋家を訪ねて来ていた、あの柳川大尉であった。
 「健一君、いるか?私だ、柳川です!」
 母「まぁ、まぁ、柳川さん。お久しぶりです。父さん、柳川さんですよ!」
 父「おぅ、柳川大尉。久しぶりだね。」
柳川「ご無沙汰しています。そして、今は大尉ではなく、少佐になりましたので。そんなことはいいのですが健一君はいますか?」
 母「もう道場から帰ってくると思いますから家に上がってお待ちください。」
 柳川「では、失礼してお邪魔します。」
「ただいま、」健一と芙美が帰ってきた。
 母「お帰り、芙美ちゃんも一緒だった?」
 芙美「途中、健一君と一緒になって、誰かお客さまですか?」大きな靴が玄関の入り口にあるのに気づき言った。
 健一「ひょっとして、柳川大尉?」
 母「そうだよ。柳川さんが健一に会いに来られてるよ。」
 健一は急いで柳川と父が部屋へと向かった。
柳川「健一君、久しぶりだね。今回は熊本の陸軍士官学校に用があって長崎まで足を伸ばしたんだよ。」
健一「柳川大尉、お帰りなさい。で、何の用件ですか?」
柳川「自分は少佐になった。それに今後のことで君の意見が聞きたくてね。」
芙美「いらっしゃいませ。お茶いれかえます。」
柳川と芙美の初顔合わせであった。
柳川「あなたが鈴木陸軍中佐のお嬢さんですか?あなたにも陸軍からの伝言を伝えてくれと頼まれています。」
芙美「父は元気でしょうか?」
柳川「残念な知らせです。鈴木中佐はシンガポール前線で
戦死されました。心中お察し申し上げます。」
 芙美はいきなりの死亡宣告に声も出ず大粒の涙が次々に溢れ出た。そして、奥へと去った。


続く・・・・・

短編エッセイ書庫、先回まで次男のホスト体験日記を掲載してきましたが次回から短編小説を連載します。 これは後輩が目標を失い、うつ病になった時に好きなことをやるようにアドバイスした時書くことが好きと言うことで頑張って書いてくれた作品です。

処女作で手直し前ですので完成度は期待しないでください。それなりに面白い作品です。
あらすじは、現代にて仕事中気を失い目覚めると太平洋戦争中長崎のある町の雷を打たれた少年に
入れ代わり長崎原爆(戦争)を止めようと努力するも時間は着々と進んで行く・・・・・そんな作品です。


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