闘うバレエ―素顔のスターとカンパニーの物語新書館このアイテムの詳細を見る |
東京バレエ団創立者である佐々木忠次氏著『闘うバレエ』を読んだ。倒産したバレエ学校の再建を頼まれ「世界に通用するバレエ団なら創ってみたい」と64年に創設。強みの定義、実践の場の提供、海外トップクラスのダンサーの招聘、若手の抜擢、ビジネスモデルの構築(資金源となるイベント会社、興行企画運営会社の設立)。なぜ東京バレエ団がうまくいっているのか、仮説どおりビジネスプロデュース力が大きかった。
■バックグラウンド
・親の影響で幼少時から舞台芸術に親しむ→芸大演劇科卒
・舞台監督助手、海外オペラ招聘の仕事、バレエ学校の舞台制作
■まずはビジョン
・手伝っていた東京バレエ学校の倒産→再建依頼
→ふつうのバレエ学校ならやらない
「世界に通用するバレエ団を創る」というビジョンを掲げる
■競合研究と強みの定義
・海外バレエ団の視察
→体型の劣る日本人が強みを発揮できるとしたら群舞がきれいに揃うこと
■ビジネスモデルの構築
・初期、資金源となるイベント会社を設立
当時儲かったファッションショー等の企画・運営での売上を資金源に
・民音とタイアップし海外バレエ団の発掘・招聘
・民音に変わって81年に日本舞台芸術振興会(NBS)設立
NBSで海外バレエ団招聘、海外トップクラスダンサーとのタイアップ企画で
東京バレエ団の露出を高める
■実力をつけるための実践の場の提供
・発表会の延長ではなく、プロとしての舞台をつくるために
当時の日本の常識を否定、日本の業界関係者とはほとんど交流なし
・国内だけでは公演数が足りないため、当時では異例の海外遠征を開始
これまで20回を超える海外公演を実施し、30カ国140都市で629公演
・当時日本の観客は芸術・技術を見極める目を持っていなかったので
適正な評価を得られない(拍手のタイミング等)
→海外の観客の反応を団員に体感させる
■無名の日本バレエ団が海外で評判をつくるしくみ
・海外で有名な振付家に直接交渉
公演の版権を得ることに加え、東京バレエ団オリジナルの振付を
→海外公演での評判が高まる
・振付家や劇場の評判はネットワークで入手(パリ・オペラ座のバレエ団員等)
バレエ団設立前の仕事によるネットワークが功を奏す
■若手の抜擢
・30代の指導者を抜擢
・配役も振付家が行うしくみに
(海外ではあたりまえだったが日本ではコネ中心)
日本のバレエ界の時流をつくってきたような人で、さぞかし成し遂げたことへの達成感もあるだろうと思っていたが、「このバレエ団はぼくが招聘したんだ、ぼくが設立したんだ、などという感動はない」という。
「感動するのはただひとつ、観客とまったく同じように、舞台そのものに感動するということだけなのだ。(中略)そのときにはもう、仕事のことは考えていない。」
「自分と同じような感動を観客にも味わってもらいたい。日本の、そして世界の観客に、世界一流のバレエ団の舞台を、その感動を味わってもらいたい。それが東京バレエ団に託した、ぼくの夢だった。」
途中、バレリーナの裏話などもあり、面白く読めました。久しぶりに一気に読み終わってしまった本でした。