On The Road

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第7話-22

2011-01-19 20:22:00 | OnTheRoadSSS
 おばさんの儲けは元手の3000円を差し引いても、およそ5万円だった。端数でもらったチョコレートを黄と青山に渡して、「駅前にできたフランス料理店でも行ってみようか」とおばさんが言った。
 おばさんの大当たりとスーツの男達の不調を目の当たりにしたパチンコ店の店長は、「警戒したけど、大事なお客様だったんだ」と呟いて事務所に引き上げた。

 おばさんの去った後にはすぐに他の客が座ったが、スーツの男達は時々カードを買いにいくだけで動かない。おばさんのいた台は、その後も玉を吐き出し続けた。

 「おばちゃん、あと30分やれば、寮の晩ご飯を寿司にできたかも」
 青山が残念そうに呟いたが、「当たっているところで終わりにしないと、痛い思いをするんだよ」とおばさんにたしなめられた。

 「ザイトの奴等、いつもの連中とは違うみたいだけど、引き際の悪さは同じみたいネ。きっと痛い思いするネ」
黄が小声で言った。

 最後のカードが切れた時、ザイトの経理課長は決断した。本日の経費として預かってきた8万円は尽きた。「作戦終了だ。撤退するぞ」
 「俺、自分で5000円出します」
 愛社精神あふれる社員が言った。「俺も」「私も」あっと言うに45000円が集まった。
 経理課長もポケットマネーから5000円を出した。


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