第6話-37

　「病院から戻りました。藍原と俺は治療終了です」
　村崎はまず黒木に連絡した。黒木は村崎を部屋に呼んで、２、３報告があると言った。
　「じゃ、俺は黒木さんと会ってくる。藍原はゆっくり休んで」
　村崎の大きい背中が２階のフロアに消えていくのを、藍原はしばらく見つめていた。

　村崎は藍原に右手を上げて、黒木の部屋に向かった。赤沢はオフで朝から出かけている。ＬＯＥ以外の友達と会うらしい。休日には青山が服を、黄が中華料理を見に行くことが多いが、２人とも誰かに会いに行くことはない。緑川と村崎は走りに行くぐらいだ。
　赤沢に毎週会いにいける友達がいるのは、村崎としてはうらやましい。ザイトの連中には会いたいとは思わないし、バイトを渡り歩いた頃の仲間は音信不通だ。
　次の休みにはお袋を訪ねてみようか、と村崎は考えた。両親は離婚したけど、最近よく一緒に食事をするらしい。どちらかがギャンブルで大勝した時には、勝った方がおごるのがルールだと、母は電話で言っていた。
　親としてはどうなのかよく分からないけど、いいカップルなのかもな。子供は勝手に標準より大きくなって、今のところ誰にも迷惑をかけずに生きているし。

　黒木の部屋のドアをノックすると、黒木がドアを開けてくれた。部屋には、コーヒーの香りが漂っている。