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もんく [とある南端港街の住人になった人]

コスト

昨夜は花火の音がすごかった。どうにか猫たちは家に帰って来られたけれど、キナコはいつもツブアンが入っている箱を独占してうずくまっていたし、ツブアンは台所の外のホウキとモップを掛けてあるところの隅っこで硬直していた。ツブアンは布で包んでやったら何とか落ち着いて寝たみたいだった。

その花火の大元の一つは、実はお隣さんだ。お隣のお父さんは自分で事業をやっているお金持ち。子供たちはバイオリンを習っているような家庭だ。まあ、それとは関係ないのだけど、お昼を食べに来ても良いような事だったのであつかましくご馳走になりに行ってみた。家に誘われた場合、日本人だと半分は社交辞令のようなもので、実際に伺える機会はそれほど多くない。マレーシアだと、その機会が多いのかどうか、そもそも彼らが社交辞令で言ってくれているのかもわからない。いろいろな人に来て欲しい、特に外国人の客がいるとそれも面白いと言うのもあるにしても。

そんなわけで、少しでも呼ばれたら、結果迷惑になるかもしれないが、とりあえず伺ってみる事にしている。場違いのようだったらすぐに帰れば良いわけだしね。で、今回も1時位と言うから1時15分に行ってみた。日本人なのでどうも時間にストレスを感じる性質があり、時間よりちょっと早めに行きたいのだけれど、まてまて、ここはマレーシア、それじゃちょっと早すぎると思いつつ、結局待てずにその時間になる。お腹も空いている。行ってみるとやっぱりちょっと早すぎた。まだ誰も食べてない。キレイなインドのお菓子をいただいていると、ちょっとしてバナナの葉の上に美味しいブリヤニと羊の煮込みと鳥の唐揚げなどを出してくれた。美味いねえ。

ガイドブックなんかだとどこそこのレストランの何が美味いみたいに書いてあるけれど、マレーシアの場合はマレーもインドも家庭料理は別格だ。(中華系はあまり付き合い無いし招かれもしないのでわかりません。)そうそう、インドネシアなんかもそうだったっけ。

ところで、話は料理じゃなくて家の方に移る。うちとお隣さんは、セミデタッチの右と左なので家は鏡写しの双子のようになっている。なのに、なのに、お隣の家に入ると全然違う。左右反対ってだけじゃなく、色もレイアウトも広さも全然違って見える。さすがお金持ち、バッチリ全部改造していたのだ。うちが使えない天井まであるキャビネットを置いているところが見た事も無いような豪華テーブルのあるダイニングになっているし、キッチンは広くてパーティ用の料理がいくらでもできそうな広さと機能性がある。上の子供部屋も元の壁は一部だけ残して全部変えてある。ちゃんと勉強部屋とベッドルームが別れてもいる。裏の日陰になってしまうベランダは打ち抜かれて子供部屋の一部になっていたりする。うちが猫パラダイスにしている側面はコンクリートで丈夫なバルコニーを作ってあって風通しが良い。そしてどのベッドルームもリゾートホテルのそれみたいにガラスでシャワールームとトイレを区切ってある。

部屋数を犠牲にしてカスタマイズしていると言う事は、お隣さんは将来この家を売ってどうにかしようと思ってはいないのだとわかる。もし少しでも投機的な考えがあるのなら、部屋数を減らすわけはない。それに自分以外に使わせるのなら、内装は豪華過ぎる。投機用ならバス以外の壁を個性的で豪華なタイル張りにはしないだろう。

うちなどは、ここに永住できるわけでもないし、賃貸なのでお隣さんのようには絶対にできはしない。だからキレイに保つまではしてもコストをかけて改造しようなって思わない。コストって言葉を使ってしまったが、自分にとってこの家にかかる費用、生活にかかる費用の多くは、ここでの生活を回すためのコストなのだ。お隣さんにとっては多分、コストじゃないだろう。壁をタイルにして、そこから何も産み出される必要は無い。部屋を快適にした事で他人がそれにお金を出してくれる必要もないのだから。

日本にいる友人の中にも家を買ったり建てたりして住んでいる者もいる。彼らもきっと、どちらかと言うとお隣さんの感覚に近いのじゃないかと思う。車なんかも同じで、使い方から見れば過剰に良い車を買っている知人もいる。それはやっぱりコストじゃない、それ以外の何かなのだと思う。企業会計のようにコストだと考えてしまうと必要十分な安い車しか選べないはずだけれど、彼らはそうはしないのだから。

そう言うのはちょっとうらやましくもある。車でも家でも、好きなのを買ったり建てたりしてそれで終わりで良い。うちの場合は家も車も(まだ来てないけど)、その他に持っている物は全部一時的なものに過ぎなくて、この仕事が無くなってビザがそれと一緒に消えてしまったらみんなここに置いていくのだから、どうやってもコストとしか計算できない。できるだけコストをかけずに生活して損の無いようにやっていかなければならない。10年とか、安定した生活と言えるだけの十分な時間が確保できるのであればそうはならないのかも知れないけれど。
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