こんな夢を見た。
今日は高校の卒業式。
いつもより少し早く家を出た僕は、家から歩いて十分の所にあるバス停から、今日を最後にもう乗る必要がなくなる路線のバスに乗る。
僕が通っていた高校は、町外れの玉ねぎ畑のど真ん中に立っており、高校を卒業してしまえば、そんな場所には何も用がなくなるからだ。
北国である僕の地元は3月ではまだ普通に冬であり、玉ねぎ畑には雪が積もって、白銀の向こうに地平線が見えるような場所だった。
普通に桜が咲き乱れる中で卒業できる内地が羨ましく思えるのだけれど、これはもう仕方ない。
運命という奴である。
思えば、思うほどに何の印象もない高校生活であった。
特に勉強したと言うわけではなく、それでも成績は中の中と言う普通さで、部活動も特に力を入れてやっていたわけでもない。
ましてや華の桃色学園生活を送ったなどと言うことは全く無く、教師も三ヶ月もすれば僕のことなど忘れてしまうだろうと言う存在感の無さであったのは自負できる三年間だった。
高校と言うものは、次のステップへの一段階でしか無い、繋ぎでしか無いと思うのだ。
だけど繋がるべき未来はまだまだ暗中模索の霧の中であり、僕の前には道はない状態であると言わざる終えないのである。
実際のところ、家には僕を進学させる程の余裕は全く無く、就職しようにも、探せば無いわけではないが、高卒で好条件で働ける場所は無く自分としては大学に行きたかった。
だから、親に内緒で大学受験をしていた。
自分の成績からすればちょっと無理目の受験だったが、どうせ行けないのならばと、半ばヤケクソで受けたのだ。
奨学金というものもあるが、返せる気がしないので手が出ない。
就職も決まっておらず、受かる見込みもなく、僕は沈んだ気持ちで卒業式を終えると特にクラスメイト達と言葉を交わすことなく家路に着いた。
家に帰ると年老いた親父が布団で寝ていた。
ここ数日体調が悪いらしく、寝て過ごしている。
親父が言った。
「もう今年一年働けるかどうかだぞ。これからどう暮らして行くか考えているのか?」
僕は先のことを考えるのはやめた。
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