こんな夢を見た。
そこは暗くて肌寒くてとても寂しい場所だった。
なぜだか解らないけど、私はここは夢の中だと思った。
ぽつんとスポットライトの照明のあたっている場所が遠くにあり、私はそこに向かって歩いた。
暗闇の世界にただ一カ所だけ照らされたその場所に着くと、そこには木製のイスが二つあり、その一つには細身で、髪の長いメガネをかけた女性が座っていて、私に気がつくとにっこりと笑った。
「良く来ましたね」
「えぇ、ミチヨさん。ずいぶんと遠回りしてきた気がします」
私は現実世界でも彼女にあった事はないし、夢の中でも初めて合うのだけど、何故だか彼女の名前を知っていて、ずいぶんと久しぶりに合うような気がした。
「私はあなたがここに来る日をずっと待ってたの。私はあなたに会う準備は出来ていたのだけれど、あなたはあなたのイデアがまだ準備出来てなかったから」
「イデア?イデアってなんですか?」
「なんでもないものよ。けど人が生きていくのに大切な物の一つ。水や空気のようなものね。ふだんは気にもとめないけど、生きていくのに必要でしょ?」
「そのイデアがボクの中で準備が出来たの?」
「そうじゃないの。ようやくあなたの中で準備が始まったと言う事なの。私はあなたにそれを伝えたかっただけなのよ。準備が終わり、あなたの中のイデアが完成するかは、あなた次第なのよ」
「それにはどうしたらいいんですか?」
「それも自分で考えるの。イデアは自分の力だけでしか完成しないの」
「何か難しいなぁ…」
「さぁ、そろそろ目が覚めるわよ。現実の世界でがんばってね」
ミチヨさんがそう言うと、世界はまた暗やみに包まれ、僕は次の瞬間、ベットの上で目を覚ました。
その後、僕の中で何かが変わりつつあるという自覚もなく、ミチヨさんは夢の中に再び現れる事は無かった。
けど僕は思うのだ。
夢の中でもいいから、ミチヨさんにもう一度会いたいと…
だから、僕は今日も眠りにつく。
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