父からはまだはっきりとした言葉で失業したと言うことを聞いてはいない。
最近、76歳で大工をしている一家の大黒柱であった父親が、年齢と体力理由に勤め先を解雇されて収入が半減し、経済的危機に瀕している。
私はその事実を知りながらも、父から直接聞くことは避けてきた。
父は何も言わなくても、自分で悟っているだろうと思っていた。
仕事に行かず、平日に母の介護をしていたり、帰ってくるのが夕方前と早かったりする父。
常に家族のために尽くしてきたその姿勢は、私たち家族にとって当然の存在だった。
しかし、最近ではその姿勢に変化が表れていた。
休みかと聞いたら、もうアウトだと言った。
その一言に父が抱える苦悩が滲み出ているのがわかった。
今日は雇用保険の請求書類の書き方について尋ねられた。
父が私に相談すること自体が珍しかった。
私は書類を見ながら、父の不安を少しでも取り除けるように丁寧に説明した。父は黙々とメモを取りながら、頷いていた。
その姿が隠している心の葛藤と真摯な姿勢を感じさせた。
父は頼りにされることで自分の存在価値を見出しているのかもしれない。
私が手助けをすることで、父は少しでも安心できる瞬間を得られているのだろうか?私の内なる疑問はつきない。
もしかしたら、父は自分の言葉に囚われて、本当の気持ちを隠しているのかもしれない。
それでも、私は父が小出しでしか言葉にできない想いを見逃さないようにしようと決めた。
父の支えになれるよう、これからもそっと寄り添っていこう。
経済的には無理だけど。
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