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短編小説〜ほろ苦く、甘酸っぱい〜③ 完結

2024-03-15 08:02:00 | 短編小説

 生活も落ち着き始めた頃に知り合ったのが2度目の結婚をする夫です。

 真面目で腕のいい大工でした。

 娘のことも可愛がってくれて、よく懐いていたので再婚を決めました。

 人柄は私の両親にも気に入られ、よく父と一緒に飲みに行くほどでした。

 二人の息子も生まれ、夫は独立して工務店を経営し、私はそれを手伝いました。

 従業員も30人を超え、飲食店なども経営。事業は拡大して行きました。そんな中で娘と私に確執ができます。娘は中学生かの頃から家出を繰り返すようになり、卒業する頃には地元の警察署の顔馴染みになっていました。高校にも行かず、夜遊びを繰り返し、警察に厄介になる日々が二十歳を過ぎる頃まで続きました。

成人してからは一人暮らしを始めたので親の手を離れたかと思いましたが、家賃滞納で住んでいたアパートを追い出されたり、タチの悪い男に捕まって傷害沙汰になったりして家にいた頃よりも面倒ごとが増えたりもしました。 普段は顔も見せないのに困った時だけ助けを求めてくるのです。 娘ですから当然助けますが、血の繋がらない夫に申し訳なくて、私はさらに娘に強く当たります。 それが良くなかったのかも知れませんが、何度目かの行方不明でまた娘が助けを求めてきたのでした。

 雪が積ったある日、待ち合わせ場所に行ってみると娘は妊婦でホームレスになっていました。 妊娠して働けなくなり、家賃が払えなくなってアパートを追い出されて一週間が経っていたそうです。 髪はヘアースプレーが雪で濡れて固まり、寒さを凌ぐために着ている防寒ジャンバーは薄汚れていました。住む場所が無いので日中は大型スーパーの休憩所で仮眠を取り、夜は寒さを凌ぐためにひたすら歩いてコンビニをハシゴしていたそうで、そろそろ死にそうだと思い、助けを求めたそうです。

 家に連れて帰り、そのまま死んでしまえと言った長男や、呆れ果てている夫に頭を下げて家に置いてもらえる様に頼ました。

 最初は何も言わなかった夫も孫が生まれる頃には、将来的な面倒を見てやると言うことを言ってくれたのです。 それから孫が中学に入るまではギスギスした関係ながらも穏やかな日々だったと言えるでしょう。 しかしその孫が中学入学と同時に不登校となり、一度も登校することなく卒業した春に、娘は孫を置いたまま行方不明になりました。 その後、娘とは会っていません。

 孫は三十を過ぎても部屋から出ずにテレビゲームをしている日々でした。

 今後どうするのかと悩んだのも一度や二度ではありません。長男は就職先が二度も倒産したり、ギャンブルで借金を作ったりしていましたが、親には迷惑を掛けてはいません。

 次男は夢見がちな性格で、十八で上京してからは家賃滞納に、勤め先のお金に手を出したりして借金を作り、何度も送金したりする自堕落な生活を送っているうちに夫に絶縁されてしまい、その後で体を壊して糖尿になり、網膜剥離と心不全の治療をしているそうですが、親として関知することはもう無いでしょう。

 子供が三人も居て真面に結婚している奴がいないと言う嘆きは夫の言葉です。

 しかし子供たちがどうやって生きていくかなど、私はもう関わることなどできないのです。

 五十を過ぎた頃から骨粗しょう症と糖尿病を患い、病院通いが始まりました。

 脊髄が圧迫骨折で潰れた影響で歩けなくなり、車椅子の生活になるまでそれほど時間はかかりませんでした。

 そして私の記憶はその辺りからあやふやになって来ます。

 今はその頃からどれだけの時間が経っているのか、もう私には解りません。

 だけども覚えている記憶の中のほろ苦く、甘酸っぱい感情は、積み重ねられて堆積して固まった結晶の様に残っているのです。

 私は少しだけ悲しい気分になって目を閉じるのでした。

 うつらうつらしていた私は目を開けました。

 何もかもわかりません。

 だから私は解らない事が恐ろしくて不安になるのです。

 どうしてこんな風になってしまったのかと思いますが、それもまたわかりません。

 こんなに何もかも解らなくなってしまうと言うことは、私に何かがきっと起こっているのでしょう。

だから解らなければ解らないほどに、不安になってしまうのです。

 私はその不安を何とかしようと必死に考えるのですが、そもそも何について考えれば良いのか解らないのでした。

 私はギュッと手を握り締めます。

 手に握られているのは棒の様な物。

 そこから紐が出ていて、それは壁まで続いていました。

 これが何だか解りませんが、何も解らない不安を解消するにはそれしか無い様に思えたのです。


 「弟子屈さん、どうしましたか?」




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