「男にだけは惚れるな」と野口英世のスポンサーだった血脇守之助は、後年、子息に述懐したという。
野口英世が必ずしも高潔な人物ではないとは仄聞していた。されどかばかりとは思わなかった。信じがたいほどの浪費癖、果ては結婚詐欺まがい。超弩級の金銭感覚の欠如だ。
斯くして、探求心や努力という天賦の才に加えて血脇守之助、小林栄、八子弥寿平という金銭面の支援者なくしては、医学者野口英世は存在しえなかったことを知る。
彼等の施しを恩義とは感じていないかの如きの英世。それでも支援をし続けてしまうほど、英世には人間としての魅力があったのだろう。いやむしろ「魔力」というべきか。
また、野口英世とかかわった女性も見過ごせない。母シカは論を待たないところだ。(有名な『母シカからの手紙』を読んで泣けないのは、日本人ではないと断じてしまおう、(笑))
加えて、終始英世を歯牙にも掛けなかった山内ヨネ。何やら英世をのりこなした(?)アメリカ娘メリー・ロレッタ・ダージス。
権威ある男達には、勇猛果敢に対峙しつづけた英世だが、この三人の女性達には、ついぞたち打ちできなかったとみえる。
つらつら思うにやはり歴史に名を残す偉人は、人との出会いにおいても、持っている、選ばれた存在であった。
英世の医学上の成果は、その後の医学の進歩により、今日薄れてしまっている。しかし、『遠き落日』を読んでも、些少の所縁がある私にとって、野口英世は(人生まるごと含めても)畏敬すべき存在であることに何ら変わりはない。
「負ひ目とは心を覆ふ厚き襞挑み抜きなむ剥がしゆくべき(新作)」
画像は会津若松市の野口英世青春広場の英世像。上野公園の中にも英世像があるとは知らなかった。そして箕面にも。いつか訪ねてみたいものだ。
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