HITO-OMOI(ひとおもい)

ひとを、ひととき、ひとへに想ふ短歌がメインのブログです。作歌歴約二十年、かつては相聞(恋歌)、現在は専ら雜詠です。

3920首目『遠き落日』(渡辺淳一)を読む

2019-02-22 00:00:00 | 短歌

「男にだけは惚れるな」と野口英世のスポンサーだった血脇守之助は、後年、子息に述懐したという。

野口英世が必ずしも高潔な人物ではないとは仄聞していた。されどかばかりとは思わなかった。信じがたいほどの浪費癖、果ては結婚詐欺まがい。超弩級の金銭感覚の欠如だ。

斯くして、探求心や努力という天賦の才に加えて血脇守之助、小林栄、八子弥寿平という金銭面の支援者なくしては、医学者野口英世は存在しえなかったことを知る。

彼等の施しを恩義とは感じていないかの如きの英世。それでも支援をし続けてしまうほど、英世には人間としての魅力があったのだろう。いやむしろ「魔力」というべきか。

また、野口英世とかかわった女性も見過ごせない。母シカは論を待たないところだ。(有名な『母シカからの手紙』を読んで泣けないのは、日本人ではないと断じてしまおう、(笑))

加えて、終始英世を歯牙にも掛けなかった山内ヨネ。何やら英世をのりこなした(?)アメリカ娘メリー・ロレッタ・ダージス。

権威ある男達には、勇猛果敢に対峙しつづけた英世だが、この三人の女性達には、ついぞたち打ちできなかったとみえる。

つらつら思うにやはり歴史に名を残す偉人は、人との出会いにおいても、持っている、選ばれた存在であった。

英世の医学上の成果は、その後の医学の進歩により、今日薄れてしまっている。しかし、『遠き落日』を読んでも、些少の所縁がある私にとって、野口英世は(人生まるごと含めても)畏敬すべき存在であることに何ら変わりはない。





「負ひ目とは心を覆ふ厚き襞挑み抜きなむ剥がしゆくべき(新作)」




画像は会津若松市の野口英世青春広場の英世像。上野公園の中にも英世像があるとは知らなかった。そして箕面にも。いつか訪ねてみたいものだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 3919首目 | トップ | 3921首目 『桑田靖子』(くわ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿