ぱんどらのへや

ちょっとした子育てに役立つ話を紹介していこうと思います。

臨床心理士に相談したい時。

2024年10月18日 | 職業
☆カウンセリングって?
「カウンセリングを受けたいとき」と書こうとして、ふと、手が止まってしまいました。
 ”カウンセリング”という言葉から、皆さまはどんなイメージを持たれるのでしょうか?
 美容室でも「カウンセリングでスタイルを決める」という言葉が出てきますね。カウンセリング化粧品という幟があるお店もあります。これらと、臨床心理士が行うカウンセリングとは同じものなのでしょうか?
 美容室等で行っているカウンセリングを、どのような意味で使っていらっしゃるのかは、この言葉を使っている方の意図を聞いたことがないので、解りません。でも、自分が美容室で施術されているときのことを考えると、顧客の話をしっかり聞いて、言葉にならないニーズ+専門家として髪質等を考慮して、より満足のいくスタイルに仕上げるということでしょうか?化粧品でも同じような意図で使われているのでしょう。顧客満足度をあげ、よりよいサービスをするためにはとても重要なスキルの一つです。
 「カウンセリング」という言葉自体、英語の「counseling」からきており、英語辞書で調べると「カウンセリング、相談、助言」と出てきます。なので子育て相談も子育てカウンセリングということができます。
 「コンサルテーション」と言う言葉もあります。コンサルティング業の方々がなさるお仕事ですね。こちらも、専門家としての知見を示して、問題を解決する方法です。
 何が違うのでしょうか?「カウンセリング」は話をしっかり聞いて、言葉にならないニーズを汲んだ上での、専門性に基づいた助言。「コンサルテーション」には、言葉にならないニーズを汲むという意味合いは入っていません。カウンセリングの手法で話を聴き、コンサルテーションをする方はたくさんいらっしゃいますが。

 でも、臨床心理士が行う仕事はそれだけではありません。
 とはいえ、定義は難しい。
 深層心理を探るためにあれこれ研究を重ね、実践を重ねてきた精神分析や、ユング心理学系の流派があります。
 その対極にあるのが、認知行動療法でしょうか。認知行動療法は本で読んだくらいの知識なので、語れるほどの知識を私は持っていませんが、深層心理を想定していないと聞いています。「ある出来事に関しての認知を変えよう」というワークブック等が出版されていますが、深層心理を扱っているわけではありません。
 それらに対して開発された第三勢力と教科書で説明される療法もあります。傾聴を徹底的にするパーソンセンタードアプローチが有名です。
 そして、それらを基盤にして各種の手法を取り入れながら、発展しているのが、家族療法。精神分析を基にしている家族療法もありますが、個人の内面を見るよりも、対人関係の様相をクライエントと一緒に見ていくというやり方もあります。システムズアプローチと言って、個・家族・地域等を有機的につながり影響しあっている存在として、俯瞰してみていく視点も活用します。
 さらに、ソリューション・フォーカスト・アプローチなどの短期療法も開発されています。
 他にも、他にも…。
 ある方、あるご家族、地域の困りごとに対応しようとして、日々、世界各国の臨床心理士たちが工夫を重ね、学会誌等で研鑽を重ねた結果、とてつもなくいろいろな療法が生まれました。今も生まれています。
 なので、ここではカウンセリングと言う言葉は使わずに、臨床心理士の仕事、もしくは心理療法という言葉を使います。(心理療法と精神療法はどうちがうのかという論争は棚上げいたします)

☆どの心理療法がよいのか。
  あなたが困っていることにあう療法が一番です。って、それが判れば苦労はありません。
  「鬱病には認知行動療法と決まっているのに、なぜやらない」と、ある産業医に言われたことがあります。そのクライエントとのカウンセリングを妨害されそうになりましたが、ご本人の希望で続けられました。その方はパワハラにあい、鬱状態になって休職していた方でした。まずは傷つきを癒すために傾聴しました。自尊心をとり戻した段階で、パワハラに対抗するためのスキルを持っていらっしゃらなかったので、集団精神療法のやり方を使い、ロールプレイをし、パワハラを呼び込んでしまう言動を認識していただきました。そして、アサーショントレーニングを一緒に学びました。休職期間が切れた時は、まだよちよち歩きのようなスキルで心配でしたが、復帰なさいました。その後、私の知る限り、休職として戻ってきてはいらっしゃいません。
 最近、エビデンスが療法の目安として取り上げられることが多いです。その、エビデンスで、「効果が出る」と言われているのが、認知行動療法です。でも、私から言わせてもらえば、認知行動療法は、そのような効果測定にあっているのです。精神分析やユング心理学は症状についての療法と、人生についての哲学的な部分がない交ぜになっている療法で、人生の伴奏者です。10年、20年通い続けている方もいらっしゃるほどです。効果がはかりにくいのです。
 こんなケースもありました。若い頃に不調になった時に、認知行動療法を受けて回復した。なのに、40代になって、またぶり返したので、認知行動療法を受けたいとご自分でワークブックを購入されていらっしゃいました。最初にお会いするときは、インテークと言って、これまでとこれからと今の状況他、いろいろなことを伺います。どんな療法が役に立つのか、私が役に立てるのか、もっとこの方の悩みに詳しい他のセラピストがいるのではないかを考えるためです。お話を伺っているうちに、ユング心理学の中年期の危機として捉えた方が良いのではないかと思いました。その旨を提案したところ、興味を持って下さり、ユング心理学に詳しい方を紹介いたしました。
 このように、人の心の状態は、様々な観点から考えなくてはならないと思っています。
 そして、上記のように定められた休職期間や卒業等の時間制限のある場合もあります。
 相性もあります。
 なので、この療法と決めつけずに、試してみていただけたらと思います。

☆どんな時に心理療法を利用するのか。
  あなたのそのお悩みに、”心”や”認知等の考え方”が関わっているときです。
  風邪を治すために、心理療法を受けに来られても、治せません。それでも、風邪をひきやすい行動を繰り返しとってしまうというお悩みはぜひお聞かせいただきたいです。
  妄想と思っていたら、実は脳の障害だったということもありますので、体に気になるところがありましたら、まずは身体の医者の診察を受けて下さい。そのうえで、その病にかかってしまったお気持ちを聞かせてください。こんなに身体の調子が悪いのに、何ともないと言われたと言う時もぜひお話を聞かせて下さい。
  ストーカーに付きまとわれているときは、まず警察へ相談です。付きまとわれている恐怖・嫌悪感等は聴かせて下さい。
  離婚に有利になるようにという相談を受けたこともあります。弁護士への相談をお勧めします。その上で、感情的になって不利な条件をのまないように、心を整理するサポートはさせていただけたらと思います。
  勿論、不登校を始め、お子様の問題に関しても、一緒に考えさせていただけたら嬉しいです。
  こんな使い方もあります。パラグアイに居たとき、下宿先のDoña(ドーニャ:女主人)は月に1回心理療法を受けていました。有力者の妻であった彼女には、地域の女性たちから様々な問題が持ち込まれていました。行政への苦情からご近所トラブルまで。対応していると心がごちゃごちゃしてきます。それを月に1回心理療法を受けることで、心をニュートラルにして、的確なアドバイスをできるようにしていたのです。かつ、有料の心理療法を受けることは、そんなことにお金を使えるというステイタスシンボルにもなっていました。アスリートが、大会で結果を残せるよう自分の状態を一番良いものにするために、心理療法家がついていたことが話題になったこともありましたね。

☆心理療法と、人生啓発セミナー・宗教との違い。
  心理療法を語ると、人生啓発セミナー・宗教の勧誘と間違われることがあります。受ければ人生が変わるかもしれないという点では間違えるのも無理がありません。
  臨床心理士の価値観は、脇に置いておいて、クライエントのために何ができるか、どうしたらよいかを、専門的知見を基に考えることを、臨床心理士養成課程で訓練されます。取得後も訓練は続きます。各療法とも、「こうしたほうが良い」「これはやってはいけない」と療法上の決まりはあります。
  そして一番の違いは「これをやれば幸せになります」「絶対に治ります」などの確約は致しません。”幸せ”も”治る”ということも、心理療法の中で、その方なりのものを見つけていくもので、決まりきった”幸せ”や”治癒の形”はありません。セミナー主催者や宗教家が決めたゴールに向かっていくようなことはありません。
  勿論、壺等は買わせません。心理療法の進み具合によっては、新しい療法の提案や役に立つだろう書籍の紹介はするかもしれませんが。断っていただいても、たくさんの人で囲むような真似はしませんし、いきなり念仏やお題目をあげたりしません。最初に合意した料金以外には受け取りません。臨床心理士として困るのが、お花やお菓子等を謝礼として持ってきてくださること。お気持ちは大変うれしいのですが、倫理に引っかかります。あなたがあなたの人生を歩めるようになれば、それが一番のご褒美です。

☆臨床心理士に出会うには
  どの専門家に相談するかは大きな問題です。不動産屋やクリーニング店でさえ、はずれをひいたら腹立たしいものです。ましてや、ご自身やご家族のことを相談する相手となると、信頼できる方に紹介していただきたいと思うのは当然でしょう。
  スクールカウンセラーになった初期の頃は、児童・生徒、保護者、教員(校長先生含む)から、どこか良いところはないかとよく訊かれました。医療機関や、臨床心理士と相談したいが、スクールカウンセラーの出勤日と保護者の休みが合わない等様々な理由でした。状況を伺い、合いそうな機関を2,3か所、特徴を添えて情報提供しました。また、ご本人・保護者の許可があれば、保護者等と一緒に、「紹介状」を作成、相談に行く機関にもっていってもらいました。どういうことで、その機関を利用することになったのかを簡単にまとめたものです。何を伝えたらよいのかわからないとおっしゃる保護者からは喜ばれました。私が下書きをしたものを保護者と読み合わせし加筆訂正、所属長(校長先生)にチェックしていただいたものを持って行っていただきました。多くの場合は担任・養護教諭にも見てもらって構わないと許可をいただきましたので、見ていただいています。まれに、担任・学年の先生がたには見せて欲しくないとおっしゃる方については、そのお気持ちを尊重しました。ですが、学校の1職員として書くので、校長先生のチェックだけは外せません。それもだめとおっしゃる場合は作成をお断りしました。「紹介状」を受け取る身としては、これまでの状況が概観できます。ご本人・ご家族と学校の関係性も予測できます。学校の方としては、学校の様子を相談機関に伝えることができます。今後、アドバイスをいただくなど、連携が取れるかもしれない安心感と余裕が生まれます。紹介状なしで、相談機関に行っていただいたご家族で、ご家族もその相談機関からのサポートを欲しがっていたにも関わらず、伝え方が悪くて、「何でもない」と相談継続を断られたことがあったので、できうる限り、紹介状を作成して持って行ってもらっていました。
 でも、最近は、このような関わりができなくなりました。管理職から禁止令が来ます。相談機関を紹介することが、利益供与を疑われるからです。接待なんかしてもらってなくともです。また、「紹介状」を作成することも、そののちトラブルになる可能性があると言います。確かに、保護者に内容をチェックしてもらわないまま先方に渡した「紹介状」がトラブルに発展したという話は聞いたことがあります。子どものために何ができるかよりも、トラブルにならないかをまず考え、行動しなければならない。教員を萎えさせている要因の一つです。信頼関係が地に落ちた、なんと生きにくい世の中になったのだろうと思います。
 身近な専門家に教えてもらえなかったらどうしましょう。
 ここでご紹介するのは「臨床心理士に出会うには」というサイトです。全国に対応しています。一般社団法人日本臨床心理士会のホームページ内にあります。クリックしていただき、利用規約に同意していただくと、探すための画面に移ります。地域・相談したい事柄・年齢他で絞り込めます。相談や支援の方法でも絞り込めます。ただ注意していただきたいのは、臨床心理士のいる相談機関がすべて載っているわけではありません。
 いくつか候補が出てきたら、ホームページを読んで、相談してみたいかを確認してください。
 大学の臨床機関は、他の開業機関よりも価格が安いことが多いです。基本、教授等の指導の下、臨床心理士・公認心理師を目指している学生・院生が担当することが多いからです。教授や専任の心理職が担当する場合でも、学生や院生が陪席していることがあります。私が、大学の臨床機関にリファーした方は、養成機関では面談の技術が劣ると言って、私の基に帰ってきてしまいました。とはいえ、児童・生徒・学生の場合、同じ年代やお兄さん・お姉さんの立ち位置の方とうまくマッチングして、良い方に行ったこともあります。有名な先生よりも、なりたての臨床心理士が初めてのケースを一生懸命に担当して、WINの結果になったケースも聞いたことがあります。この人と話したいと思えるような、相性というものが大きいです。

☆スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー
  学校にはスクールカウンセラー(SC)が配置されていることが多いです。
  そして、もう一つの専門家:スクールソーシャルワーカー(SSW)もいます。自治体や学校によって、配置のされ方は違います。東京都教育委員会にはユースソーシャルワーカー(YSW)と呼ばれている方がいますが、仕事としてはSSWとほぼ同じです。
  どう違うのか、どちらに相談したらいいのかという質問を受けます。
  基本、SCは心理の専門家。臨床心理士等の心理学の専門性をもって仕事をしています。SSW/YSWは福祉の専門家。精神保健福祉士や社会福祉士などの福祉系の専門性をもって仕事しています。
  SCは心の動きに注目して、心理療法を行います。
  SSWは制度等について詳しく、環境調整を行うと教科書に書いてあります。YSWは生活面でのサポートにたけた方と、就職等へのサポートにたけた方がペアになって、生徒とその家族・教員をヘルプすると聞いています。
  どんなふうに協働するかと言えば、例えば、被虐待児へのサポートで、臨床心理士が、PTSD治療の為に、被虐待児の現実とは違う内的現実に心理療法でどっぷりと付き合えるのも、ソーシャルワーカーが、現実で起こっていること・危険性を把握してくれるからです。
  けれど、ある精神保健福祉士に言われたことがあります。「心理療法の教科書にも、精神保健福祉士・社会福祉士の教科書にも、クライエントとラポールを形成し面談すると書いてあるけれど、同じことをやっているの?同じことをやっているのなら、二つの資格はいらない」と。この質問に、私は上記の被虐待児のサポートについての役割分担を答えました。
  でも、そう簡単に割り切れないのです。上記にSSW/YSWは環境調整を行うと書きました。例えば、私のブログ「再発しないために必要なこと」にも書いたような低EEの環境を整えるために、周りの方の意識を変える必要があるかもしれません。周りの方の意識を変える手段として、カウンセリングが有効な場合があります。似たようなことを行っているのです。勿論、臨床心理士の方が、心理学については広く深い専門性を持つように努力を続けたいと思うのですが。
  そのクライエントが何を求め、抱えていらっしゃる問題をどう見立てるかによって、どちらの専門家がどうサポートできるかが違ってきます。とはいえ、まずはお話を伺わなくてはわからない。相談しやすい人へ声をかけることから始めて下さい。


 
 

コメント
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