自作太陽光発電とその制御を初めて2年少しが経過した。いくつか学習したことをまとめてみたいと思う。
- 不安定な電力であることは認めよう
日中しか作れず(夜間はゼロ)、曇りや雨でも発電量は落ちる。でも、使い方を考えればいくらでも活用価値はある。 - 夜間は電力をなるだけ使うな
夜間に太陽光電力を使うためにはバッテリーが必要だ。バッテリーは寿命が短い。運用コストを下げるためにはバッテリーを深放電してはいけないので、夜間の消費を抑えるべき。 - バッテリー以外のエネルギー蓄積を考える
バッテリーを使わないようにするとなると、別の方法で太陽光エネルギーを蓄えられないか、ということを考える。たとえば「揚水」だ。揚水とは、太陽光がさんさんと輝いているときにポンプで水を高いところに汲み上げるという方法。太陽光エネルギーを「位置エネルギー」として「充電」するということだ。汲み上げた水を落とすことで水力発電が可能となる。ほかには「蓄熱」という方法もある。蓄熱レンガという特殊な高比熱のレンガに熱を蓄える。これは別に発電する必要はないかもしれない。レンズや凹面鏡などで光を集めて熱に変換すればよい。蓄積された熱は、冬期に夜間の暖房として使うことができる。 - 日中に電力をどんどん使え
太陽光発電は負荷をかけないと発電しない。日中留守で電気を使えないと、太陽光エネルギーはエントロピーとなって消滅する。日中に使うためになんとか策を考えるとよい。たとえば冷蔵庫を冷やす、夏の夜間のために 氷を作っておく、蓄熱器を動かす。最近、私は日中の発電を冷蔵庫に自動的に切り替えて供給している。できるだけ、朝、製氷装置に新しい水を入れ、「急速製氷」モードにして外出する。こうすると、発電が順調な時間帯に、がんばって氷をたくさん作ってくれるのだ。充電機器(パソコン、携帯電話、充電式掃除機)、店舗やオフィスの照明、エレベーター・エスカレーター、工場電力、などなど、日中の電力用途はたくさんある。このためには太陽光が発電しているときに電力を供給できるようにする設備が必要だ。 - 冷房にはもってこい
とくに、夏の季節の日中の冷房は最適だ。なぜなら「暑い日」=「太陽光が強い」ということなのだから、発電量は豊富だ。 - 暖房には向かない
そもそも電気を暖房に使うことを私は推奨しない。燃焼系のほうが絶対よいと思っている。家庭への供給インフラならガスのほうがよい。最近は、ごみ消却熱をヒートパイプや蒸気で配るシステムもある。熱はなにかといろいろなところから「どうせ」出ているものだ。コンピューターからも、そうとうな熱が出ている(出したいわけではないが、どうしようもない)。コンピューターのセンター(データセンターという)は、常に冷却に悩まされている。床の下にコンピューターを埋めておけば、冬期には暖房になる。太陽光発電は曇り、雨、雪の日には日照が弱くなるため発電量が落ちる。冬期はそういう日は当然寒い。だから、太陽光発電を暖房に使うのは無理がある。 - 逆潮流だけが供給方法ではない
実際自分が作って運用するまで、自作の太陽光発電を利用するには、完全なオフグリッド(家庭用電力網から切り離された構成)でしか使えないと思っていた。太陽パネルからの電力を、電力網に逆流させ売電する「逆潮流」はとても難解な技術であるし、事業者免許が必要だからだ。しかし、2極2接点のリレーを使って切り替えると、ほとんどの電気機器は正常に動作を続けたまま電力網<->太陽光との間を行き来できることがわかった。(注:この工事をするには電気工事士の免許が必要)リレーでの切換えは瞬断する(一瞬だけ電気が途切れる)ので、無理だと思っていた。しかし実際にはほとんど問題ない。これは、現代の多くの電気機器が、マイコンなどを搭載していることもあって「安定化装置」を装備しているから、と考えられる。安定化装置にはコンデンサーが搭載されていて、瞬断に対応できるのだ。また、近年のリレーは瞬断時間がとても短い。たとえば、関東では交流電力は50Hzで、この場合、常に秒間100回程度、0ボルトの時間がある。これと同じレベルでの瞬断なら、そもそも問題ではないということかもしれない。実際、最近のリレーは0.02秒くらいで切り替わる。このため、電力を逆潮流という方法で流し込まなくても、順調に発電しているときだけ負荷=電気機器を接続して太陽光発電の電力を消費できる。売るほど作らないのであれば、逆潮流は必要ない。 - 家庭や一般企業で代替エネルギーへの転換を進めよう
東京電力と政府が「放射能発電がベース電源」と宣っている理由は、石油、ガスなどの燃料輸入のコストに由来する。 それは当然のことながら電力不足への不安から来ている。一般家庭で太陽パネルの設置が進み、工場やオフィスビルでも太陽光を使った日中電力の供給が進めば、「真夏の電力不足」なんていう言い訳をされなくて済むはずだ。