a green hand

4クール終わったんだ



「4回目終わったんだ!」
夫の急な発言に 「ん?」

確かに昼食後のプレドニンを服用したら4回目の治療は終わりだ。

私にとって今まで1週間の治療後の2週間が問題だったのに、夫はいつの間に前向きになっていたのだろうか。

考えてみれば治療ができたことが大事である。

「8回なんて・・・点滴しながら死ぬようだ」と弱音を吐いていたのに・・・。

ミヒャイルエンデの「モモ」という児童文学があった。
その中で果てしない道路を掃除する仕事を持つ男の話が載っていた。

掃除している今、ここだけを考えていれば果てしない道のりはいつの間にか終わっているというようなことだった。

どちらかというと先を考えすぎて嫌気をさすタイプである私はその話が深く心に残っていた。

夫にもそういうことで励ました。

私の出来ることは野菜嫌いの夫の栄養を管理することと毎日病院に来る事だ。

副作用で白血球が減り、怠さに耐えることは夫にしかできない。

白血球増量注射で白血球の数を増やすことは医者なら出来る。
でも限界があるとしたらそれは、免疫力だ。

これは「きもち」である。
おかしくなくても笑うそれだけで免疫力というものはあがるものなのだ。
免疫力とは不思議な力である。

友人にラフターの先生がいる。
いつもニコニコと和やかである。

夫は面白いテレビを見ても決して笑わない。
どうして?と聞いたことがあるぐらい声を出して笑う事はない。

妹や母や私が声を出して笑っているのは、何故笑わないのと思うほどに不思議なものらしい。
夫からみれば馬鹿扱いだ。

今回、笑ってというとニコッとふざけて頬の筋力を動かしてみせる。

俺は心の中で笑っているというのだ。
おかしくないわけではないという。

何時代に生きる男なんだろうと思うほどである。

4回が終わった。

5回目も治療ができるよう笑って欲しい。

こんな風に我が夫も私も家族も闘病中である。
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