八月の終わり
もうあきらめていた夏が
もう一度力を取り戻した
夏は 次第に短くなる日に濃縮されたように輝き
雲ひとつない空に灼熱の太陽を誇らかに示す
そのような人間もその努力の終わりに
失望して身を引いたのに
突然もう一度大波に身をゆだねて
命の残りを賭けて
跳躍してみることがあろう
恋に身をやつすにせよ
遅まきの仕事を始めるにせよ
かれのこういと欲望の中に終末についての
秋のように澄んだ深い自覚が響きわたる
夏の終わりに詩人ヘッセは細やかな感性で人間と
自然界とに共通するものを洞察する。
晩秋の日、サルビアの赤を誇るかのように、眩しく咲く姿に、言い知れない感動を持って眺めていた時代が私の過去にあった。
今でもそのサルビアの感動の赤が時々懐かしく思い出される。
植物も、人間も生きてきたように最期を迎える。
私もそういう人間でありたいとつくづく老いて思うのである。