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a green hand

再び、一汁一菜について

私は幸か不幸か、主婦の経験がなく、退職を迎えた。

子どもたちが育ち、家を出て行くまで、仕事だけをして過ごした。

「私のお母さんはね、石鹸の匂いもお料理もしないお母さんなんだよ」
幼稚園の時に、友達に話す娘がいた。

「せっけんさん」まどみちお作詞のとても優しい童謡がある。

せっけんさんはいいにおい
お菓子のにおい
お花のにおい
かあさんのかあさんのにおい

せっけんさんはかあさんよ
ぶくぶくあぶく
かわいいあぶく
あぶくのあぶくの
かあさん

私は心苦しい思いで園児の前でこの歌を弾いた。

一言で言えば能力が無かった。
虚弱体質?怠け者?そんなわけで10年も早く仕事から退いた。

実の母に子どもを任せっきり、家事もしないで仕事中心の30年が過ぎた。
母に育てられた子どもたちは逞しく育った。(嘆くことはないと自分を慰めるw)

そして、退職後、専業主婦になろうとしたが、母はすこぶる元気。

夫は料理上手。

私の出番は家を整えることだけ。

退職後に、すっかり貧血が治り、海外の美術館巡りに明け暮れた。

ここまで読んでいただいただけで呆れられていること間違いなし。

7年前に夫が病気になり、母が3年前に入院すると主婦として生きる道が見えてきた。

であるから、小さじ一杯の塩がどんな味になるのか、大さじ一杯の砂糖がどれほどに甘いか。
レシピを間違えて読んでも想像できないほど、家庭料理の「加減さ」がわからなかった。

味の検討がつかなかった。

そういう私が、唯一できると言えたのはレシピ通りにすれば出来上がるお菓子だけ。

それと立派な料理研究家の本を読む事と陶器やキッチングッズに拘りがあったこと。

日々の献立を考えただけで疲れてしまい、食事が悩みの種となり苦しくなった。

娘の方は、そんな私をよそに様々な料理教室を経て……
もはや私は娘からいろいろと習う立場となった。


であるから私の主婦歴は、ここ数年なのだ。

そんな私の心を軽くしてくれた救世主が、「一汁一菜で良いという提案」の土井善晴さま。

誕生日に美術館に行こうと東北新幹線に乗り込んだ。
大宮上野間で新幹線の電気事故があったことを知り、

迷った挙句、諦めて郡山で降りなければ、
そして書店に立ち寄らなければ、今でも出会わなかったかもしれないこの「本」である。

運命の出会いが私を救ってくれたのだ。

購入し、間も無く、ひと月である。










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