セグメントゲームズ

元ゲームプランナーという、しがない肩書きだけが取り柄のゲームブログ。生ラジオの告知が中心で、たまにテキスト対談を更新中!

議論~コンセプトを貫き通すということ

2009年03月14日 23時34分04秒 | 【旧】コンテンツ集
ゲームというのは昔から、単純なジャンルのみにとどまらず、あらゆる方向性のゲームが発売されています。わりと正統派なタイトルもあれば、非常に個性あるタイトルもあります。
正統派はわりと万人に馴染みやすい一方、個性の強いタイトルは好みが分かれます。しかし、自分の好きなタイプと合致した時は、正統派のタイトルを超えるだけの楽しみや価値が得られるでしょう。

さて。そんなあらゆるゲームには、いわゆる「コンセプト」というものが存在します。簡単に言うなら、そのゲームのテーマ…といったところでしょうか?
このゲームは、何をさせたいのか?まったりと遊ばせたいのか?それとも緊張感を生み出したいのか?サクサク楽しめるのか?その方向性を、1つの言葉で語れるものが「コンセプト」です。


◆コンセプトの例
例えば、楽しく遊ばせてもらった『マリオ&ルイージRPG3!!!』は、クッパがフィールドを冒険しながら、マリオブラザーズは体内で冒険をする。これが、この作品の大きな特徴であり、コンセプトでもあるでしょう。非常に明確ですね。
この作品はシリーズ作品ですが、このコンセプトは過去の2作品にはなかったコンセプトです。つまり、「シリーズ作品としてのコンセプト」ではなく「作品個体としてのコンセプト」が成り立っているわけです。ゲームの仕組みやシステムはほとんど変わりないですが、コンセプトが違うだけでその印象はガラリと変わります。

他にはそうですね…。『スペースインベーダー エクストリーム』は、一言で言うなら「気持ちいいスペースインベーダー」というところでしょうね。今月に発売予定の『スペースインベーダー エクストリーム2』でもそれは継承され、これで「シリーズ作品としてのコンセプト」が出来上がっています。

…このように。いろんなゲームにはコンセプトがあります。そして、そのコンセプトを理解して、ゲーム制作の開始から完成まで揺らぐことなく貫き通すことが、そのゲーム個体としての完成度を高めるわけです。
無論、コンセプトそのものがいいかどうかは別なので、結果的にコンセプトが面白くなかったら、それはそれで残念なことになるかもしれません。だから、最初が肝心でもあるわけです。


◆コンセプトが揺らぐということ
では、このコンセプトが揺らいでしまうと、どうなるでしょうか?
ユーザーはパッケージや情報などを見てゲーム内容を判断するんですが、実際に遊んでみたら思ったのと全然違うという「遊ばせる側」と「遊ぶ側」の考えに大きな違いが生まれてしまうことになります。そうなると、ユーザーとしてはゲンナリ…ですよね。もっとも、ユーザーが思い込みすぎることもありますが(笑)
そもそも、なぜ揺らぐことがあるのでしょうか?原因はいろいろとあります。

例えば…ゲームを「売り込む」人間は当然、ゲームを売ることを考えます。じゃあ売り込むためにはどうするか?当然、ユーザーに好かれるものがいいと思うわけです。そこで思いついてしまう一番いけないものが、「流行を取り入れる」ということです。ええ。一番ダメなパターンだと思います。
ゲームの制作は、短いものは短いですが、それなりのボリュームとなると1年2年はかかります。逆に言うなら、今から考え始めたものは1年後、2年後に発売されるわけですから、その頃に発売してこのゲームが売れるのか?ということを、現状を把握して予想しなければいけないわけです。それはもちろん、とても難しいものでして…どんなにデータをそろえたところで、それなりに遠い未来を完璧に予想できることは厳しいわけです。

で。制作が進んでくるにつれて、売り出す人間というのは徐々に「不安」を感じてくるわけです。もちろん、ゲームの完成具合によるところもあるわけですが、「このゲームは本当に売れるのか?」とか「もっとボリュームを詰め込んだほうがいいのでは?」とか思い始めてしまうわけです。
そこから、「もっとこうしたほうがいいのでは?」という口出しが始まっていくわけですが…それが純粋に「こうしたほうがコンセプトに合っている」とかならいいんですが、例えば「今、脳トレが流行っているから、あの要素を入れて」とか言い出すと、もうアウトです。もうその人間は、コンセプトを忘れていることになります。

もちろん、他にも考えられる原因はあります。
ゲーム開発者の間で、ちゃんと意識が統一されていないことで、実はコンセプトだと思っていたことが違っていたとかは…あってはならないんですが、あるものなんです。
一言に「もっと遊びやすくして」といったところで、実際にどうやって?という考えは千差万別なわけです。だからこそ、しっかりと話しあって、開発者の中で考えのズレがないかを確認しあうことが重要なわけです。


◆申し訳ないけど、例を…
例に出して大変申し訳ないですが、1月に発売した『フラジール ~さよなら月の廃墟~』も、コンセプトが揺らいでしまったためにもったいない思いをしているタイトルの1つだと思っています。というか、私自身これほど「もったいない」と思ったタイトルはありません(苦笑)
このゲームのコンセプトは、「廃墟探索」です。好き嫌いはあるでしょうが、コンセプト自体は誰がどう見ても明確なものでした。ところが、ボリュームを気にしてしまったせいか、どうもちぐはぐな要素が入っており、結果として「このゲームは何がやらせたいのか?」が分からなくなっていたわけです。
「廃墟探索」を作りたかったのか?「RPG」を作りたかったのか?明確にしなくてはいけなかったのに、それをくっ付けてしまった時点で、廃墟探索が「コンセプト」ではなく、「ただの1つの要素」にしか過ぎなくなってしまったわけです。それによってこのゲームは「廃墟探索もできて、RPGのように戦闘もできて…」みたいな、とりあえず色々詰め込みました、というものになってしまったのではないか?と思うわけです。

遊べる要素は多いほうがいい、というのを求めるユーザーや、そう考えるクリエーターもいらっしゃいますが、それが必ずしもゲームを面白くするわけではありません。コンセプトと食い違ったものが入ってしまったり、コンセプトの影が薄くなってしまうと、逆効果なわけですから。


◆まとめ
コンセプトとは、ゲームにおいての核となる存在です。それ自体がまず面白いと確信できるものであることも重要ですが、それが制作において揺らがないことも重要です。上の人間から何を言われても、それがコンセプトとかけ離れている場合は「違うでしょ?」とハッキリ言えるだけの自信が、「本来は」必要なわけです。まあ…ゲーム業界もサラリーマンである以上、縦社会というものがあるので難しかったりもするわけですが…。
そのコンセプトが、どこかで揺らいでしまうと…所詮はその程度の意志だったんだ?ということになるわけです。そうなってしまうと、そこからどんどんグダグダになっていくでしょう。開発する人間は作るものが変わるわけですから一気に大変になりますし、テンションも下がります。さらに、結果的に発売しても面白くない・売れないケースが多いのではないかと思うわけです。誰も得をしません。誰も得をしないんですが、起きてしまうものなんです。

ゲームを売り出す人間は、ただ売ることを考えるだけではなく、「商品として価値のあるもの」を目指すということも、忘れないで欲しいです。私は、ただ売るだけを考えればいいのであれば、誰でもできそうな気がすると思っていますので…。
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7 コメント

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ドラクエなんかは (ハリコン)
2009-03-15 17:57:13
流行り廃りを気にしていたらやってられないゲームですよね。
既に妖精に賛否が出ているみたいだし。

発売が7月であるといいのですが…
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あのコギャルフェアリーですか。。。 (ナケイ)
2009-03-16 16:47:39
DQ9のあの妖精、ヤッパリ賛否があるようですね。
国民的RPGにあんな抵抗ありそうなものをだしていいのかな?と僕も思っています。
返信する
>> 流行を取り入れる (グルグル)
2009-03-19 10:42:23
「流行を取り入れる」というか、「流行しているコンセプト脳トレプレイゲームを作る」になると思いますが…。 

脳トレブームの時には、流行に乗って、同じような(悪く言えば二番煎じな)ものが続出しましたよねぇ。

最近だと、モンハンブームがありましたが…
モンハンは「協力プレイ」で楽しむことがウリで大ブームになりましたが、その後、同じ「協力プレイ」を趣向としたゲームが結構出たような気がします。

まあ、今までシリーズものとして展開してきたもの(PSシリーズやFFCCシリーズ等々)なら「それ、○○のパクリだろ」とか「二番煎じだな」とまでは言いませんが
それでもこのモンハンブームの流れに乗っかって出したきた感は個人的にあると思っています。
ドラクエ9も、通信で協力プレイみたいなのがあるみたいですしね。


まあ、色々言ってますが自分自身「協力プレイ」大好きです(笑)
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訂正 (グルグル)
2009-03-19 10:48:34
1行目の
>「流行しているコンセプト脳トレプレイゲームを作る」
めちゃくちゃ変ですね、すみません(苦笑)

正しくは
「流行しているのコンセプトのゲームを作る」
でお願いします
返信する
ソフトではないですけど… (Wing)
2009-03-19 19:17:12
Wii自体のコンセプトが変わってきてますよね。
クラコンPROを出すことからも、「ちょっとリモコン操作にこだわるの止めようかな?」っていう考えが見え隠れしだしています。
以前ならば、WiiのソフトはWiiリモコンの操作に対応していないものは発売できなかった(はず)。でもモンハンGはクラコン専用(3の体験版がリモコン使えるからOKなのかも知れませんけど)です。
そういったソフトがこれからは増えてくるんだと思います。でもそれってWiiじゃなくてただのゲームキューブじゃん、って思ったり。
返信する
Wiiは・・・ (ぽーろ)
2009-03-24 01:29:51
>Wingさん
>以前ならば、WiiのソフトはWiiリモコンの操作に対応していないものは発売できなかった(はず)。

これは間違いですね。
推奨されていますが強制はされてません。

また、モンハンを気持ちよく遊ぶためには
周辺機器の拡張が必要で(今回の場合はクラコンPRO)
幅広い層のユーザーを獲得・満足させるWiiのコンセプトとははずれてないように思います。
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Unknown (partygame(管理人))
2009-04-03 00:25:27
>ハリコンさん
まあ、アクセントとしては別にいいとは思いますけどね。下手に前面に出なければ。

>ナケイさん
確かに抵抗を少し生んでしまうかもしれませんが…わりとああいう「オタクっぽいものを取り入れる」という傾向が、最近のメジャーなタイトルには増えてきているような気がします。
思えば『スーパーペーパーマリオ』にもオタクが出てきましたし(笑)


>グルグルさん
脳トレブームのころがホントいい例で、中身をちょっと変えただけの二番煎じな脳トレがどれだけ発売されたものでしょうか?と。
モンハンブームというのは、言うなれば「皆で協力して巨大な敵に立ち向かう」…的なものだと思います。まあ、そこから色んな形のゲームに派生するのは、二番煎じというわけでもないとは思います。もちろん、モンハンを意識しすぎて作ってしまうと二番煎じになりますが(笑)

>Wingさん
元々、リモコン操作「だけ」にこだわっていたわけでもないとは思います。むしろ、本当にそうだとしたら、開発者側はやりにくいことこの上ないわけですから。
ヌンチャクやクラシックコントローラなど、最初から色々な周辺機器が存在したのは、そもそもWiiという舞台を色んな形で利用して欲しい、ということだと私は思っていました。それが良いか悪いかは別としまして。
だからこそ、今Wiiが目指しているのは、ある意味「WiiでもありゲームキューブでもあるWii」とも言えるでしょう。

>ぽーろさん
Wiiにとってモンハン3は、「従来のゲーマー層」を取り込むための大きなカギになり得るとは思います。もっとも、本当に成功するかどうかはまだ未知数ではありますけどね…。Wii版モンハンGの売上で、ある程度は3の未来も見えてくるかもしれません。
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