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元ゲームプランナーという、しがない肩書きだけが取り柄のゲームブログ。生ラジオの告知が中心で、たまにテキスト対談を更新中!

『ゲーム、いろいろ、対談しよう。』 vol.3-2「任天堂の風頼みの現状」

2007年11月28日 21時50分11秒 | 【旧】コンテンツ集
共通テーマ1:『任天堂の風頼みの現状』
対談のお相手:フォックスさん(「任天堂タイムス」管理人)
対談日時:2007/11/24



●「ゲーム機としての活力」が今のWiiには足りない
フォックスさん : まず、昨年のWiiの立ち上げは、地すべり的大ヒットだったと思うんですね。とにかく、CMなどの宣伝で風をおこすことができた…といった感じです。
partygame : WiiリモコンのCMの「これは何でしょう?」から始まって、うまくユーザーを引き込めたと思いますね。
フォックスさん : その効果は勢いが衰えた今なお残っています。ただ、任天堂がWiiを地すべり的にヒットさせたものの、何らかのことで手にした顧客が一気に離れてしまうのではないか…と思うんです。皆さんがWiiを「飽きた」とか「つまらない」と次第に感じるようになっていき、その溜まったものがいつ表に形として出てくるか…。
partygame : 最近はけっこうそういった話題がつきなかったりするわけですが…個人的には今週もそれを強く感じる出来事はありましたね。今週発売のソフト(11/22)の初日売り上げで、まず「ウイニングイレブン2008」がPS2版で15万本、PS3版で10万本の売り上げを記録しています。PS3ってすごく売れていない印象が強いと思いますが…PS2版との売り上げ比率を見る限りでは、ハード自体の普及は小さくても「今もなお起動してくれている」ユーザーは多いんだと思うんです。その一方で、同日に発売したWiiの「マリオ&ソニック AT 北京オリンピック」は…、
フォックスさん : 1万5000本ですね。
partygame : そうですね。まあ元々注目している人は少なかったのかもしれませんが、CMなどの広告展開をしているにはさすがに寂しい数字に感じました。
フォックスさん : ただ、マリオソニックは結構宣伝していましたので、これは「スーパーマリオギャラクシー」よりも危ないのではと思いましたね。しかも、従来型ゲームではなくWiiで強いとされたファミリー向けで・・・。
partygame : まあ、あれも結局はスポーツだと思うんですよ。ほとんどの購入ユーザーが「Wii sports」を持っていることを考えると…結局「似たようなもの」だと思われている可能性もあります。
フォックスさん : スポーツ被りですよね。
partygame : そうですね。ただ今回のことで、Wiiは普及ペースは速いけど「今もなお起動してくれている」ユーザーが非常に少ないのではないかと思うんです。あるいは、Wiiチャンネルだけで満足してしまっているユーザーも多いかもしれません。
フォックスさん : Wii Sportsをやった後は部屋のインテリアになってしまっているという人も多いかもしれませんね。Wii Sportsで手にした顧客を、DSの「Newスーパーマリオブラザーズ」や「おいでよ どうぶつの森」のようなソフトでより「固定層」にしていかなければならないのに、Wiiはそれが十分行えていなかったような感じで、これが後々大きく響いてくるのではと懸念しています。
partygame : で、来週にようやく「Wii Fit」という新しい戦略が始まるわけですが、私個人的には、「Wii Fit」はそこそこ売り上げてくれると思っています。
フォックスさん : 私もそこそこは売り上げると思っています。ただ…Wii Sportsほどのヒットはないと見ていますね。
partygame : まあどうしても「周辺機器というハンデ」がありますからね。
フォックスさん : 100万本に届くかどうかも、懐疑的です。バランスWiiボードとかも…一度片付けたりしたら次に出してくるのが億劫になるでしょうね。
partygame : 出しっぱなしというのも…さすがに邪魔になりそうですしね。私は問題ありませんが(笑)


●『ゲームらしいゲームが売れないゲーム機』
partygame : 「Wii Fit」が売れないかもしれないというのも問題だと思うんですが、売れたら売れたで問題な気もしたりします。というのが、もし今回のWii Fitが例えば100万本、150万本までいったとします。すると、現時点で売れているソフトが「Wii sports」「はじめてのWii」「Wii Fit」などの「本来ゲームをあまりしないユーザー」向けのソフトだけになるわけです。マリオパーティ8」は例外ですが(笑)
フォックスさん : Wii Fitが売れてしまうことで、より初心者層のゲームユーザー引き込みが厳しくなってしまいますよね。
partygame : それもありますが、サードパーティがある2つの手段をとるかもしれないんですよ。1つが、バランスWiiボード対応という点にこぞって集まる。もう1つは、もしかしたらWiiをさっぱり切り捨てるかもしれません。
フォックスさん : 私もそれは思いますね。リモコンと同じように安易に対応させたソフトを出すか、もうこんなのがウケる機種はダメだ、となるか…。
partygame : 上記のようなソフトしか売れないということは、Wiiの購入ユーザー層のほとんどがすでにそういう層で埋まっているということになるので、いわば『ゲームらしいゲームが売れないゲーム機』という見られ方をするかもしれません。それがWiiの最も怖く危険な点だと思うんです。
フォックスさん : それは本当にそうですよね。現時点でも国内で一番売れているのに、いわゆる有名シリーズというものがほとんどない…。
partygame : なくもないですが、フォックスさんも頻繁におっしゃっているようにマリオギャラクシーやその他の有能なサードパーティソフトが売れないというのが…。
フォックスさん : 任天堂のマリオやゼルダでも、ゲームキューブより厳しい状況に立たされていますよね…。それと、プレイステーションユーザーの支持の固さもありますね。Wiiが初心者層をゲームユーザーに出来ずにいる一方で、PS3はこれほどの苦境にあっても、従来のプレイステーションユーザーの皆さんがいる。(PS3にいなくてもPS2やPSPにいてくれる)これだけPS3が苦しくても、基底(ベース)に支持層がいる。これは大きいことだと思います。
partygame : PS3に関してはいろいろ書かれていますが、個人的には良い意味で捉えると「プレイステーションユーザーのことを考えて商売をしている」という感じなのかもしれません。それは悪く言えば「市場を拡大する気がない」ともとれますが、それでもまだ「ゲーム機」としては実りある存在にはなってきていますよね。ウイイレ2008の売り上げがそれを証明しています。
フォックスさん : そういった意味では、私はソニーは今なおうまいと思いますね。Wiiの「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」についても「立ち上げ時だからこの程度」とする方もおられますが、私は明確に、ゼルダレベルとしては国内では「惨敗」だと思っています。今月のマリオ発売月に、WiiがPS3より悪い状況なのも惨敗に等しいと思っています。


●任天堂はどこに「新しい市場」を作るのか?
partygame : そういうことを考えてみると、いわゆるフォックスさんがおっしゃっている「風頼みの現状」というのは、これは「風頼み」というよりは任天堂が「全く新しい市場を作ろうとしている」ということなのかもしれません。しかし、それに周りがあまり付いていけてないと思うんです。
フォックスさん : その試みがうまくいかなかった時の代償は、後々きわめて大きなものになるということもおそらく任天堂は分かってはいるでしょうが、やはり懸念してしまいますね。任天堂だけが風変わりなことをしていて、周りが冷ややかに見ている…といった感じなのかもしれません。
partygame : そうなると…そのうちWiiは最後の手段として完全に方向性を固めていくかもしれません。『ゲームとは違うゲーム機』という存在に。
フォックスさん : 今の路線…徹底的にゲーム初心者やWii Fitのような路線を突き進んでいく…と。
partygame : そうですね。任天堂自身も、今もなお初心者と熟練者の両方のことを考えてゲーム制作とかを進めてきていますが、発売して1年ないし2年で購入ユーザー層がそういう方向に固まってしまったというのなら、メインをゲーム機としてではなく「ゲームとは違うゲーム機」としてしまったほうがいいと判断するかもしれません。で、ゲームらしいゲームは携帯ゲーム機で展開していくという感じで。
フォックスさん : それも、中途半端になるよりはそちらが最も良い結果を出しうる道であれば、ありでしょうね。ゲームユーザーとしての気持ちはまた別かもしれませんが…。
partygame : ただしそれは、よほどのことがない限りそうはしてこないと思います。それにこれからまだ「Wii Fit」に「大乱闘!スマッシュブラザーズX」、「Wiiウェア」が控えていますから、完全な答えを出すのはそれを見てからのほうが確実かもしれませんね。
フォックスさん : 完全にゲームユーザーに背くことがはっきりしてしまうと、それこそ今なお付いているゲームユーザーまでも切り捨てかねないですからね。
partygame : スマブラXが巨大なキラータイトルとなってゲームユーザーを引き込めれば、それが「モンスターハンター3」などの今後の有名作にうまくつながってくれるかもしれませんしね。
フォックスさん : そういった意味でもやはりスマブラXの動向は、本当に見逃せなくなりますね。やはり一ゲームユーザーとしては、ニンテンドウ64時代の『罪と罰 ~地球の継承者~』のような硬派な任天堂ゲームを今後もプレイしたいですので、今の路線を進めつつ、スマブラXが成功してゲームユーザーも増え、モンハン3がWiiで成功するような方向にもなってほしいなぁと思います。
partygame : そうですね。ライトゲーマーもヘビーゲーマーも、そしてゲームをやったことがない人も大事にすることはとても意味深いことだとは思いますが、下手すれば「二兎追うものは一兎も得ず」となってしまうので、まずはゲームとして楽しんでもらうことが最重要だと思います。
フォックスさん : 確かに中途半端に双方に手をつけて両方失敗してしまっては、元も子もないですからね。
partygame : 任天堂としてはDSで発売した「ゼルダの伝説 夢幻の砂時計」のような、初心者も熟練者も楽しめるソフトというのがもちろん一番理想なんでしょうけど…。
フォックスさん : DSのゼルダは、本当に良い形で成功しましたよね。これは予想外でした。
partygame : ただ、いかに任天堂といえどそんな理想のソフトを生み出し続けるのはとても困難ですし、むしろ商売としては危険な賭けだと思うので、やはりひとまずは、ヘビーユーザー向けソフト、ライトゲーマー向けソフト、そしてWii Fitのような非ゲーマー向けソフトを確実に展開していくことがこれからの課題になると思います。できることならば、CMなどの広告展開についてももう一度見直して欲しいものです。
フォックスさん : どれをどう選択し、どのように実行していくか…。任天堂にとっての正念場と言えそうですね。
partygame : これは、いちゲーマーとしても、いちクリエーターとしても望むことです。


まだまだ続きますよ。
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2 コメント

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Unknown (うけうけ)
2007-11-29 00:28:59
マリオ&ソニックは三連休で持ち直したそうですけどそれでも約6.5万本だそうで、
出荷数は存じませんが少し不満の残る結果になってしまいましたね。
初日に買うユーザーが少ないこともライト層の比率が高いことを示しているのでしょう、
それは決して私は悪いことではないとは思いますが。

管理人さんのおっしゃる、
「ゲームとは違うゲーム機」になることはよほどのことが無い限りないとの意見ですが、
私は絶対にないと思います、
想像すらできませんw
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Unknown (partygame(管理人))
2007-11-29 18:10:11
>うけうけさん
もちろん私は特に任天堂のソフト郡に関しては、初週だけで判断するつもりはありません。やはり勝負は12月でしょうね。

>>「ゲームとは違うゲーム機」
いや、普通は想像もできないと思いますよ。私はある種これを最悪の場合の手段という感じで書いているわけですが…正直、今の任天堂だったら何をやってもおかしくはないんですよ。もちろん想像できないことはたくさんあることと思いますが、それは脳トレであったりWiiであったり…想像もしないことに任天堂は今、果敢に挑戦しています。
そういった挑戦は、現時点では大体いい傾向を向けていますので、もちろん私も最悪の手段はあってほしくないと思っています。だからこそ、逆に過激な発言をしたわけですが。
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