セグメントゲームズ

元ゲームプランナーという、しがない肩書きだけが取り柄のゲームブログ。生ラジオの告知が中心で、たまにテキスト対談を更新中!

partygameが思うこと vol.1 ~ パッケージのダウンロード版

2013年05月23日 12時41分22秒 | 【旧】コンテンツ集
久々に、こういうコラム的な記事を書いてみましょうかね。


ここ最近はラジオとかを公開するようになり、どうせ自分の見解を話すのならそこで…って思うようになっていました。
とはいえ。ラジオではピックアップしにくい、ちょっとマニアックな話題とかもあると思うんです。なんかそういうので、私がちょっと気になることがあれば、こういう形で何となくお話してみようかと思います。

それがこの、「partygameが思うこと」です。




今回は、コメントでたまたま話題に上がりました「ゲームのパッケージがDL版に切り替わる小さな兆候」という記事を読んでみて、思うところを話してみます。
(参照先:「田下広夢の記事にはできない。」さん)

この記事について、ざっくり解説しますね。

小粒タイトルとかが近年、数が少なかったり採算が合わないなどで店頭に並ばないケースが出てきています。故に、そういうタイトルのダウンロード版は、非常に貴重な存在。普通、ダウンロード版がパッケージ版を上回ることはあまり考えられないですが、小粒なタイトルに限っては、それが起こっている傾向があるそうです。
で、小粒なタイトルが並ばない→ダウンロード版が便利→もう全部ダウンロード版でいいんじゃない?となり、ゲームショップから徐々に客足が遠のいてしまう。しかも、ダウンロード版の売り上げなんて誰も分からないですから、知らないうちにダウンロード版市場が大きくなっていて、変化に気付いた時にはもう手遅れではないのか?という、ゲームショップの将来性の心配をピックアップしている内容でした。

ただし、これを書かれた田下(たおり)さんは「それこそ「とびだせ どうぶつの森」なんかから比べると、ものすごく小さい小さい数字の話です」とおっしゃっているので、あくまでこれは、田下さんが得た小粒タイトルのデータから推測したお話だと思ってください。


●= ダウンロード市場が大きくなっているのは、事実 =●
私が行きつけている小型のゲームショップにも、確か「○週間前までに1つも予約をいただけなかった作品は、出荷しません」的なことが書かれていたと思います。あるいは、以前は取り扱っていたXbox360のタイトルが、今は取り扱っていなかったりします。どちらも、採算が合わないからこその変化でしょうね。

そして少し前。ラジオでファミコン生誕30周年を取り上げた時に、”ゲームの保存”についてお話しました。
これも結局は、ファミコン時代にパッケージタイトルという販売方法しか無かったからこそ、現代に残していくのが難しくなってきているということ。しかし、時代が変わり「バーチャルコンソール」や「ゲームアーカイブス」などの配信サービスが出てきたおかげで、昔の作品がダウンロード版として楽しめるようになったということ。これも、今回の小粒なタイトルのお話に通ずるものがあると思います。まあ、バーチャルコンソールは安価であるという利点もありますが。

こういう傾向を見ていると確かに、ダウンロードタイトルの価値観が高まり、ゆえにダウンロード市場が大きくなってきているのは確かですね。
『とびだせ どうぶつの森』も先月、日本版と韓国版の合計売り上げの4分の1がダウンロード版であると話していますし。アピールしていたことと品薄だったことがあったとはいえ、全体の25%はけっこう大きいと思うのです。小粒タイトルに至っては、これ以上にダウンロード版の比率が高いと推測できるので、なおのことです。


●= ダウンロード販売は、ゲーム機の専売特許にあらず =●
さて。小粒なタイトルを提供しているメーカーとしては、どうなんでしょう?
田下さんのお話のなかに「メーカーは、すぐに気がついて動き出す」というのがあり、ここに書かれている通り、ダウンロード版が売れる傾向が出てくると、ダウンロード版に力を入れていくことになるでしょう。
そしてそれは、ダウンロード専用タイトルであったり。スマートフォンアプリであったり。ソーシャルゲームであったり。そういうところに発展していきます。忘れちゃいけないですが、スマホアプリやソーシャルゲームもダウンロードタイトル(一部はブラウザゲーム)であるのが、大事なポイントです。

私が京都でゲームメーカーを退社し、まだ京都で就職活動を続けていた頃、就職相談のなかで求人として挙げて頂いたゲームメーカーのなかには、「これまでコンシューマゲーム事業を続けてきたが、これからしばらくはスマートフォンに事業の場を移す」という傾向のメーカーがけっこう多くありました。
これは、約2年前の話です。2年前ですでにこういう動きが出てきているわけです。

そしてこれは、ゲームショップにとって危険なのはもちろん、ゲーム機そのものにとっても怖い傾向です。
だって、低いコストでゲーム展開をしたいんだったら、今はゲーム機よりスマートフォンですからね。ダウンロード市場が大きくなることは、ゲーム機にとっても悠長に構えている場合ではないわけです。
だからこそゲーム機も昨今、ダウンロード版を強くアピールする傾向が出てきていますし、任天堂が展開している「ダウンロードカード」や「ニンテンドーネットワークプレミアム」。あるいは、ダウンロードタイトルのセールやキャンペーンが増えてきています。ついこの前発表された次世代機「Xbox One」が中古対策として展開予定の「インターネットオークション」のような方式を取るのも、形式は違いますが目的は似たようなものです。


●= ゲームショップとしての価値観 =●
これも田下さんのお話にあったのですが、「今のうちにお店で買うメリットというのを必死になって作っておく必要があるんじゃないかと思う次第です」というお話がありました。

家電量販店なんかを回っていて思いますが、ゲームソフト”だけ”売っている売り場って、ほとんどないですよね。
一緒に売られているもので多いのは、トレーディングカード。いま、市場が大きくなってきていますからね。あと単純に、おもちゃが売られていたりもしますね。むしろ。おもちゃ売り場の”ついで”にゲームソフトが存在するような売り場もあります。
でも、そうでもしないと採算が取れないのでしょう。ゲームショップにおいてのゲームソフトは、表向きにはメインかもしれませんが、商業的には実のところ脇役になりつつあるのかな?と思いさえするのです。

そもそも。これは私が以前からぶちまけている不満ですが、ファミコンが登場して30年も経っている今になっても、売り方がほとんど変わっていないゲームショップの、努力の足りなさも問題だと思います。もちろんそれは、つながりのあるゲームメーカー側の責任もあるでしょう。
で、この10年来で一気にゲームショップが危機に陥ってくる頃になって慌て始めていたら、もう手遅れです。

だからこそゲーム専門店は、かなりの”個性”を求められることになります。
例えば、一番分かりやすいのは「専門的知識」。ゲームソフトを分かりやすく紹介できたり、お客のニーズにあったゲームソフトを提供できたり。そんな、ソムリエのような存在が欲しいところです。
しかし、そんなスタッフがいるゲームショップ、全国にどれだけありますか?パソコンやエアコンなどの他の家電は、そういうスタッフがいたり、むしろ選定に困っていたら声をかけてくれるくらいの接客をしているのに、ゲームでそんなのはまずあり得ません。東京付近はどうなのか知りませんが、少なくともその面ですでに、ゲームは他の家電より損をしています。

あとは、レトロゲームを多く取り扱ったりとか、ポイントサービスを導入するとか。あるいは、ゲーム機やゲームソフトの修理を受け付けているとかも、いいかもしれませんね。
いうならばこれからは、ただの”ゲーム専門店”ではなく、例えば”レトロゲーム専門店”とか”ゲーム修理専門店”とか。そういう、さらに一歩強い個性をもった専門店を、目指していく必要があるのかもしれませんね。


●= まとめ =●
一言でいうと「ゲームショップにも開拓が必要」ってことなんでしょうね。

ちょっと話が広がりすぎちゃいましたが、ダウンロード版が普及してきていることによって、ゲームショップがより苦しい状況に立たされているのは事実です。ましてや、ショップというのは「ユーザー」と「メーカー」の板ばさみにあう立ち位置。ユーザーやメーカーほど、時代の変化に簡単には合わせられない事情もあるような気がするのです。

そんな中で、ゲームショップは3つの選択肢を迫られます。

 ・個性のある”ゲーム専門店”を目指す。
 ・他の商品も一緒に売る”複合ショップ”にする。
 ・何も変えられず、時代に取り残されていく。

例えば最近、電子マネー「WebMoney」が新サービス「ニンテンドープリペイド番号&ダウンロード版ソフトショップ」を開始しました。これもまた1つの可能性でしょう。
ゲームはデジタルエンターテイメント。時代の変化に敏感な市場です。だからこそ売り手であるメーカーやショップは、常にその時代の変化を感じ取って、それに合わせて行動していけるようにならないといけません。色濃く現れ始めてでは遅いですからね。自由に変化させづらいショップ側はなおのこと、そういうことに敏感になっていかないと、いけないのかもしれませんね。


…とまあ、思うところを話してみました。
今回は、利用できる例え話や参照データが色々あったので、それなりに話せましたが、こんな内容を毎回期待しないで下さい(笑)
また、「partygameが思うこと」は不定期更新でやっていきますので。次に何か思うことがあれば、思うままに書いてみます。興味があれば、流し読みしていってくださいね。
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2 コメント

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Unknown (あかみどり)
2013-05-25 15:16:42
こんにちわ。
自分の住むエリアではほんの10数年ほど前までは
各駅にたいてい一軒はゲームショップがありましたが、
今は少し離れた所に一軒があるのみとなりました。
そのお店はトレカやDVDなども取り扱っていますが、
体験会をひんぱんに行ったり、輸入版を仕入れたり、
3DSのすれ違い通信でプチ広告したり、いつ行っても
お客さんが多いですしそれだけの努力をしているから
こそ今も残っているのでしょうね。

さて、個人的には”まとめ”以外にゲームがWiiやDSの時
のように一過性なブームで終わらせないようなもっと
ゲームを文化というか、例えば音楽でいえば親世代が
懐メロを歌うみたいなそういう楽しみの幅を広げること
ができないものかなあ、と思うんですよね。
前に話題にした”ゲームの保存”には単なる懐古趣味や
研究対象以外にそうした文化の下地や各世代の共通言語
の橋渡しになれば、それは岩田社長が謳っている「ゲー
ム人口の拡大」にもつながっていると思います。
ミクロではショップやメーカーの努力、マクロでは世代
を越えて伝える、という努力が求められているのかなあ。
返信する
Unknown (partygame(管理人))
2013-05-25 22:36:58
>あかみどりさん
あ~、なるほど。体験会を実施するというのは良さそうですね。
特に、体験台が置いていないWii Uのタイトルだと、客引きもいいでしょうし、大きなきっかけにもなるでしょう。


>>楽しみの幅を広げること
おっしゃっている「親世代が懐メロを歌う」みたいなのは、ゲームで言うならWii U版バーチャルコンソールのMiiverseで懐かしみながら語らい合うみたいなところに通ずる気がします。

少なくともWiiやDSは、一過性のブームでは終わらない「楽しみの幅」を広げたとは思います。脳トレが生まれたから実用系ソフトが世に出るようになり、『Wii Fit』が生まれたから、フィットネス機器のようなソフトが世に出るようになりました。もちろん、開拓した当初のようにはいきませんが、そういう開拓したジャンルが残り続けているということが、大切なのです。
そういう意味では、根底をいえばゲームそのものの開拓はつねに必要で、これは、あかみどりさんのお便りを紹介した時にもお話しました。

ただし1つ。厳しいことを言うと…日本においてのゲームの「社会的地位」が、どうにもこうにも低いんですよね。
どんなに人気が出ても、どんなに露出していっても、どこかの段階でストップがかかるような感じがあるような気がするんです。「ゲームだから」という理由だけで。
それに、市場規模が決して小さくないゲーム業界に対し、国が(全くではないかもしれませんが)協力的でないとか指示してくれない部分も大きいです。
要するに、ゲームがその程度の文化であるというか。オタク的な文化とか、マニアックな文化というレッテルを貼られているんですよね。そのレッテルが、文化の広がりを確実に狭めているでしょう。

そこから脱するのは、至難の業です。
長い期間で植えつけられてきた印象は、よほど大きな改革をしなければ変えられません。むしろ、それができたのがソーシャルゲームなのかもしれませんね。
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