チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#28/パ・ドゥ・ドゥー(2)アントレ」

2010年10月18日 00時08分30秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第28曲"Pas de Deux"は、
オロル姫とデズィレ王子によって踊られる。そして、

1)タイトル無し(導入) [Allegretto、6/8拍子、1♯]
2)Entree(アントレ=登場) [Allegro moderato、6/8拍子、1♯]
3)Adagio(アダージョ) [Andante non troppo、6/8拍子、無調号]
4)Variation(ヴァリヤスィヨン)1 [Vivace→Prestissimo、6/8→2/4拍子、無調号]
5)Variation(ヴァリヤスィヨン)2 [Andantino、2/4拍子、3♯]
6)Coda [Allegro vivace、2/4拍子、4♯]

という6つで構成されてる。その2)。

オロル姫とデズィレ王子が舞台に現れる。
[Allegro moderato、6/8拍子、1♯]
ヴィオーラが****♪●ソ>♯ファ<ソ<ラ>ソ♪
という16分音符の同型反復を刻む中、
ファゴット2管のユニゾンと、その10度下を重ねるチェロが
下降音階をかぶせると、
フルート2管+vnプリーモとそのオクターヴ下のコルノ・イングレーゼ+vnセコンドが、
優美な主題を奏する。
***♪●ミ<ファ│<ソー<ラ・<シー<ド│ドー>シ・
   ●シ<ド│>シー>ラ・●ラ<シ│>ラー>ソ♪
この主題は4小節1ユニット*2で構成されてる。
オクターヴ高くされて主題確保される。推移は、
***♪●ソ>ファ│>【ミ>レ>♯ド・<レ、<ミ<ファ│<ソ<ラ<シ・
<ド】、>ソ>ファ│>【ミ>レ>♯ド・<レ、<ミ<ファ│<ソ<ラ<シ・
<ド】、<ミ>レ│レー>ド・ー、ド>シ│シー>ラ・
ー、ラ>ソ│ソ>ファ、>ミ・>レ、<ミ>レ│<ソ>ミ>レ・
>ド、<<ミ>レ│レー>ド・ー、ド>シ│シー>ラ・
ー、ラ>ソ│ソ>ファ、>ミ・>レ、<ミ>レ│<ソ>ミ>レ・
>ド♪
と、これもまた品がいい高貴な旋律である。ところで、この
【ミ>レ>♯ド・<レ、<ミ<ファ│<ソ<ラ<シ・<ド】
の部分は、
***♪●ソ>ミ、・【ミ>レ>♯ド、│<レ<ミ<ファ、・<ソーー│
    ー、<ラ<シ、・<ド】>シ>ラ、│>ソー>レ、・レーー♪
という【リラの精の主題】の一部から採られてるのである。

いっぽう、
この曲と同じく[1♯=ト長調]であった
【第17曲 panorama(パノラマ)の主題】が、
***♪ドー>シ・ー>ラー│>ソー<ラ・ー<シー│
  <ドー>シ・ー>ラー│>ソー>ファ・ーーー│
 >【ミー>・レー>♯ドー│<レー<・ミー<ファー】│
 <ラー>ソ・ー>♯ファー│<ソーー・ー<ラ>ソ♪
と、やはり【リラの精の主題】の一部を採ったものであった。
オロル姫とデズィレ王子との結びつき、将来の幸福が
リラの精のおかげであることを、
チャイコフスキーはそうして示唆してるのである。曲は、
***♪ミ<ファ│<ソー<♯ソ・<ラー<シ│シー<ド・
  ●ド>ラ│<ドー>シ・●<レ>シ│<レー>ド・
  <ミ<ファ│<ソー<♯ソ・<ラー<シ│シー<ド・
  ●ド>ラ│<ドー>シ・●<レ>シ│<レー>ド・
  ●>♯ファ<ソ│<ラー>ソ・●>♯レ<ミ│<ファー>ミ・
  ●>シ<ド│<レー>ド・<レー>ド│●ド<レ・<ミ●●(フェルマータ)♪
と閉められる。この曲は、47小節という短いものながら、
終始ト長調を押しとおす。

この上品な曲を聴いたり頭の中に浮かべたりすると、
我が子をある病で亡くした近所の医院の先生が
その病状と似てると私の体を危惧して、
某国立大学の医学部の教授に診察を依頼した。両親と祖父に
そこに連れてかれた4歳のときの断片的な記憶が蘇る。
"大学病院"の教授室で診察は行われた。
大理石造りの重厚な建物で、ガルニェのパリ・オペラ座のような
階段と吹き抜けと高い天井が威圧感をもって迫ってきた。
金属パイプに白い布が張ってある仕切りの中のベッドに
寝かされた記憶がある。そのときに見えた天井の模様は、
のちのちも怖い模様として私の頭の中を支配した。
診察から1週間、その結果を訊きに連れてかれた。このときは
私を引き連れたのは父だけだった。もう
箱根温泉への親族旅行を予約をしてあったので、
私と父だけが病院に出向いて、あとから向かったのである。
幼かっただけでなく、なにしろ、
戸田恵梨香女史と二宮和也の顔、そして、
蝦名正義騎手と日本の坊主のようなヘアスタイルをしたつもりらしい
画家ゴッホの顔を見分けれないほど未だに拙脳なる私は、
そのことがよく理解できてなかった。ために、
母親から捨てられたのではないかと勘違いをして、
とても不安にかられたという気持ちだったことが思い出される。
(なんでボクだけ病院に行くの?)
明治マーブルチョコレイトを渡された私は、大学病院の
教授室の大きな机と椅子がとても恐ろしいものに見えた。
不思議とこのときの「におい」の記憶はない。が、
このことがのちに一時的に医学の道に進もうと思った自分を
思い留めた一因でもある。結局、
私の体はなんということもなかった(というか病名不詳)ので、
無事、父と私は遅ればせながら新宿駅から小田急ロマンスカーに乗って
"田舎"に降り立った(と、そのときの私は思った)。その後も
何度も箱根には家族や親族ぐるみで行ったが、今では
箱根のどこだったか思い出せないが、そのときの、
雪に半ば覆われたせせらぎが流れる光景だけが、
鮮明に脳裏に焼きついてる。そして、
母親や叔母たちの笑顔と笑い声が……。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#28/パ・ドゥ・ドゥー(1)」

2010年10月10日 17時04分02秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
雨の土曜の夜は、恵比寿の某飯屋で、
教育学を専攻する女子大生のおねえさんと二人でメシを食った。
稼ぎのない私なので一般席のテイブルだったが、
すぐ隣は個室だった。我々が席についてしばらくすると、
その個室から某TVタレントが家族で出てきた。といっても、
すき屋の牛丼ではない。すき屋というよりは
スッキリや、という感じのお笑い芸人だが、
近年は俳優、さらには現在は月金の帯でMCをやってる。
高収入と美人妻と可愛い子供たち。私とは正反対の境遇である。
私は前菜を口にしながら、我が身のミジメさを
しみじみとかみしめた。

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第28曲"Pas de Deux"は、
オロル姫とデズィレ王子によって踊られる。そして、

1)タイトル無し(導入) [Allegretto、6/8拍子、1♯]
2)Entree(アントレ=登場) [Allegro moderato、6/8拍子、1♯]
3)Adagio(アダージョ) [Andante non troppo、6/8拍子、無調号]
4)Variation(ヴァリヤスィヨン)1 [Vivace→Prestissimo、6/8→2/4拍子、無調号]
5)Variation(ヴァリヤスィヨン)2 [Andantino、2/4拍子、3♯]
6)Coda [Allegro vivace、2/4拍子、4♯]

という6つで構成されてる。
リラの精の主題の拍子である6/8拍子が半分以上使われてる。
ともあれ、その1)。

[Allegretto、6/8拍子、1♯]
前曲第27曲のイ長調を受けて、
1♯ながらもイ長調の主和音で開始され、
→ニ長調のスケイル→ニ長調の主和音→ト長調、
というように下属調方向へ2段階降りて、
1♯を確立させる。以上、4小節のあと、
1小節全休(フェルマータ附き)のゲネラルパウゼ。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#27/パ・ベリション」

2010年10月07日 00時52分45秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Pas Berrichon/Le Petit Poucet, se freres et l'Ogre]
(パ・ベリション=Berry(ベリ)地方の踊り/
ル・プティ・プセ、セ・フルル・エ・ログル=親指小僧兄弟達と人食い鬼)

木こり夫婦の子の10人兄弟の末弟として生まれた子は、
生まれつき体が小さく、言動ものろまだったので、
「親指小僧」とあだ名されて疎外されてた。
飢饉で実入りが悪くなったとき、木こり夫婦は
「子捨て」をする。しかも、10人全部。ところが、
「親指小僧」の「機転」で兄弟全員が家に帰還してしまう。
貸掛金が回収されて大量の肉を買い込んで、
夫婦でのうのうとたらふく食ってる最中だった。が、
その肉が尽きるとまた夫婦は子供全員を捨てにいったのである。
今度は「親指小僧」の「機転」も運悪い方向にいってしまう。そして、
助けを求めに扉を叩いた家が「人食いオヤジ」の家だった。
絞められて食われるところを、また「親指小僧」の「機転」が救う。
自分達の頭巾を人食いオヤジ夫妻の娘達の王冠とすげ替えたのである。
暗い部屋に入ってきた人食いオヤジは
「被り物」に触って絞める対象を判別したのである。哀れにも
娘らは実の父に絞め殺される。舌骨は粉々だった、と
CSI・Berryの監察医は記録したことだろう。さて、
自分ら兄弟の命が助かるためには、年端もいかない娘らの命を
犠牲にしても何とも思わない「親指小僧」である。ともかくも、
夜中の間に家を抜け出して逃げた兄弟である。が、
朝起きて諮られて自分の娘らを殺したことに気づいた人食いオヤジは、
でっかい高速靴を履いて小僧らを追っかける。そして、
すぐに追っつくのである。が、またしても
小僧の機転で人食いを釘付けにして、その間に
その高速靴を履いて人食いの家にとって返し、
娘の死を嘆く母親に人食いに言づかったとウソをついて
金銀財宝のありったけを出させたのである。そうして、
大金持ちになった小僧兄弟らは両親の家に戻り、
幸せに暮らしましたとさ、という締めくくりと、
高速靴を履いてベリ地方治める王様のもとに行き、
派遣してる軍の状況をいち早く報告する代わりに
報酬をもらう約束をして金持ちになったとさ、という結末と、
どちらかだった、という、いずれにしても、
トンデモない筋立てである。

ペロはこの話に次のような教訓を充てる。
1)子だくさんだからといって苦労するばかりでもない
2)あてにならないと思ってた子が往々にしてもっとも役に立ったりする

[Allegro vivo、2/4拍子、3♯(イ長調)]
巷の演奏は遅すぎる。チャイコフスキーが
「4分音符を分母に置いた拍子で]Allegro vivoと指示したら、それは、
4分音符=144程度の速度を意味するのである。
ピッコロ+そのオクターヴ下のフルート2管+そのまたオクターヴ下のオーボエ2管がffで、
****♪ソ<ラ>ソ<ラ・>ソ<ラ>ソ<ラ│>ソ<ラ>ソ<ラ・>ソー●●(フェルマータ)♪
と吹き、vnプリーモ+そのオクターヴ下のvnセコンドがfで、
****♪ファーーー・ーーーー│ーーーー・>ミー●●(フェルマータ)♪
と弾き、クラリネット2管+ヴィオーラのユニゾンがfで、
****♪♭シ<Nシ<ド<♭レー・>♭シ<Nシ<ド<♭レー│
   >♭シ<Nシ<ド<(N)レー・>ドー●●(フェルマータ)♪
とうなり声をあげる。そして、
チャイコフスキーの音楽にときどき出てくる、
1音ずつ担当楽器を替えて繰り出される接続句が現れる。
****♪ドーーー│<ラーーー、・<♯ファーーー│<レーーー、・>(N)ファーーー│
   >ドーーー、・>ソーーー│>ドー>ソー、・>ドーーー│
   <ラーーー、・<♯ファーーー│<レーーー、・>(N)ファーーー│
   >ドーーー、・>ソーーー│>ドー>ソー♪
そして、主要主題がピッコロ+そのオクターヴ下のvnプリーモによって奏される。
****♪ドーッ<レーッ│<ミー>レ>ド>シ・>ラー、<ド>シ>ラ│
   >ソー>♯ファー、<ソーッ<ラーッ│<ド>シ>ラッ>ソッ・<シ>ラ>ソッ>ファッ♪
****♪ソー・>ファーー>ミ│>レーー、>ド・>シ>ラッ>ソッ>ファッ│
   >ミーッ、<ミーッ・>レ>ド>シッ>ラッ│>ソーッ<ミーッ・>レ>ドッ>シッ>ラッ│
   >ソーッ♪
木管群が平行調の嬰ヘ短調、次いでロ短調でmfで経過句を吹奏し、
それを受け継いだ弦がffでロ短調からイ長調に立て直し、
主要主題後半をスル・ポンティチェッロ(駒近くで)のスタッカートで再現する。と、
突然、fffで木管群が[(g>)f](ト音の前打附きヘ音)をがなり立てる。
対して、弦群は[es](変ホ音)という、イ長調の主音とはもっとも疎遠な
増4度の関係の音を切分で奏する。ゲネラル・パオゼ。
[Coda]
となり、主要主題の変型が16分音符の連続で奏されるが、
ティンパニが****♪ド<ソ>ドー・●●●●♪という打撃を3度繰り出す。
終いはイ長調の主和音で締められる。ちなみに、
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」において「イ長調」は、
第1幕で成人したオロル姫が登場して調が確定する場面で使われ、
この第3幕の次曲の「パ・ドゥ・ドゥ」のオロル姫のヴァリアスィヨンで踊られる。

このベリ州はもともとはフランス王家の領地ではなく、
独立したベリ公爵領だった。その領民は、
カエサルの「ガリア戦記」にも登場する
ビトリゲス・クビというガリア人である。ともあれ、ベリ公ジャン1世は
美術品・工芸品・財宝などの収集に貪欲だった。ために、
その領民に重税を課したという。
飢饉のときに領民は領主の
貴金属狂いに苦しめられ、ビトゥリゲス・
クビがまわらなくなったのである。それが、
「親指小僧兄弟(=領民)と人食い鬼(=領主)」
という話では、ベリ公は
「貧乏人は苺を食え」(The poor, eat berries!)
と言ったかいわなかったかは知らないが、ともかくそんな言葉には
一語もfraise(触れず)に、
寓意が込められてるのである。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#26(b)シンデレラとフォルテュネ王子」

2010年10月04日 00時12分12秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Pas de caractere (b)
Cendrillon et le Prince Fortune (サンドリヨン・エ・ル・プロンス・フォルテュネ)]

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第26曲は、第24曲と同じく、
「パ・ドゥ・カラクテル」と題されてる。
"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"は、
「童話の登場人物の踊り」である。
第26曲は、
a)Chaperon Rouge et le Loup
 (シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー=赤ずきんと狼)
b)Cendrillon et le Prince Fortune
 (サンドリヨン・エ・ル・プロンス・フォルテュネ=シンデレラとフォルテュネ王子)
の二つから成ってる。そのb)。
この曲は、前半2/4拍子部、後半3/4拍子ワルツ部、
から成り立ってる。

[Allegro agitato、2/4拍子、2♭]
たしかに2♭で2拍子部後半からはト短調になるのであるが、始まりは、
ヴィオーラとチェロ+コントラバスの[タータタ・タータタ]律動、
そして、ホルン2管の裏拍打ちによる、
[es-g]
がお膳立てされ、その上に、両翼vnがかわりばんこで、
【実質ハ短調】の
****♪●g<a<b│<h>g、g>h・h-♪
****♪●g<a<h│<c>g、g>h・h-♪
という動機を奏する。それが、
****♪●g<a<b│<h>g、g<h・<c>g、g<c│
         <d>g、g<d・<es>g、g<es│
         >d>g、g<d・>c>g、g<c│
         >h>g、g-ッ♪
と繋がる。このパターンが繰り返されて、
やっと【ト短調】が姿を見せるのである。
****♪dddd・dddd│<ffff・>dddd│
   >bb<cc・>aa<bb│>gg<aa・>fisfis<gg│
   >ff>eses・<aa<bb│>aa>gg・>eses>dd│
   <fisfis<gg・<dd<eses│>dd>cc・>bb>aa♪
やがて、
****♪ララララ・>ミミミミ│>レレ>ドド・>シシ>ララ│
  <ドド>ララ・>ドド<ララ│<レレ>シシ・>レレ<<ミミ♪
という音型に転じる。これが、
****♪ララララ・>ミミミミ│>レレレレ・<ミミミミ♪
となり、
****♪レレレレ・<ミミミミ│>レレレレ・<ミミミミ♪
となり、
****♪ラ>ファ>レ>ラ・>ファ>レ>ラ<レ│
  <ファ<ラ<レ<ファ・<ラー、ラー│ーー、ラー・ーー、ラー│
   ーー、ラー・ーー、ラー│♪
vnプリーモによってg音のみが保持され、

→[Tempo di Valse (Moderato)、3/4拍子、(2♭変ロ長調)]
となる。ワルツである。そのワルツの主題は、
2拍子終いの音型の変型である。
***♪ラーーーーー│ー>ソ、>ファ>レ>シ>ファ、│
  >ミ<ソ<ド<ミ<ラ>ミ、│<ラーーー>ミー、│
  <ラーーーーー│ー>ソ、>ファ>レ>シ>ファ、│
  >♯レ<ミ<ソ<ド<ファ>ミ、│>レ>ド>シ<ド>ソ>ミ、│
   ラーーーーー│ー>ソ、>ファ>レ>シ>ファ、│
  >ミ<ソ<ド<ミ<ラ>ミ、│<ラーーー>ミー、│
  <ラーーーーー│ー>♯ソ、>ミ>シ>♯ソ>ミ、│
  >♯ド<♯ファ<シ<♯レ<♯ソ>♯ファ、│>♯レ<ミ<♯ファ>ミ>シ>ミ♪
終いの4小節は実質ニ長調に転じられてる。
***♪ラ(ふぁ)ーーーーー│ー>♯ソ(み)、>ミ(ど)>シ(そ)>♯ソ(み)>ミ(ど)、│
  >♯ド(し)<♯フ(れ)<シ(そ)<♯レ(し)<♯ソ(み)>♯ファ(れ)、│
  >♯レ(し)<ミ(ど)<♯ファ(れ)>ミ(ど)>シ(そ)>ミ(ど)♪
が、すぐに木管群によって変ロ長調で主題が確保される。そして、
ニ長調からイ長調に変じて、
***♪ソ>レ>シ>ソ<ド<ミ│<ソ♪
が繰り返される。それから、vnプリーモによって
ワルツ主題がイ長調で奏され、その主題を短3度減7に組み込んで、
変ロ長調に戻る。
→[Vivace assai]
クラリネット2管がユニゾンでテンポ・アップされたワルツ主題を強奏し、
弦楽器群がその主題の4小節単位の初めの小節で
8分小節の分散和音のかけあいを重ねる。
主題の確保はフルート2管がオクターヴ上に上乗せされ、終いは、
→[stringendo]
主題の4小節単位の終いの小節の音型
[ラーーー>ミー]が[ラーーー>レー]と交互に繰り返され、
***♪ラーーー>レー│<ラーーー>ミー│
  <ラーーー>レー│<ラーーー>ミー│<ラーーー>レー│<ラーーー>ミー♪
→[Presto]
最速にまで速められて、
***♪<ラーー>ファ>レ<ミ│<ファ>ミ<ファ<ソ<ラ<シ│<ド●●●●●♪
と、変ロ長調の主和音で閉じられる。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#26/「パ・ドゥ・カラクテル(a)赤ずきんと狼」

2010年09月29日 00時48分24秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Pas de caractere (a) Chaperon Rouge et le Loup(シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー)]

セグウェイ社を昨年末に買収した英国の富豪が、セグウェイを操縦中に
川に転落して死んだそうである。日本では、
その構造上いわゆるブレーキを取り付けれないので
道交法の要件を満たさず、公道を走行できない。
縫い針の道も留め針の道も、公道ならばダメである。
その歯止めは大正解だった。

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第26曲は、第24曲と同じく、
「パ・ドゥ・カラクテル」と題されてる。
"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"は、
「童話の登場人物の踊り」である。
第26曲は、
a)Chaperon Rouge et le Loup
 (シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー=赤ずきんと狼)
b)Cendrillon et le Prince Fortune
 (サンドリヨン・エ・ル・プロンス・フォルテュネ=シンデレラとフォルテュネ王子)
の二つから成ってる。そのa)。
"Chaperon Rouge et le Loup"
[Allegro moderato(アッレーグロ・モデラート=速すぎも遅すぎもしないアレグロ)、
2/4拍子、2♭(ト短調)]
第24曲の"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"と同じく、
「ト短調」である。このト短調という調性は、
このバレエの最後の最後に繰り出される
"Vive, Henri quatre(ヴィヴ、アンリ・カトル=万歳、アンリ4世)"
が打ち鳴らされる調である。そして、
あまり話題にされないが、じつはこのバレエ「眠れる森の美女」において、
チャイコフスキーが意味深く配置した調なのである。
森田稔大先生の著書「永遠の『白鳥の湖』」(新書館刊)で
ジョン・ローランド・ワイリーの分析が述べられてるとおり、
(プロローグの)導入曲において採られた「カラボスの動機」の
[ホ短調→変ホ短調→ト短調]
という進行、あるいは、それをもとに私が別解釈をした、
ベートーヴェンの弦楽四重奏第16番終楽章の
"Muss es sein?"……"Es muss sein!"
なのである。

ともあれ、
バレエ「眠れる森の美女」においては、
「ト短調」は以下のように鏤められてる。

・(プロローグ)「導入曲」
・(プロローグ)第3曲「パ・ドゥ・スィス」2)courante, fleur de farine
     (クラント、フルル・ドゥ・ファリーヌ=流麗な、上質の小麦粉)
 ***♪ラ>♯ソ<ラ・>♯ソ>Nソ<♯ソ♪
・(第1幕)#6「ヴァルス」中間部終い
 **♪ド│<レ>ド、>シ│>ラ<シ、<ド│<レ>ド、>シ│<ミッ<ファッ♪
 そして、平行調の変ロ長調の属7を引き出し、
 「怒りの日」の動機から作られたワルツの主題が再現されるのである。
 **♪ドーー│>シーー│<ドー>ラ│<シ(<ド>ラ│<シー<レ│<ミー>♯ド)
・(第1幕)#8「パ・ダクスィヨン(c)オーロラのヴァリアスィヨン」オケによる前奏
 ***♪ラー、<シ│ー、<ドー、│<♯ド、<レ、<♯レ│<ミ♪
・(第2幕)#15「パ・ダクスィヨン(c)コーダ」
 ***♪ファ│>ミ●・●>レ│>ド♪
・(第3幕)#24「パ・ドゥ・カラクテル(乗馬ブーツを履いた雄猫と白い雌猫)」
・(第3幕)#26「パ・ドゥ・カラクテル(a)赤ずきんと狼」
・(第3幕)#30「フィナル(アポテオズ)」

このうちの、(プロローグ)「導入曲」と(第1幕)の二つは、
部分的にト短調になるもののうち、
重要なものを載せただけである。つまり、
ト短調は第3幕においてその威力を発揮するのである。

[Allegro moderato、2/4拍子、2♭(ト短調)]
横笛以外の木管群が主要主題をmpで吹く。節を吹くのはクラリネットである。
****♪ラーラー・>ミーミー│
   <ラーラー・>ミーミー│
   >レッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドッ<レッ>ドッ<レッ│
   >シッ<ドッ>シッ<ドッ・>ラッ<シッ<ドッ<ミッ♪
副次主題はト長調に転じてオクラーヴ・ユニゾンの両翼vnがmfで奏する。
****♪レーッレッレッ・レ>ド>シッ>ラッ│
   >ソッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドー<ソー♪
主要主題がmfで再現されるときには、
ホルン2管と弦楽合奏が抉りあげるような狼の咆哮をffで加える。そして、
ト短調→変ロ短調→嬰ハ短調
と減7上に転調を重ねてホ短調。
→[stringendo]
と急き込みながら、
[e-g-h]→[e-g-b]→[es-g-b]
と進み、
→[Piu mosso]
テンポを速め、主題が
****♪ラーラー・>♯レー♯レ│
   <ラーラー・>♯レー♯レ│
   >(N)レ<ミ>レ<ミ・>ド<レ>ド<レ│
   >シ<ド>シ<ド・>ラ<シ>ラ<ド♪
と微変更されて危機感を煽る。その間、
ヴィオーラとチェロがクロマティックに抉りあげる狼の声を弾く。

さて、
フランスの伝承小咄の「おばあちゃんの話」では、
狼はおばあちゃんの家まで行く道を女の子に問うのである。
「縫い針の道」と「留め針の道」
である。女の子は「縫い針の道」を行くと言う。狼は、
ならば私は留め針の道にすると言う。
手で縫えば時間がかかるが、留め針なら手間はかからない。
果たせるかな、狼はおばあちゃんの家へずっと先に着く。
ところが、これには説得力がない。
なぜ女の子が「縫い針の道」かという理由が描かれてない。だから、
ペローは狼が「決めつけた」ことにするのである。
「私はこっちの道(留め針の道)を行くから、
お嬢ちゃんはそっちの道(縫い針の道)を行くがいい。
どっちが先に着くか競走だよ」
と。ここで、この咄の登場人物が
バレエ「眠れる森の美女」に採られた理由が見えてくる。が、
ピンとこない御仁に説明しよう。
留め針とは現在の「安全ピン」のようなものである。
「刺す」危険は少ない。が、縫い針は指に容易に刺さってしまう。
赤ずきん(少女に被せたのはペローだという)の「愚かな選択」は、
ペローによって「狼に図られた無知」に変ぜられた。
「オロル姫がスピンドルに指を刺してしまう不注意」
への警告、あるいは教訓なのである。ちなみに、
女の子が病気で寝込んでるおばあちゃんの家にお使いにいったのは、
おかあさんが焼いたガレットを持ってくことだった。
ガレットも粉を挽いたものをこねて焼く。ここで、
ト短調がfleur de farine(上質の小麦粉)との
「つなぎ」になるのである。
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