チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#23 Pas de Quatre」

2010年08月24日 00時04分12秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[金の精、銀の精、サファイアの精、ダイアモンドの精]

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第23曲は、
【a】4精顔見せ=アッレーグロ・ノン・タント(附点4分音符=92)、6/8拍子、2♭(変ロ長調)
【b】ヴァリアスィョン(1)金の精=アッレーグロ(テンポ・ディ・ヴァルス)、3/4拍子、3♭(変ホ長調)
【c】ヴァリアスィョン(2)銀の精=アッレーグロ・ジュスト、2/4拍子、4♭(変イ長調)
【d】ヴァリアスィョン(3)サファイアの精=ヴィヴァチッスィモ、5/4(2/4+3/4)拍子、調号なし(ハ長調)
【e】ヴァリアスィョン(4)ダイアモンドの精=ヴィヴァーチェ、2/4拍子、1♯(ト長調)
【f】コーダ(リステッソ・テンポ=ヴァリ4と同じテンポ、2/4拍子、4♯(ホ長調)
という構成になってる。その【a】。

[アッレーグロ・ノン・タント(附点4分音符=92)、6/8拍子、2♭(変ロ長調)]
この曲は、[主題→対抗主題→主題→対抗主題]という構成である。
チェロがアルコで(そのオクターヴ下をコントラバスが8分音符のピッツィカートで爪弾く)
***♪ドーー・<ソーー│<ドーー・>ソーー♪というバスを弾き、
フルート1管+オーボエ1管+オクターヴ下のファゴット1管+同ホルン1管が
8分音符で属音を刻み、その3度下を
フルート1管+オーボエ1管+オクターヴ下のファゴット1管+同ホルン1管が刻み、
pfがその「3度重ね」をオクターヴの上下を交互に打鍵するなか、
vnプリーモ+そのオクターヴ下のvnセコンド+そのまたオクターヴ下のヴィオーラが
主題を奏する。

***♪ソー<ラ│ラー<シ・シー<ド│ドー>シ、
  ・シー<ド│ドー<♯ド・♯ドー<レ│レー>(N)ド、
  ・ドー<レ│<♯レー<ミ・ミー<ファ│ファー>ミ、
  ・>レー>ド│>シー>ラ・<ドー>シ│>ラー>ソ♪

主題は繰り返される(当然、終い部分は少し変えられてる)。次いで、
対抗主題が提示される。が、この律動は主題とまったく同じで、
[タータ│タータ]をひたすら繰り返すのみである(終いだけ8分音符*3)。
旋律はvnプリーモが奏で、その3度下をvnセコンドが重ねる。
主題のオクターヴ・ユニゾンに対して、対抗主題は3度重ね、
という対比をチャイコフスキーは配してるのである。

***♪ラー>ソ│>ファー>ミ・>レー>ド│ドー>シ、
  ・シー<ド│<ミー>レ・レー<ミ│<ソー>ファ、
  ・ラー>ソ│>ファー>ミ・>レー>ド│ドー>シ、
  ・シー<ド│<ミー>レ・レー<ミ│<ソー>ファ、
  ・<レー>ド│>シー>ラ・>ソー>ファ│>ミー>レ、
  ・<レー>ド│>シー>ラ・>ソー>ファ│>ミー>レ、
  ・<ファー>ミ│>レー>ド・>シー>ラ│>ソー<ラ、
  ・>ファー<ソ│>ミー<ファ・>レー<ミ│>ド<ミ>レ♪

この対抗主題の間は、伴奏の3連符はいっさい鎮まる。
ヴィオーラが(途中から、木管の一部も加わる)
主題にほぼ反行する8分音符を連ねるのみである。
上記ド<ミ>レのあとすぐに主題が再現される。が、
初めに主題が提示されたときには
主題冒頭のソー<ラの箇所伴奏が主和音だったのに対し、
再現されるときには属7になってる、
という違いがある。後者の「導かれる感」に、
当初との差異の妙を味わうことができる。
主題に次いで対抗主題が再現される。今度は、
両翼vnの3度ハモリがオクターヴ高く奏される。加えて、
そのオクターヴ下でクラリネット2管+コルネット2管が
対抗主題を吹奏する。
属7→主和音と結ばれる。
じつに魅惑的な曲である。

さて、
この曲において、チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」で
初めてpf(いわゆる、ピアノ)が使われる。その意義に関しては、
このブログの別エントリですでに私見を連ねてるので、
そちらを参照されたい。

「ピアノの世界・ふしぎ・はちじゅうはっ鍵」
http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/d61e7f0772857f94dec749c3def9f721

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#03パの精と#23パの精」
http://blog.goo.ne.jp/passionbbb/e/392415eb07d34af17b1cc33e75090374

いずれも、
「やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫」カテゴリに分類してある記事である。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#22ポロネーズ」

2010年08月22日 19時49分34秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Cortege des Contes de Fees=おとぎ話の主人公たちのオンパレード*]
(*cortage=コルテージュ=行列、という単語の意味だけから、ここを
<お伽噺の人物たちの大行進>=森田稔大先生、
<おとぎ話の人物たちの行列>=Wikipedia←上記フランス語からのさらに英訳
 The Procession of the Fairy Talesからの日本語訳、
などと訳されてるのを見かける。が、ここでは
「眠り姫」の作者ペローの他の童話・お伽噺の主人公たちが
次から次へと登場して「ずらりと顔を並べ」て「勢揃い」した「顔見せ」、
の場面である。これを日本語では(※)オン・パレードと言う)

「Allegro moderato e brillante、3/4拍子、1♯(ト長調)」
(アッレーグロ・モデラート・エ・ブリッラーンテ=速すぎも遅すぎもしないアレグロで、そして、華々しく)
このナンバーは[a-b-a-c-a-b-a]という
小ロンド形式(あるいは3部形式)の構造である。
(a=主要主題、b=第2主題、c=中間主題)

第3トロンボーン+ティンパニのトレモロ+そのオクターヴ下の
コントラバスの属音の低奏通音だけが第1拍に出され(mf)、次いで、
第2拍に、ホルン1管+ヴィオーラが属和音の第5音を、
ファゴット1管+チェロが属和音の第3音を重ね、
ファゴット1管+vnセコンドが根音を上乗せして
第3拍で第7音に降り(つまり属7だったということ)、
第3拍の後半からクラリネット2管+vnプリーモが、この
ポロネーズの主要主題の断片を奏し出す。そして、
第22小節第3拍後半からこのポロネーズの主要主題が提示される。****♪
ソー│<ラー、<シッ<ドッ・<レーーー・ーー、>シーッ│
  <ド<レ>ド>シッ>ラッ・>ソーーー・ーー、>ミー│
  <ソーッ、>ファッ>ミッ・>レーッ<ファッ>ミッ・>レーッ<ミッ>レッ│
  >ドーッ<ミッ<ファッ・<ラーッ>ソー・ーー、ソー│
  <ラー、<シッ<ドッ・<レーーー・ーー、>シーッ│
  <ド<レ>ド>シッ>ラッ・>ソーーー・ーー、>ミー│
  >レーッ、<ミッ<ソッ・>ミーッ<ソッ<シッ・>ソーッ<シッ<レッ│
  >ラ、<シ<ド、>シ・>ラーーー・>ソーッ♪
(表記の都合上、音価を均等化した部分あり)
この主題の最初の小節の律動は、
[タータタ・ターーー・ーーター]
である。2番めの小節も修飾音を本来の形に戻せば、
[ドー>シ>ラ・>ソーーー・ーー>ミー]
であり、やはりその律動は、
[■ー■■・■ーーー・ーー■ー]
である。これは、
交響曲第3番第5楽章のポロネーズ
[ドーード・ドー<レー・<ファ>ミ>レ>ド]
と、バレエ「白鳥の湖」のポロネーズ
[ドーード・ドー>シー・<レ>ド>シ<ド]

[■ーー■・■ー■ー・■■■■]
律動とはまた別のグループに分類できる
チャイコフスキーのポロネーズである。「眠りの森の美女」だから、
ポロ寝ズな律動が与えられたのかもしれない(※)。ちなみに、
「オネーギン」第3幕冒頭のポロネーズは、こちらの
[■ー■■・■ーーー・ーー■ー]律動グループに属する。

バレエ「眠れる森の美女」のポロネーズの第2主題は、♪****
ソー│<ラー、ラッラッ・ラーッラーッ・ラーッラーッ│ラーッ、ラー・<ドー、>シーッ・>ラーッ、>ソー│
  <ラー、ラッラッ・ラーッラーッ・ラーッラーッ│ラーッ、>ソー・>ファー、>ミーッ・>レーッ、<ソー│
  <ラー、ラッラッ・ラーッラーッ・ラーッラーッ│ラーッ、ラー・<ドー、>シーッ・>ラーッ、>ソー│
  <ラー、ラッラッ・ラーッラーッ・<ドーッドッドッ│ドーッドーッ・<ミー>レー・>ソーッ♪
そのあと、主要主題が戻り、中間部に入る。
→[無調号(ハ長調)]
*****♪
ソーッ●>ミ<ファー●>レ│
ドーーーーーーー・<ミーーー●●●●・>レーーー<ファーーー│
>ミーーーーーーー・<ソーーー●●>●●●・<ドーッ●>シ<ドー>ミ│
<ソーーーーーー・>ファー●<ソ>ファー●<ソ・>ミー●<ファ>ミー●<ソ│
>ミーーーーーーー・>レーーー●●●●・ソーッ●>ミ<ファー●>レ│
ドーーーーーーー・<ミーーー●●●●・>レーーー<ファーーー│
>ミーーーーーーー・<ソーーー●●>●●●・<ドーッ●>シ<ドー>ミ│
<ソーーーーーー・>ファー●<ソ>ファー●<ソ・>ミー●<ファ>ミー●<ファ│
>レーーーーーーー・<ミーーー●●●●♪
この主題の推移はホ長調で行われる。その間、
トランペットが[運命の律動]を吹奏する。
中間主題が再現され、
→[1♯(ト長調)]
主要主題が戻る。ほぼ形どおりに[a-b-a]が再現され、
主要主題から成る結尾が設けられ、第2拍で曲が閉じられる。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#21(3幕緒曲)行進曲」

2010年08月16日 00時17分14秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
この週末は遊び呆けてないで、
煎餅焼きに精を出した。土曜の
大東京湾華火も、家から小さく見えるのを
ちょっと見ただけだった。ところで、
って、物悲しい美しさがありますね。
8月に開催される大東京湾華火は、毎年、
帆船をかたどったホテル日航東京を設計した
故長尾宜子女史のことを思い出す。同女史は、
自分が設計したそのホテルから
大東京湾華火を見るのを楽しみにしてた。
ホテルは1996年3月に開業したが、
その年の夏は手術・入院で見れず、翌年の花火の日は
土日とも強風で中止になってしまった。そして、
大腸癌のリンパ節および肝転移による多臓器不全で、
1998年7月、ついに自分が設計したホテルから
大東京湾華火を見ることができないまま
死去した。そういう人生もあるのである。いっぽう、
虫けらのような人生の私は、この週末、
外出しなかった代わりに、
今週は昔仲間と"会食"する予定である。

[Allegro non troppo(4分音符=116)、4/4拍子、2♯(ニ長調)]
第2幕が3♭の変ホ長調の主和音で終わったのとはずいぶんと遠く、
2♯のニ長調主和音で開始される。

       [緒曲幕開き時の調性]      [終曲終いの調性]
【プロローグ】 #01行進曲=3♯(イ長調)     →#04終曲=4♯(ホ長調)
【 第1幕 】 #05情景=4♯(ホ長調)      →#09終曲=4♯(ホ長調)
【 第2幕 】 #10幕間曲・情景=2♭(変ロ長調)  →#20終曲=3♭(変ホ長調)
【 第3幕 】 #21行進曲=2♯(ニ長調)     →#30終曲・アポテオーズ=2♭(ト短調)

各幕内で、その緒曲での幕開き時の調性の主音と、
終曲の最後の小節の調性の主音とを比べてみる。すると、
【プロローグ】では完全4度下り、
【 第1幕 】では不変、
【 第2幕 】【 第3幕 】では完全4度上る、
のである。その「差」が何なのか、
林家正蔵(旧こぶ平)と温水洋一の顔をときどき間違える
拙脳なる私には解るはずもないが、
【第2幕】の幕開きが、【第1幕】を囲ってた
4♯(ホ長調)の最遠隔調である2♭(変ロ長調)であることは、
「フロレスタン王の国」と「デズィレ」が実は対極にある、
という示唆だと解するべきである。

ともあれ、
この第3幕緒曲の行進曲は、***♪
ドー・ー<レ・・>ドー・ー<ミ│<ソ♪
という動機でできてる(和声は主和音→六の和音→主和音)。
推移ではこれが、***♪
シー・ー、>ラ・・<シー・ー、>ソ│<ド♪
と変じられる。そしてまた主動機が戻り、幕開きとなる。
「王と婚約者二人の入場。廷臣らによる歓迎」
中間部は同調号のまま平行調のロ短調で、***♪
ミ<ファ>ミ、│ミー・ーー、・・<ソー・ー、>ファ│
     >ミー、・<ファー、・・<♯ファー、・<♯ソー、│
     <ラー・<ドー、・・<ミー>レー(>ド)、│
     ドーーー・・>シー♪
そして、ほぼ形どおり主部が再現されて、
短い結尾で曲を閉じる。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#20(2幕の)Final」

2010年08月13日 00時15分39秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
「週刊文春」のカラント・イシューである
「8月12日・19日 夏の特大号」の、
76乃至77の見開き頁に掲載されてる、
堀井憲一郎の「坂本龍馬は明治維新の最重要人物ではない」の、
とくに最初の4段ほどには、
至極真っ当なことが書かれてる。

昨今、坂も龍馬については、
歴史的意義以上の異様なほどの人気があるようである。
大衆受けとはそういうものであるが、
ひとたび名声が附くと、ものの価値がわからない衆が追従して、
大人気になってしまう。ポップスではなく、
その愛好人口が極めて少ないはずの、
真っ当な音楽であるクラスィカル音楽の世界でも、然り。たとえば、
ベルリン・フィルといえば「世界一のオケ」なんていう言葉が
まかり通ってる。米ドラマ"Heroes
(第1スィーズンの6話ほどみてつまらないのであとはみてない)"の
マシ・オカの日本語のアクセントが変で耳障りに聞こえてしまう拙脳なる私には、
カラヤンの時代から(フルトヴェングラーの時代は話にもならない)
ベルリン・フィルが世界一巧いようにはどうしても聞こえなかった。
オザワとヴォロドスのチャイコフスキーの「pf協奏曲第1番」もひどいものだった。

新譜CD、サイモン・ラトル指揮ベルリーナー・フィルハーモニカーの
「くるみ割り人形」全曲を聴いた。
試用期間中のコンマス樫本大進 
第1コンツェルトマイスターのダニエル・スタブラーヴァがサブコンに座ってる。
隣で評価をしてたのだろうか。ともあれ、
ラトルの指揮は案の定、聴くに堪えなかった。
豪華な生地を使ってセンスのないデザイナーがデザインしたものを
雑に縫製した安っぽい仕上がりの服を着せられた心地がした。
"名手"揃いのベルリン・フィルのメンバーを台無しにしたディリゲントぶりである。
こんなのが"すばらしい"なんていうのは、本来、
ポップス向きな御仁である。

[Allegro agitato(アッレーグロ・アジタート)、4/4拍子、3♭(変ホ長調)]
「魔法が解ける」
ピッコロ+フルート2管+vnプリーモ、そのオクターヴ下の
クラリネット1管+vnセコンド、そのまたオクターヴ下の
クラリネット1管+ヴィオーラ+チェロの、3層構造ユニゾンが、
第16曲の主題****♪
ドーーー・ー、>ソッ、ソ<ラ・・ラ<シ、シ<ド・ド>シ、シ>ラ│
ラ>ソ、ソ>ファ・ファッ>ミッ>レッ>ドッ・・<ラーーー・>ソーーー│
<ドーーー・ー、>ソ、ソ<ラ・・ラ<シ、シ<ド・ド>シ、シ>ラ│
ラ>ソ、ソ>ファ・ファッ>ミッ>レッ>ドッ・・<ラーーー・>ソーーー│
ソ<ラ、ラ<♭シ・♭シーー>ラ・・>ミ<ファ、ファ<ソ・ソーー>ファ│
<ラ<シ、シ<ド・ドーー>シ・・>♯ファ<ソ、ソ<ラ・ラーー>ソ│
<♯ラ<シ、シ<ミ・ミ>シ、シ<レ・・レ>ド、ド>シ・シ>ラ、ラ>ソ│
ソ>ファ、<シッ>ラッ・>ソッ>ファッ>ミッ>レッ・・
 >ドッ>シッ<♯ドッ<レッ・<ミッ<ファッ<♯ファッ<ソッ♪
をfffで奏する。これが確保されて推移すると、

[Un pochettino piu tranquillo]
(ウン・ポケッティーノ・ピウ・トランクイッロ
=それまでの興奮状態をほんのちょいとカーム・ダウンさせて
→つまり、テンポ自体をわずかばかり減じる)
ハ短調、*****♪
●●●●ラーーー・>♯ソーーー<ラーーー・・シーーーーーー>ミ・<♯ファーー<♯ソ<ラーー<シ│
>ミーーー、<ラーーー・>♯ソーーー<ラーーー・・シーーーーーー>ミ・<♯ファーー<♯ソ<ラーー<シ│
<ミーーー♪
このようなものが8小節繰り出され、

[Tempo primo]
前触れ句が8小節設けられて、主題が戻る。終いは、
1幕終曲でリラの精が魔法の杖を振りかざして、
「死ぬのではなく、百年の眠りにつくように、
カラボスさんがかけた魔法の威力を減じましたのよ」
と皆に承知させた場面で木管と金管がffffで(ハ長調)吹き、
前曲で木管群がppで吹奏した動機、♪***
●●・ソー・・<♯ソー・<ラー│>ミー・<ファー・・<ソー・<♭ラー│>ソ●♪
をオーボエ2管+金管群がfffで強奏して、♪***
ドー・ーー・・ーー・ドドド│ド●・<ソ●・・>ド●・●●(フェルマータ)♪
と、「運命の律動」を打ち込んで曲を閉じる。
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「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#19アントラクト・サンフォニク・エ・セヌ」

2010年08月11日 21時33分06秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Entracte symphonique et scene(交響的間奏曲と情景)]

今日は午前中から夕方までで、一気に
6528枚の煎餅を焼くことができた。
円高らしい。
中居正広と櫻井翔の声が聞きわけれない
拙脳なる私にはその原因が分かるはずもないが、
煎餅を米国で売ってみようかと思う。
米国には嫌いな面と好きな面が入り交じってる。
疏明であるが。

チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」第19曲、
Entracte symphoniqueには、
Le sommeil(ル・ソメイユ=眠り、ロシア語のほうはСон=ソーン)
という括弧書きが附されてる。これを、日本における
チャイコフスキー研究の第一人者であらせられる森田稔大先生は、
その著書「永遠の『白鳥の湖』」(新書館刊)の巻末の曲番表で、
「夢」と訳されてるのである。驚きである。たしかに、
ロシア語のソーンには「眠り」以外に「夢」という意味がある。が、
パチェチーチェスキーに「悲しい」意味がないのと同様かどうかは、
故マイケル・ジャクスンとさかなくんの顔を見分けれない
拙脳なる私には解らないが、
フランス語のソメイユに「夢」という意味はないのである。
チャイコフスキー研究の大先生に楯突くわけではないが、
この場面は内容からも語学の面からも、
「眠ってる世界」「眠れる森」とでも意訳したほうがいい。

[Andante misterioso(アンダーンテ・ミステリオーゾ)、4/4拍子、無調号]
弱音器を装着したvnセコンドのふたつにディーヴィズィされたいっぽうが、
二点ハをトレモロで擦る。それに乗って、
1幕終曲でリラの精が魔法の杖を振りかざして、
「死ぬのではなく、百年の眠りにつくように、
カラボスさんがかけた魔法の威力を減じましたのよ」
と皆に承知させた場面で木管と金管がffffで(ハ長調)吹いた動機を
木管群がppで吹奏する。***♪
ソー・ーー・・<♯ソー・ーー│<ラー・ーー・・ーー・ー、>ミ│
<ファー・ーー・・<♯ファー・ーー│<ソー・ーー・・ーー・ー、>レ│
<♭ミー・ーー・・<ファー・ーー│<♯ファー・ーー・・<ソー・ーー│
<♭ラー・ーー・・<Nラー・ーー│ーー・ーー・・ーー・ー●♪

この動機はカラボスの動機の変型である。つまり、
リラのワクチンによってカラボスの毒性が薄められた型なのである。
ハープがグリッサンドを爪弾くと、
カラボスの動機がより原型に近い型で、それぞれにふたつに
ディーヴィズィされたvnプリーモとチェロによって奏される。すると、
木管がリラの精の主題の終い部分を吹く。この呼応が繰り返されると、
ハープがアルペッジョを爪弾く。そして、
弱音器を装填したトランペット1管がリラの精の主題の前半断片を
ppで吹奏する。この一連の流れが繰り返されると、
コルノ・イングレーゼが実質ハ短調で、****♪
ラーーー│ーーーー、ラーーー・ーーーー、ラーーー│ーーーー、・>ソーー>ファ、・・>ミーーー、・>レーー>ド、│
ドーーー、・>シーー>ラ、・・ラーーー・ーー>ソー、│ソー>ミー、・<ソーー>ファ、・・ファー●●♪
という音型を吹く。やや尻尾を変えて繰り返され、次いで、
オーボエ1管がこれをまたやや形を変えて2度繰り返す。
「雲が晴れていく」
木管群による8分音符の下降分散、弦群による3連符の上昇分散、
がそれを描写する。そして、
冒頭ではフルートが旋律を受け持ってた木管群が、
今度はクラリネットが"メイン・ヴォウカル"となって、
カラボスの動機から作られたリラの精のバゲト動機を吹奏する。そして、
ホルン3(4)管が川口探検隊のごときデズィレ王子とリラの精による
眠れる森探検隊が目的地に到達したことを告げる。

「デズィレ王子とリラの精が入ってくる」
→[Allegro vivace(4分音符=従前の8分音符)]
テンポ感覚と速度標語にブレがないチャイコフスキーであるからして、
4/4拍子のAllegro vivaceが概ね4分音符=144乃至152ゆえ、
これで従前のアンダーンテ・ミステリオーゾの速度が、
4分音符=72乃至76、という通常のアンダーンテと変わりないことが判る。
「ミステリオーゾ」だからといって「遅くして」は「いけない」のである。
***♪ミ、●・ミー・・ー、ミ・<ソ>ド、│<レッ<ミッ・<ファッ●・・●●・●●│
  <ラ、●・ラー・・ー、ラ・<ド>ファ、│<ソッ<ラッ・<♭シッ●・・●●・●●♪
「デズィレは眠れる美女目指して一目散に突進する」
チャイコフスキーのセンスのいい熟達した書法のフル・オケが全開となる。そして、
実質ニ長調にいったん運んでから、それを
ニ短調に一転させ、その主音であるニ(d)を一瞬にして
変ホ長調のシに置き換えて(弦楽4部がこのdを刻み続ける)、
「デズィレはオロルの額にくちづけをする」
このバレエ2度めのドラがfffで打ち鳴らされ、めでたくも、
カラボスがかけ、リラがその効力を減じた魔法が解ける、のである。
なんという感動的な音楽なことだろう。
チャイコフスキーでなければ到底打ち鳴らすことができない、
ヒトの感情を揺り動かす号砲である。
弦楽4部のd音の刻みが次曲変ホ長調を導く音となって、
曲はそのまま次曲#20(2幕の)フィナルへとなだれこむ。
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