チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「ダービー伯ファーディナンド閣下のガリアード/ジョン・ダウランド生誕450年」

2013年12月30日 23時13分36秒 | 説くクラ音ばサラサーデまで(クラ音全般
今年は、英国テューダー朝末期からスチュワート朝初期の
リュート奏者・作曲家の、
John Dowland、ジョン・ダウランド、1563年-1626)の
生誕450年(誕生日は不詳)にあたる年だった。ほぼ、
シェイクスピアと同時代の人物である。カトリックだった。ために、
カトリックへの弾圧厳しかったエリザベス1世の治世に
なじまない人物として国外を転々とした。が、
スチュワート朝となった英国に戻り、
国王附きのリュート奏者となった。

そんなダウランドは歌曲やリュート用の音楽作品を数多く残した。
気軽に聴くのにいい。歌曲は、
"Flow my tears"
"I saw my lady weep"
などがよく知られてる。いっぽう、リュート作品には、
"My Lady Hundson's Puffe"
"Lachrimae"
"Queen Elizabeth's Galliard"
などがある。私がもっとも好きなのは、
"The Right Honourable Ferdinando Earl of Derby, His Galliard"
(ダ・ライト・オナラブル・ファーディナンドウ・アール・オヴ・ダービー、ヒズ・ガリアード)
「ダービー伯ファーディナンド閣下のガリアード」
である。
Galliardとはルネサンス期に流行した王朝舞踊のひとつで、
3拍子の性急な激しい踊りである。が、
ダウランドのこのガリアードは悠長な曲想である。
この曲の成立過程その他の詳細を、
中島みゆき女史の声と倍賞千恵子女史の声を
雑踏の中ではききわけれない拙脳なる私は
知る由もないが、そのダービー伯ファーディナンド閣下とは、
第5代ダービー伯爵ファーディナンド・スタンリー(1559-1594)
のことであることは解る。シェイクスピアのパトロンだった人物である。

その父はもちろん第4代ダービー伯爵ヘンリー・スタンリーであるが、
母親はマーガレット・クリフォード(1540-1596)である。
第2代カンバーランド伯爵ヘンリー・クリフォードの娘である。が、
母系が恐ろしい。TVドラマ「背徳の王冠」で出てきた
ヘンリー8世の親友にして女たらしのチャールズ・ブランドンは、
一介の騎士からサフォーク公爵にまでなった。
そのチャールズ・ブランドンはヘンリー8世の妹である
メアリー・テューダーの再婚相手となり、子をもうけた。
成人した娘の一人がエリナーである。同女と結婚したのが、
第2代カンバーランド伯爵ヘンリー・クリフォードだった。で、
エリザベス1世は未婚で子もなかった。したがって、
ファーディナンド・スタンリーが生まれた1559年時点で、
このマーガレット・クリフォードが王位継承権第1位、
その子ファーディナンド・スタンリーがが同2位、
という状況だったのである。が、
王位継承権上位だからといって、
現国王の意志と同じというわけではない。逆に、
エリザベス1世からは疎まれてた家系である。
王位継承権者がいることは、
エリザベスの姉メアリのときなら宝だったものが、
メアリが子を残さずに死んだことで諸刃の剣のように禍となった。
ダービー伯爵家にとっては危険極まりないことだった。
父親のヘンリーは1993年に死に、ダービー伯を嗣いだ
息子のファーディナンドが1596年に25歳で、
母マーガレットも1596年に55歳で、それぞれ
エリザベス1世(1603年没)より先に死んでしまう。
これらは偶然だったのだろうか。
ファーディナンドにはイエズス会士によって毒殺された、
という話がつきまとってる。

ダウランドの「ダービー伯ファーディナンド閣下のガリアード」の旋律は、
♪ドー<・ミーー<ファ│<ソーーー・ーー、>ドー<・ミー<ファー│<ソーーー・ーー、
ソー・>ミー>ドー│<ソーーー・>ファーーー・>ミーーー│>レーーー・ーーーー・ーーーー♪
というものである。聖者が街にでもやってきそうな
スピリチュアルな節である。

(ダウランドの「ダービー伯ファーディナンド閣下のガリアード」と
黒人霊歌の「聖者が街にやってくる」を融合させたアレンジを
https://soundcloud.com/kamomenoiwao-1/dowland-kamomeno-iwao-the-earl
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