どこの誰のものともわからない指が背後から伸びてくる。シャツのボタンが外され白いレースの下着は引き下ろされる。露わになった乳房をゆっくりと揉まれ、その先端を捻られる。薄いスカートは捲りあげられ、太ももを這いあがってきた指がまだ新しい肌色のストッキングを引き裂いて足の間の柔らかな部分に触れる。はじめは遠慮がちに、徐々に大胆に。
見知らぬ手に、指に、弄ばれながらわたしは声一つあげることができない。そのいやらしい手から逃れるためのわずかな身動きさえも許されない。
それは、ここが満員電車の中だから。
午前8時30分。普段ならこんな時間に電車に乗ることは無いのだけれど、今日は少し寝坊をしてしまって朝の身支度もそこそこにアパートを走り出た。25歳独身、起こしてくれる人もいない独り暮らしの辛いところだな、なんて思いながら駅までダッシュして、ちょうどホームに滑り込んできた電車に飛び乗った。
ちょうどラッシュタイムに引っかかってしまったのか、車内は信じられないほどのぎゅうぎゅう詰め。まわりのおじさんたちと体がくっついちゃうのが嫌で、どうにか離れようとしたけれどほんの少しの空間も無い。こんなことならせめて女性専用車両に乗れば良かった。このまま約1時間過ごさなきゃいけないなんてまるで拷問。正面のおじさんから漂う加齢臭に思わず顔を背ける。
あーあ。だいたい昨日の会議が長引いたのが悪いのだ。新しい企画を立ち上げるのはいいけれど、その打ち合わせのために終電ぎりぎりまで話し合いを続けるなんてどうかしてる。そもそも話し合いと言っても、わたしなんかの言うことは結局スルーされちゃうんだから、最初から上司たちだけで話し合えばいいのにな。
0時を過ぎてアパートに戻った後、今度は遅くまで連絡が取れないことに腹を立てた彼氏をなだめるのがまた大変だった。帰りが遅くなるといつだって「浮気じゃないのか」なんて言い始める。友達にそのことを話すと「愛されてるね」って笑うけど、ほんと笑い事じゃない。いらいらしちゃう。
たしかに、最近仕事が忙しくてなかなか彼とゆっくり会う時間も無かった。やっと会えたと思ったら、彼はすぐにエッチしようなんて言う。わたしはそんなことより、もっと一緒に出かけたりおしゃべりする時間が欲しいのに。そういえば最後にエッチしたのはいつだったかも思い出せない。なんだかいろいろなことに余裕が無くなっている。今度の連休には一緒に旅行に行こうって言ってたけど、それもこの調子じゃどうなるかわからないな。
ふう、とため息をついたのと同時に、また後ろの扉から人が乗り込んできたのか、ぐいぐいと車両の中央へ向かって押し込まれた。電車の中はひと駅止まるごとに乗客が増え、あまりの圧迫感にわたしのささやかな胸やおしりの膨らみさえも潰されてしまいそう。
この満員の車内の不快感は相当なモノだと思う。妙な熱気があり、いろんな匂いが混じっているし、本当に息をするのも苦しい。こうなるのが嫌だから毎朝ちょっと早めに起きて空いている電車で快適に通勤しているのに。ほんとにもう、昨日の会議ときたら・・・
また堂々巡りで同じことを考えている自分がおかしくて、自嘲気味の笑いがこみ上げてくる。とにかく早く着きますように。祈るような思いで車窓から外を見ると、過ぎていく駅の時計は8時45分あたりを指していた。まだ電車に乗ってから15分も過ぎていない。あと40分以上もこの状態でいなきゃいけないの?軽い絶望感に打ちひしがれる。
ガタン、と電車が大きく揺れた。まわりの乗客に支えられながら、どうにか倒れないように踏ん張る。ハイヒールの足元が頼りない。後ろのひとが一歩前に出て支えてくれたように感じた。すみません、と後ろに向かって呟いて、どうにか体勢を立て直した時。
ほんのわずかな違和感を感じた。
支えてくれたと思った後ろのひとの足が、わたしの足の間にぐいぐいと挟まってくるような気がした。電車は走り続けている。もともと密着しているし、電車の振動でそんな感じがしただけかもしれない。だいたい確かめたくても、後ろを振り向くことなんてできない。ただ正面を見つめて、ひとの頭の隙間から流れる景色に目をやって気を紛らわせた。
カーブがやってきて、また電車が大きく揺れた。乗客たちもそれにあわせて揺れ、また体勢を立て直す。そして違和感はさらに大きくなった。
お尻のあたりに何か硬いものが押し付けられ、電車の揺れに合わせてゆっくりと上下にこすりつけられている。気のせいじゃない。耳元に後ろのひとの熱い吐息がかかる。
・・・まさか、痴漢?
すっと血の気が引いていく。満員電車ってこういうこともあるから本当に嫌。高校生の頃、電車から降りたら友達がスカートにべっとりと精液をかけられていて、泣きだしたことがあったっけ。どうしよう、そんなことされたら・・・いまから会社に行くのに冗談じゃない。気持ち悪い。怖い。
苦しいのを我慢して、体の向きを変えた。隣のひとが迷惑そうに顔をしかめる。こんなときに「チカンです!」なんて声をあげられるような勇気があればいいのに。恥ずかしくて怖くて、とてもそんなこと出来ない。どうにかお尻の位置をずらせて逃げる。
電車が駅に停車して、何人かが降り、また何人かが乗り込んできた。体の密着度は増すばかり。この駅からあとは、終点まで停車することなく電車は走り続ける。はやく着いて。お願い。
まわりの乗客がまるで壁のようになり、もう車窓をみることすらかなわない。前に立つサラリーマンのスーツの襟を見ながら、ただじっと時が過ぎるのを待った。
カーブが多いのか車両が古いのか、電車はガタガタと揺れながら進んでいく。あまりの不快感に気分が悪くなる。うつむいてため息をついたとき、それは起こった。
お尻をぐっと鷲掴みにされる感覚。その手は少しずつスカートを捲り上げ、太ももの間を撫で始めた。もう体をずらす隙間さえもない。怖くて声が出ない。しばらく足を撫でまわされた後、今度は後ろから体を抱きすくめられ、ひとつずつシャツのボタンを外された。
またお尻のあたりに硬いものが擦りつけられる。前のひとも、隣の人も、何も気付いていない。涙がにじんでくる。やめて、助けて。
胸を覆っていた白いレースの下着が乱暴に引き下ろされ、背中のホックがはじけ飛ぶ。後ろから伸ばされた手はゆっくりと執拗に乳房を揉みしだく。ときどき思い出したように乳首に触れ、指先で強く捻る。怖くて、痛くて、それなのに体が熱くなってくる。手の動きは止まらない。敏感になった乳首がこれ以上なく硬く尖り始めるまで弄られ続けた。
手の動きが止まる。
半裸にされた上半身から、今度は下半身へと矛先を変える。薄いスカートはもう何の意味も為さず、足を包んでいた肌色のストッキングは音も立てずに一瞬で破られた。足首のところにキラキラするストーンのついたお気に入りのストッキング。まだ買ったばかりだったのに。
破れたストッキングの穴から指が忍び込んでくる。足の間・・・下着の上から割れ目を何度もなぞるように撫でられる。ちょうどクリトリスのあたりを撫でられたとき、無意識に体が跳ねた。荒くなる呼吸を、漏れそうになる声を、押し殺してただ堪える。目を閉じる。はやく着いて。はやく。
また電車が大きく揺れる。乗客が一斉に傾いて体勢を崩す。それでもわたしを嬲る手はまだ逃してくれない。腰を抱えられ、下着と破れたストッキングを膝のあたりまで下ろされてしまった。戸惑う間もなく、指先がぬるりとわたしの中に入ってきた。
「やっ・・・」
思わず声が出る。指が根元まで押し込まれ、わたしの中でぐにゅぐにゅと蠢いている。ふいに隣に立つサラリーマン風の男がこちらを見た。半裸に剥かれたわたしの姿に気付いたのか、驚いたような表情を見せた。助けて、お願い。
指はいつまでも探るようにわたしの中で動き続けている。彼にも触られたことの無いような奥の方まで探っていく。恥ずかしい液体が太ももをつたって足首まで流れていくのがわかる。隣の男はただ好奇の目で見ているだけで、何もしてくれない。
そっと指が抜かれる。電車が揺れる。足元がふらつき、そのまま床に崩れそうになる。後ろの男はわたしの腰を支えながら、こちらを見ている男に何かを囁いた。隣の男が下卑た笑みを浮かべる。
足の間に硬いものが触れる。指じゃない。もっと太くて、すごく熱い。その先がわたしの入口を押し広げていく。後ろの男が呻き声をあげる。
「や、いやっ、やめて・・・」
腰を引こうとしたのに、かえって強く引き寄せられてしまう。熱い塊が奥深くまで突き立てられる。電車の揺れに合わせるように、それは何度もわたしを突きあげる。涙が止まらない。隣にいたはずの男は正面にまわり、わたしの胸に舌を這わせている。ぬめる舌先が硬くなった乳首に絡みつく。体の中から与えられる刺激も合わさって、もう声が抑えきれない。
「あ、あっ・・・んっ・・・」
「よがり声あげてんじゃねえよ、なあ、気持ちいいんだろ?ほら」
後ろの男が激しく腰を振る。熱い、熱い。体の中が掻きまわされていくようで、頭の芯が溶けてしまいそうになる。気持ちいいわけない、こんな、こんな・・・。
まわりにいた乗客がいつのまにかわたしのまわりをぐるりと取り囲むようにして、わずかな空間を空けて犯されるわたしを見つめている。いくつもの好奇の視線に晒されて、見知らぬ男の性器に貫かれて、舐めまわされて、それなのにわたしの体は信じられないような快感で震えていた。
男が腰を打ちつけるたびに快感の波が高まる。彼氏とのエッチでも感じたことの無いような悦び。眺めているだけだった男のひとりが、わたしの唇を吸い始めた。舌が歯の間を割って入ってくる。左右の乳房に何人もの男の手が伸び、乳首の先端を誰かが噛んだ。わたしの中にいる男が腰を抱いたまま大きく痙攣する。
「うっ・・・このまま出すからな、いいな」
嫌だ、それだけは嫌・・・言葉にならなくて、必死に顔を左右に振ってみたけれど、絶頂にいる男がそんなことを聞いてくれるわけもない。荒々しい息と共に火傷しそうな塊がわたしのなかにぶちまけられる。男の体が離れた途端、別の方向から腕が伸びてきた。精液が流れ落ちる股間を乱暴に指で広げられ、その奥を擦りあげられる。もう痛いのか気持ちいいのかもわからない。
電車の走る騒音に紛れてぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえる。足には何人もの男たちの性器が擦りつけられている。頭を押さえつけられ、男たちのひとりの性器を咥えさせられた。のどの奥まで押し込まれる。同時にまた別の男の性器があそこに捻じ込まれた。腰を打ちつけられている間に、誰かの舌がクリトリスを刺激する。
「やぁっ・・・い、い、いっちゃう・・・・」
乳首に爪を立てられ、思わず叫び声をあげる。嘲笑する声がわたしを取り巻く。恥ずかしい、悔しい、それなのにこんなにも気持ちいい。
「輪姦されながらイクのか、淫乱な女だな、え?」
「もっと欲しいんだろ、欲しいって言えよ」
「朝っぱらから変態が・・・さあ、次は俺の番だ」
口の中に苦い味が広がる。吐き出す間さえもなく、また別の男の猛った性器が突っ込まれる。わたしの中では何人目かの男が腰を振り、絶頂を迎えようとしている。足をつたって流れていくのは男たちの精液なのか、それとも自分の愛液なのか、擦り切れて流れ落ちる血なのか、もう何もわからない。
男たちの興奮が収まってきた頃、車内アナウンスが流れて終点が近いことを告げた。視界の奥で、別の女の子が同じように裸にされて犯されているのがちらりと見えた。
駅に着くと、男たちは何事も無かったように車両を降りて行った。わたしもそれに紛れて半裸のままホームに出て、急いで女子トイレに駆け込んで身支度を整えた。口を濯ぎ、顔を洗い、化粧を直す。会社に急病で休むと連絡を入れた後、トイレの個室に鍵をかけて破れたストッキングと精液に塗れた下着を汚物缶に投げ捨てた。
体の火照りがおさまらない。あんなに何度も突っ込まれたせいか、足の間の熱がちっとも冷めない。指で触れてみるとしっとりと濡れている。傷ついてひりひりと痛むところを避けて、慎重に気持ちのいいところを探して指先で撫でる。さっき自分がされたことを思い出して、男たちの指を思い出して胸を揉み乳首をつまんでみる。
気持ち・・・いい・・・
たまらなくなって、指を2本挿入して中を掻きまわす。ぐちゅぐちゅという音。ああ、わたし、あんなことされてしまって・・・どうしちゃったんだろう・・・こんな、気持ち、いい・・・
どんなに自分の指で慰めても、さっき感じたような快感はやってこない。諦めて個室を出て、手を洗いながら鏡に向かって決意を固める。
明日から毎日、今日と同じ時間の電車に乗ることにしよう。もちろん、下着はつけないで。
(おわり)
見知らぬ手に、指に、弄ばれながらわたしは声一つあげることができない。そのいやらしい手から逃れるためのわずかな身動きさえも許されない。
それは、ここが満員電車の中だから。
午前8時30分。普段ならこんな時間に電車に乗ることは無いのだけれど、今日は少し寝坊をしてしまって朝の身支度もそこそこにアパートを走り出た。25歳独身、起こしてくれる人もいない独り暮らしの辛いところだな、なんて思いながら駅までダッシュして、ちょうどホームに滑り込んできた電車に飛び乗った。
ちょうどラッシュタイムに引っかかってしまったのか、車内は信じられないほどのぎゅうぎゅう詰め。まわりのおじさんたちと体がくっついちゃうのが嫌で、どうにか離れようとしたけれどほんの少しの空間も無い。こんなことならせめて女性専用車両に乗れば良かった。このまま約1時間過ごさなきゃいけないなんてまるで拷問。正面のおじさんから漂う加齢臭に思わず顔を背ける。
あーあ。だいたい昨日の会議が長引いたのが悪いのだ。新しい企画を立ち上げるのはいいけれど、その打ち合わせのために終電ぎりぎりまで話し合いを続けるなんてどうかしてる。そもそも話し合いと言っても、わたしなんかの言うことは結局スルーされちゃうんだから、最初から上司たちだけで話し合えばいいのにな。
0時を過ぎてアパートに戻った後、今度は遅くまで連絡が取れないことに腹を立てた彼氏をなだめるのがまた大変だった。帰りが遅くなるといつだって「浮気じゃないのか」なんて言い始める。友達にそのことを話すと「愛されてるね」って笑うけど、ほんと笑い事じゃない。いらいらしちゃう。
たしかに、最近仕事が忙しくてなかなか彼とゆっくり会う時間も無かった。やっと会えたと思ったら、彼はすぐにエッチしようなんて言う。わたしはそんなことより、もっと一緒に出かけたりおしゃべりする時間が欲しいのに。そういえば最後にエッチしたのはいつだったかも思い出せない。なんだかいろいろなことに余裕が無くなっている。今度の連休には一緒に旅行に行こうって言ってたけど、それもこの調子じゃどうなるかわからないな。
ふう、とため息をついたのと同時に、また後ろの扉から人が乗り込んできたのか、ぐいぐいと車両の中央へ向かって押し込まれた。電車の中はひと駅止まるごとに乗客が増え、あまりの圧迫感にわたしのささやかな胸やおしりの膨らみさえも潰されてしまいそう。
この満員の車内の不快感は相当なモノだと思う。妙な熱気があり、いろんな匂いが混じっているし、本当に息をするのも苦しい。こうなるのが嫌だから毎朝ちょっと早めに起きて空いている電車で快適に通勤しているのに。ほんとにもう、昨日の会議ときたら・・・
また堂々巡りで同じことを考えている自分がおかしくて、自嘲気味の笑いがこみ上げてくる。とにかく早く着きますように。祈るような思いで車窓から外を見ると、過ぎていく駅の時計は8時45分あたりを指していた。まだ電車に乗ってから15分も過ぎていない。あと40分以上もこの状態でいなきゃいけないの?軽い絶望感に打ちひしがれる。
ガタン、と電車が大きく揺れた。まわりの乗客に支えられながら、どうにか倒れないように踏ん張る。ハイヒールの足元が頼りない。後ろのひとが一歩前に出て支えてくれたように感じた。すみません、と後ろに向かって呟いて、どうにか体勢を立て直した時。
ほんのわずかな違和感を感じた。
支えてくれたと思った後ろのひとの足が、わたしの足の間にぐいぐいと挟まってくるような気がした。電車は走り続けている。もともと密着しているし、電車の振動でそんな感じがしただけかもしれない。だいたい確かめたくても、後ろを振り向くことなんてできない。ただ正面を見つめて、ひとの頭の隙間から流れる景色に目をやって気を紛らわせた。
カーブがやってきて、また電車が大きく揺れた。乗客たちもそれにあわせて揺れ、また体勢を立て直す。そして違和感はさらに大きくなった。
お尻のあたりに何か硬いものが押し付けられ、電車の揺れに合わせてゆっくりと上下にこすりつけられている。気のせいじゃない。耳元に後ろのひとの熱い吐息がかかる。
・・・まさか、痴漢?
すっと血の気が引いていく。満員電車ってこういうこともあるから本当に嫌。高校生の頃、電車から降りたら友達がスカートにべっとりと精液をかけられていて、泣きだしたことがあったっけ。どうしよう、そんなことされたら・・・いまから会社に行くのに冗談じゃない。気持ち悪い。怖い。
苦しいのを我慢して、体の向きを変えた。隣のひとが迷惑そうに顔をしかめる。こんなときに「チカンです!」なんて声をあげられるような勇気があればいいのに。恥ずかしくて怖くて、とてもそんなこと出来ない。どうにかお尻の位置をずらせて逃げる。
電車が駅に停車して、何人かが降り、また何人かが乗り込んできた。体の密着度は増すばかり。この駅からあとは、終点まで停車することなく電車は走り続ける。はやく着いて。お願い。
まわりの乗客がまるで壁のようになり、もう車窓をみることすらかなわない。前に立つサラリーマンのスーツの襟を見ながら、ただじっと時が過ぎるのを待った。
カーブが多いのか車両が古いのか、電車はガタガタと揺れながら進んでいく。あまりの不快感に気分が悪くなる。うつむいてため息をついたとき、それは起こった。
お尻をぐっと鷲掴みにされる感覚。その手は少しずつスカートを捲り上げ、太ももの間を撫で始めた。もう体をずらす隙間さえもない。怖くて声が出ない。しばらく足を撫でまわされた後、今度は後ろから体を抱きすくめられ、ひとつずつシャツのボタンを外された。
またお尻のあたりに硬いものが擦りつけられる。前のひとも、隣の人も、何も気付いていない。涙がにじんでくる。やめて、助けて。
胸を覆っていた白いレースの下着が乱暴に引き下ろされ、背中のホックがはじけ飛ぶ。後ろから伸ばされた手はゆっくりと執拗に乳房を揉みしだく。ときどき思い出したように乳首に触れ、指先で強く捻る。怖くて、痛くて、それなのに体が熱くなってくる。手の動きは止まらない。敏感になった乳首がこれ以上なく硬く尖り始めるまで弄られ続けた。
手の動きが止まる。
半裸にされた上半身から、今度は下半身へと矛先を変える。薄いスカートはもう何の意味も為さず、足を包んでいた肌色のストッキングは音も立てずに一瞬で破られた。足首のところにキラキラするストーンのついたお気に入りのストッキング。まだ買ったばかりだったのに。
破れたストッキングの穴から指が忍び込んでくる。足の間・・・下着の上から割れ目を何度もなぞるように撫でられる。ちょうどクリトリスのあたりを撫でられたとき、無意識に体が跳ねた。荒くなる呼吸を、漏れそうになる声を、押し殺してただ堪える。目を閉じる。はやく着いて。はやく。
また電車が大きく揺れる。乗客が一斉に傾いて体勢を崩す。それでもわたしを嬲る手はまだ逃してくれない。腰を抱えられ、下着と破れたストッキングを膝のあたりまで下ろされてしまった。戸惑う間もなく、指先がぬるりとわたしの中に入ってきた。
「やっ・・・」
思わず声が出る。指が根元まで押し込まれ、わたしの中でぐにゅぐにゅと蠢いている。ふいに隣に立つサラリーマン風の男がこちらを見た。半裸に剥かれたわたしの姿に気付いたのか、驚いたような表情を見せた。助けて、お願い。
指はいつまでも探るようにわたしの中で動き続けている。彼にも触られたことの無いような奥の方まで探っていく。恥ずかしい液体が太ももをつたって足首まで流れていくのがわかる。隣の男はただ好奇の目で見ているだけで、何もしてくれない。
そっと指が抜かれる。電車が揺れる。足元がふらつき、そのまま床に崩れそうになる。後ろの男はわたしの腰を支えながら、こちらを見ている男に何かを囁いた。隣の男が下卑た笑みを浮かべる。
足の間に硬いものが触れる。指じゃない。もっと太くて、すごく熱い。その先がわたしの入口を押し広げていく。後ろの男が呻き声をあげる。
「や、いやっ、やめて・・・」
腰を引こうとしたのに、かえって強く引き寄せられてしまう。熱い塊が奥深くまで突き立てられる。電車の揺れに合わせるように、それは何度もわたしを突きあげる。涙が止まらない。隣にいたはずの男は正面にまわり、わたしの胸に舌を這わせている。ぬめる舌先が硬くなった乳首に絡みつく。体の中から与えられる刺激も合わさって、もう声が抑えきれない。
「あ、あっ・・・んっ・・・」
「よがり声あげてんじゃねえよ、なあ、気持ちいいんだろ?ほら」
後ろの男が激しく腰を振る。熱い、熱い。体の中が掻きまわされていくようで、頭の芯が溶けてしまいそうになる。気持ちいいわけない、こんな、こんな・・・。
まわりにいた乗客がいつのまにかわたしのまわりをぐるりと取り囲むようにして、わずかな空間を空けて犯されるわたしを見つめている。いくつもの好奇の視線に晒されて、見知らぬ男の性器に貫かれて、舐めまわされて、それなのにわたしの体は信じられないような快感で震えていた。
男が腰を打ちつけるたびに快感の波が高まる。彼氏とのエッチでも感じたことの無いような悦び。眺めているだけだった男のひとりが、わたしの唇を吸い始めた。舌が歯の間を割って入ってくる。左右の乳房に何人もの男の手が伸び、乳首の先端を誰かが噛んだ。わたしの中にいる男が腰を抱いたまま大きく痙攣する。
「うっ・・・このまま出すからな、いいな」
嫌だ、それだけは嫌・・・言葉にならなくて、必死に顔を左右に振ってみたけれど、絶頂にいる男がそんなことを聞いてくれるわけもない。荒々しい息と共に火傷しそうな塊がわたしのなかにぶちまけられる。男の体が離れた途端、別の方向から腕が伸びてきた。精液が流れ落ちる股間を乱暴に指で広げられ、その奥を擦りあげられる。もう痛いのか気持ちいいのかもわからない。
電車の走る騒音に紛れてぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえる。足には何人もの男たちの性器が擦りつけられている。頭を押さえつけられ、男たちのひとりの性器を咥えさせられた。のどの奥まで押し込まれる。同時にまた別の男の性器があそこに捻じ込まれた。腰を打ちつけられている間に、誰かの舌がクリトリスを刺激する。
「やぁっ・・・い、い、いっちゃう・・・・」
乳首に爪を立てられ、思わず叫び声をあげる。嘲笑する声がわたしを取り巻く。恥ずかしい、悔しい、それなのにこんなにも気持ちいい。
「輪姦されながらイクのか、淫乱な女だな、え?」
「もっと欲しいんだろ、欲しいって言えよ」
「朝っぱらから変態が・・・さあ、次は俺の番だ」
口の中に苦い味が広がる。吐き出す間さえもなく、また別の男の猛った性器が突っ込まれる。わたしの中では何人目かの男が腰を振り、絶頂を迎えようとしている。足をつたって流れていくのは男たちの精液なのか、それとも自分の愛液なのか、擦り切れて流れ落ちる血なのか、もう何もわからない。
男たちの興奮が収まってきた頃、車内アナウンスが流れて終点が近いことを告げた。視界の奥で、別の女の子が同じように裸にされて犯されているのがちらりと見えた。
駅に着くと、男たちは何事も無かったように車両を降りて行った。わたしもそれに紛れて半裸のままホームに出て、急いで女子トイレに駆け込んで身支度を整えた。口を濯ぎ、顔を洗い、化粧を直す。会社に急病で休むと連絡を入れた後、トイレの個室に鍵をかけて破れたストッキングと精液に塗れた下着を汚物缶に投げ捨てた。
体の火照りがおさまらない。あんなに何度も突っ込まれたせいか、足の間の熱がちっとも冷めない。指で触れてみるとしっとりと濡れている。傷ついてひりひりと痛むところを避けて、慎重に気持ちのいいところを探して指先で撫でる。さっき自分がされたことを思い出して、男たちの指を思い出して胸を揉み乳首をつまんでみる。
気持ち・・・いい・・・
たまらなくなって、指を2本挿入して中を掻きまわす。ぐちゅぐちゅという音。ああ、わたし、あんなことされてしまって・・・どうしちゃったんだろう・・・こんな、気持ち、いい・・・
どんなに自分の指で慰めても、さっき感じたような快感はやってこない。諦めて個室を出て、手を洗いながら鏡に向かって決意を固める。
明日から毎日、今日と同じ時間の電車に乗ることにしよう。もちろん、下着はつけないで。
(おわり)
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