こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。
動物の飼主は、動物の占有者として、動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います(民法第718条1項)。
これを【動物占有者の責任】といいます。
もっとも、「動物の種類及び性質に従い相当の注意」をもってその管理をしたときは、飼主は損害賠償責任を負わない旨規定されています。
しかし、飼主の損害賠償責任を否定した裁判例は極めて少なく、飼っている動物が他人に危害を加えた場合、飼主の損害賠償責任は免れがたいといえます。
問題となる事例が特に多いのが飼犬の場合です。
飼主が多額の損害賠償責任を負わされた事例をひとつ紹介しておきます。
飼主がボールを投げ、犬がボールを追いかけて取りに行き、飼主のもとにボールをくわえて戻ってくるというボール遊びがありますね。
事件は、そのボール遊びの際に起こりました。
飼主が、飼犬であるゴールデンレトリバーと一緒に、公園でテニスボールで遊んでいたときのことです。
テニスボールを全速力で追いかけていたときに、ゴールデンレトリバーは、近くにいた成人女性の右下肢に衝突して転倒させてしまいます。
犬はボールを追いかけることに夢中で、成人女性が視界に入らなかったと考えられます。
その結果、飼主が合計2000万円を超える損害賠償責任を負うこととなった事例です。
大型犬のゴールデンレトリバーの体重は30キロほどだったとのことですから、成人女性の右下肢には相当の衝撃が加わったはずです。
女性は転倒し、顔面の骨の骨折,頚骨骨折等の傷害を負います。
後遺障害も残り、アゴの嚙み合わせ不全やアゴの関節痛などにより,固い肉や生野菜を食べることができなくなり、御飯は柔らかく炊いて食べざるを得なくなったとのことです。
裁判で損害賠償を命じられた飼主には何の悪気もなく、ただ飼犬と一緒に公園でボール遊びを楽しんでいただけです。
それでも、このような責任を負わされることがあります。
ボール遊びが好きな犬も多いですが、公園等でボール遊びをするときは、ボールを投げる方向に人がいないことを十分に確認してから投げる必要があります。
特に、中型犬や大型犬を飼っている方の場合は要注意です。
公園での遊びに限らず、犬を散歩に連れて行く場合も必ずリードをし、人を咬んだりしないよう、道行く人との距離を十分にとることを心がけるべきでしょう。