Aさんが選んだのは塾講師。拘束時間が短く、時給も良い塾講師は魅力的だった。学生にも人気で、Aさんの周りでも塾講師をしている友人は多かった。
早速、求人誌やWebなどを使って探し、電話をかける。面接の日取りはすぐに決まった。
指定された面接会場は、電車に乗って自宅から1時間ほどもする場所であった。15分ほどの面接と、簡単な学力テスト、ビデオを見ながらの穴埋め問題を受けた。全部で約3時間半がかかった。
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採用のお知らせをメールで受け取ったAさんは、塾が指定する研修を受けることになった。場所は、面接を受けた場所。自宅から一時間。正直遠い・・・。だが、これも仕事だと割り切り、出かけたのであった。
研修会場へ着くと、「模擬授業」なる研修を受けることに。研修なので、無給だ。この日の交通費も出ない。片道560円、往復で1020円はちょっと痛かった。
また、塾側が言うには、この研修は「第二次採用試験」なのだという。先日もらった「採用メール」はいったいなんだったのだろうか? ふと、Aさんの脳裏に疑問がよぎった。
この日は正味4時間ほどで帰宅の途へ。
帰宅したとたん、電話が鳴った。採用の電話であった。同時に、最寄の校舎への配属も言い渡された。
Aさんは、「第二次採用試験などというが、実は採用はメールでの通知のときに決まっていたのではないか」と言う。第一に、第二次採用試験を受けてから採用の電話が来るまでの時間が短すぎる。しかも、もうすでに配属先が決まっているという周到さである。
だが、アルバイトなんてこんなものなのかなと、当時のAさんはあまり深く考えなかったという。それよりも、正式に採用されたこと、実際に生徒を受け持つことに関しての期待や緊張や、不安の方が大きかった。
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さて、最寄の塾での初めての授業の日。とりあえず、慣れていないから、という理由で補習授業を受け持つことになった。正式な授業ではないということで、時給は800円。正式な授業を受け持ったときの賃金の約半分であった。
それでもAさんは、初めての授業を、17時から19時までの2時間、無事に終わらせたのであった。
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Aさんは、それから3時間余り、22時になるまで、塾に残っていた。「生徒が残っている間は帰らないで」、というのが塾側の主張であった。おまけにこの3時間の待機時間は無給である。
「そんなこと、聞いてない」、それがAさんの本音であり、事実、求人募集でも面接でも研修でも、そんなことには一言も触れていなかった。
その3時間の間は、塾のすぐそばのコンビニすら入れない。なぜなら、「先生が塾の外に出ると、生徒がまねして出ちゃうでしょ」というのだ。待機するための場所はあるものの、人の出入りが激しく、おまけに授業が終わるたびにがやがやとうるさい。とても落ち着くことはできなかった。
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Aさんにとっての初めてのアルバイト。自分の授業が終わっても無給で拘束されるなんてたまらない、そう思った。そもそも短時間で時給が良いから選んだのに、これでは本末転倒である。
この日の給料は時給800円×2時間で1600円。だが、拘束時間は17時から22時までの6時間だ。計算すると、たったの時給267円。
こんな条件ではとても働けないと思ったAさんは、すぐにそこを辞めることにした。
Aさんは、「まだお給料をもらっていない」という。塾側は「研修期間だから、バイト代は支払えない」と主張しているのだ。Aさんはこのような状況に憤りを感じている。また、このような条件で働いている職場の学生のなかで、疑問の声が聞かれないことが不思議だった、ともいう。
「むしろ、これが普通だとみんな受け止めているんです」
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学生、という名の労働者が、企業によって不当な地位に置かれているのではないだろうか?
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