Loomings

映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

『リベリオン』(2002)

2007-11-30 21:19:27 | クリスチャン・ベイル
リベリオン -反逆者-

アミューズ・ビデオ

このアイテムの詳細を見る



昨日テレビ東京【午後のロードショー】で放映されたことだし、レビューを上げておきましょう。

脚本&監督・カートウィマー、主演・クリスチャン・ベイル、製作者の一人はヤン・デボン。サブタイトル「反逆者」はDVD化の際に付け加えられたものです。

ストーリー:第三次世界大戦後の世界、生き残った指導者たちは、争いの原因となるのは人間の感情であると考え、プロジウムと呼ばれる感情抑止薬を開発。これを毎日投与することを義務づけて、徹底した管理国家体制を築いた。
文学、美術、音楽等あらゆる芸術作品は感情に訴えるものとして没収、焼却され、これらを所有する者、また自らの意志で薬の服用を拒否する者たちも厳しく処罰される。
その摘発に当たるのがクラリック(聖職者)と呼ばれる警察官たちであった。
彼ら独自の武道ガン=カタの達人であるプレストン(ベイル)は、その冷徹な任務遂行ぶりで知られ、反逆者となった相棒パートリッジ(ショーン・ビーン)をも自らの手で処罰する。
が、その事件と、誤って薬の壜を割ってしまったことをきっかけに、彼の中に「感情」が目覚め始める──

『1984』『華氏451』『THX1138』等を彷彿させる近未来ディストピアもので、設定はかなりベタ。またコスチュームやアクションは『マトリックス』もどきなどとも言われて、日本公開時の評価は低く、それどころか殆ど話題にもなりませんでしたが、DVD化されてからは、マニアや出演者のファンの間で根強い人気を保ち、熱狂的ファンもついている作品です。
今となっては「『マトリックス』より好き」という声も多く、私もその一人です。

ストーリーは極めてシンプルですが、こういう作品ではその方がいいと思いますし、それでいて随所にミステリファンの琴線に触れるような仕掛けも施されています。
設定やその展開はB級を通り越してC級、演出によってはZ級に転落してもおかしくないくらいですが、モノトーン基調の映像の美しさと出演者の演技によって救われている映画だと思います。
既成のアクションではなく、わざわざガン=カタというものを開発したことも功績の一つですが、それがこの世界観の中で違和感なくちゃんと「無敵」に見えるのも大したもので、もちろんそれは、主演クリスチャン・ベイルの演技の賜物です。
かなりハードなアクションシーンを盛り込みながら荒っぽい感じはなく、全体として静謐な印象を残すのが、この作品の不思議なところでもあります。どうしようもなくベタな設定と、そういう静謐さや映像美とのあやういバランス、もしくはアンバランスさも、妙にくすぐるものがあって、それが多くの人の心に忘れ難い何かを残す所以かも知れません。

さてそしてクリスチャン・ベイルですが、作品のそういう雰囲気に合った演技と言うより、寧ろ彼の演技と肉体こそが作品の基調をなし、その世界観を決定づけていると言った方がいいかも知れません。
無敵のガン=カタ・マスターを納得させる鋼のごとき肉体とキレのいい動き、どちらも素晴らしく、不審尋問して来た警官隊を、1分にも満たない時間で文字通り瞬殺するシーンなど、素直に「つえー!」「かっけー!」と讃嘆してしまいます。
また、感情を完全に抑制した冷徹なクラリックとして副総裁に会う時と、投薬をやめてから、そして無感情を偽装する時、それぞれの演じ分けも絶妙です。
手袋を外して冷たい手すりに触れてみるシーン、デスクの模様替え等も、表情を変えることなく、しかしその内面で起きていることを明確に表現した演技が秀逸ですが、昨日の放送では、どちらもカットされてしまいました。
カットシーンについて触れておくと、クラリック道場(?)でのブラントとの稽古シーンもテレビでは切られて、ちょっと残念でした。でもまあ、あそこが無くても話自体は繋がっているし、それよりも先に上げたシーン(演技)カットの方が、やはり惜しかったです。
メアリー火刑後の号泣も、そこに到る演技の積み重ねがあってこそ胸打たれますが、最も胸に迫るのは反乱者の隠し部屋のシーンでした。
モノトーンの世界で、そこにだけ様々な色彩があり、プレストンがその中のモノひとつひとつに触れて行く手の動きだけで(またその手が綺麗なこと!)、彼の心にいま起きていることがあますところなく表現されています。このシーン終わり、ベートーベンの第九を聴いての涙は、演出上のダメ押しと言うか寧ろベタ過ぎて余分に感じられました。

その他の登場人物及び出演者について触れると、副総裁(アンガス・マクファーデン)には感情剥き出しのシーンがあったけど、いいんですかね?それにラスボスだったら、マックス・フォン=シドーとか、せめて『1984』のリチャード・バートンくらいの格のある俳優さんにしてほしかった気がします。それとも意図的にああいうキャスティングなんでしょうか?(声はまたしても山路和弘さん。でも当初そうだとは気づかない声と演技でした)
ブラント(テイ・ディグス)もニタニタしやがって、よく逮捕されないもんだ、と思ってしまいます。そもそも「出世欲」を前面に出して来ること自体いかんだろうと思いますが、あれもプレストンに揺さぶりをかけるため「わざと」だったんでしょうか?プレストンが、表情には出さないながら何となく彼をウザく「感じて」いるのが伝わって来て面白かったです。

しかし、メアリーのエミリー・ワトソンとパートリッジのショーン・ビーンはどちらも素晴らしかったです。プレストンの人生に多大な影響を与える人たちでもあり、ベイルともども映画自体はBでも演技はAクラスで、作品に品格を与えています。
初めの方の、パートリッジとプレストンが対峙する「イェーツ」のシーンなど、ライティング、二人の表情ともに完璧です。ショーンの目も綺麗。
でも、押収した時に較べて詩集が「巨大化」しているのは、さんざんネタにされていることとは言え、やっぱり可笑しかったですよ。

ユルゲンのウィリアム・フィクナー、最初に意識したのは『アルマゲドン』でしたが、印象的なのはこちらの方です。フィクナーともども現在『プリズン・ブレイク』でお馴染みドミニク・パーセルが出ていると聞いて、目を凝らしてみましたが──最初に出て来るレジスタンスの人ですよね?
そして、プレストンさんちの最強息子はやっぱり最強でした(笑)。あのひと捻りには感心します。

そんな訳で、惜しいカットシーンは多々あれど、久しぶりにベイルの演技(とガン=カタ)が観られて嬉しかったです。この映画のベイルは、本当に佇まいそのものが鋼のごとく美しく静かに輝いています。
その反面、妙に不器用っぽく見えたりする時もあって、そこが可愛いと思いました

ところで、この映画の日本公式サイトってまだ残っていたんですね!下にリンクしておきます。

『リベリオン』公式サイト

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヒューヒュー!・432 『ウル... | トップ | 『オーストラリア』撮影続行中 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
紫外線? (レイチェル)
2007-12-12 01:46:55
『ウルトラ・ヴァイオレット』実は家人の買ったDVDがありますが、いまだ観ていません……
やはり予告で観たものが、まんま見せ場だったんですか……
X-MEN3にも出ていたキャメロン・ブライトくんはちょっと気になりますが。『リベリオン』と言い、監督ミステリアスな子役が好きなんでしょうか?
返信する
ウルトラ・ヴァイオレットは・・・ (くまんちゅう)
2007-12-07 21:15:34
おいらも予告を見てミラがガンカタしてる!
と楽しみに行ったら、予告編で見た分だけでした、かなりガッカリして帰ってきました。
アクションはチャンバラでした、しかもどこかで見たルロケン風でした、残念。
返信する
ガン=カタ! (レイチェル)
2007-12-03 22:55:17
くまんちゅう様、こんばんは。
TBは残念ですが、コメントは受け取ることができてホッとしました。
ガン=カタは『ウルトラ・ヴァイオレット』でより進化したものが見られるらしいですね。でも映画の出来自体が……{/namida/だと聞いて、まだ見ていません。

それまで誰も見たことのないアクションと、役や世界観をちゃんと理解した深い演技の両方をこなせるベイルは、やはりこの映画にとって得難い主演俳優だったと思います。
返信する
TB出来ないのが残念です (くまんちゅう)
2007-12-02 15:06:17
どこかのBBSで話題になっていたので興味を持ってみた作品ですが、ガン=カタにはやられましたね、ベールの押さえた演技、表情を隠しても目だけで表現できるのは、似ているとか言われる下手とは違う所です。豆兄ぃも出番少な目だったけど、良かったです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

クリスチャン・ベイル」カテゴリの最新記事