Cut (カット) 2007年 06月号 [雑誌]ロッキング・オンこのアイテムの詳細を見る |
先週末くらいから今月号の映画雑誌がいろいろ出ていますが、本日紹介するのはこちら。
こういう表紙の雑誌を買ったりすると、松っちゃんファンと思われてしまうかな。カンヌではなかなかいい手応えがあったようでおめでとうございます。
が、私がこれを買った理由はもちろん『プレステージ』小特集のためです。
ついでに、と言うのも何ですが、そのすぐ後のページにジェラルド・バトラーさんのインタビュー記事も載っています。ドアップの見開きカラーグラビア付き。内容はもちろん『300』中心ですが、何と言うかこの人らしい受け答えでした。
『プレステージ』特集は、ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、そしてクリストファー・ノーラン監督へのインタビューが掲載されて、タイトルページは例のヒュー=アンジャーのステージ上の美しい後ろ姿。つまりこれですね。
インタビューの内容自体は、いずれもweb上のどこかで読んだことがあるような……特にヒュー談話は、あちこちで語っていたことのまとめっぽい感じです。
舞台役者とマジシャンの共通点、共演者のこと。ボウイ先生とは(NYで)ご近所同士だとか。でも例の「コンサートチケット転売ネタ」には触れてませんでした(笑)。
クリスチャンとは一緒に映画に出る前に(どこかのパーティで)会ったことがあるけど、あまり憶えていない──というのも、webで読んだ記憶があります。
ところで、この記事もそうですが、彼のインタビューって、英語で読んでも割と「文章っぽい」口調なんですよ。ジャーナリズム専攻で、デビュー後も豪のTVで情報番組の司会をしていたこともあったり、取材する側にも回った経験があるからか、ネタ系以外は(それも含めて、かな)概してそつなく如才なく話をまとめてますね。
しかし、今回面白かったのは、何と言ってもクリスチャン・ベイルへのインタビューの方。カテゴリを「クリスチャン・ベイル」にしてもいいと思うくらいです。
何たって見出しからして、
「僕はDVDの特典映像なんか大嫌いだ」
ですからね
これも同じような談話はどこかで見た記憶がありますが、日本語でこうデカデカと書かれるとインパクト大ですわ。また、その内容も、
「どうやって役作りしたかなんて、俳優自らが語る必要はない。演技の秘密が知りたければ(観る側が)自分で探すべきだ。DVD特典なんて大嫌いだし、オーディオコメンタリーなんて、頼まれても絶対やりたくない。映画を作ることだけが自分の仕事で、それ以外は関係ないし興味ない」
──という意味のことを語っているんです。
これねぇ…そんじょそこらの役者が同じことを言っても「何様!?」だけど、あれだけのキャリアと役への洞察力と集中力と表現力と構築力と、そしてもちろんそれらに裏打ちされた強烈な自負を有する人だからこそ許される言葉ですよ。
やっぱり永遠の「天才少年」なんだなぁ。何と言うか芯の部分がずっと綺麗なままなんでしょうね、この人は。
彼にとって、役は「演じる」ものではなく「なる」ものだ、という話を以前別のインタビューで読んだこともありますが、多分それは本当のことなのでしょう。
一方で、「ボーデンを演じることはジグソーパズルのピースをはめていくような作業だった」とも語っていて、これは既に『プレステージ』本編をご覧になった方なら納得できる言葉だと思います。
この作中、彼はその演技を本当に細部にわたって計算し、構築しながら、なおかつそれをさりげなく自然なものに見せてしまうという離れ業をやってのけています。あたかも熟練のマジシャンの手業のように。
またヒュー・ジャックマンについては、役者としてのタイプも映画に関する見解も違うけれど、同調する必要も議論する必要もない、と言っています。
でも別に仲悪かった訳じゃなくて、webで見かけた記事によれば、この作品とも演技とも関係ない、シリーズもののギャラの話とか、お子さんの話とかしてたらしいですけどね。例の対談形式インタビューでは、二人して可愛かったし。
撮影にはいる前、出会った時から二人は「ボーデンとアンジャー」だった、とも。これも、さもありなんと言うか、そもそも監督自身が(この雑誌ではないけど)「誂えたようなキャスティングだった」と語っていることです。でも、クリスチャンの言葉として聞くと、嬉しいような何とも言えない気持ちになりますね。
ただヒューの演技については、私はまた別の見方をしていますが、それは映画公開後にでも改めて。
しかし、今回の特集で最もツボだったのは、「クリスチャンとは『バットマン』で濃厚な時間を過ごした」とか、「これから共演してみたい俳優は?」と訊かれて、
「フフフフフ……アンジェリーナ・ジョリーだな、フッフッフッフッフ(大爆笑)」
なんてお答えになっているサー・マイケル・ケインなのでした。
『プレステージ』については、同誌上でレビュー、またコラム『映画の境界線』でも取り上げています。
私見では、これは「マジック映画」ではなく「メタ=マジック映画」です。「ミステリ」ではなく「メタ=ミステリ」と言うか。重要なのはトリックや謎そのものではない、と言っておきます。
上で触れたキャスティングにもその「メタ」性は現れていると思うし、そもそもこの作品が(原作もですが)どの「ジャンル」に属するか問うこと自体、意味をなさないとも思います。
となると、とかく「方向性を誤っているのでは…?」と言われるGAGAのあの宣伝って、実はこの映画の正体を明かさないための巧妙なミスリードなのかも、という気もして来ました。ホントか?
Are you watchig closely……?