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映画・舞台の感想や俳優さん情報等。基本各種メディア込みのレ・ミゼラブル廃。近頃は「ただの日記」多し。

テレビで観た『ヴァン・ヘルシング』(2004)

2007-03-19 16:08:47 | ヒュー&デイヴィッド
ヴァン・ヘルシング コレクターズ・エディション

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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ときどき
という訳で、皆さん、昨夜は『ヴァン・ヘルシング』初の地上波放送をお楽しみ頂けましたでしょうか。

今回初めてご覧になった皆様はいかがでしたか?
なに、下らない?駄作?
そんなことはわかっているのだよ、諸君。
それは承知の上で、私はこの映画に非常な愛着を持っているのです。

あのムダにカッコいい音楽、ムダに凝った設定(消化し切れず、結局意味不明なことに)、ムダに手をかけた装置や小道具類、そして出演者の演技──何もかもが好きです。

実は、2004年の9月、前のブログを始めた時 goo を選んだのは、当時『ヴァン・ヘルシング』テンプレートを用意してくれていたからなんですね。
前ブログで何度も触れ、一昨年から新規に始めた現ブログでも、この映画に対する思いの丈(?)はあちこちで語っておりますので、ご参考までに。

ヴァン・ヘルシング一周年
ヴァン・ヘルシング二周年
ヒューヒュー!・359
枢機卿の秘密もしくは宿の主人の正体

で、今回のテレビ放映版ですが、冒頭のトランシルヴァニアのシーンと、フランケンシュタイン博士の出番が全てカットされてしまったのには驚きました。
ドラキュラ城の怪しい実験装置の数々は博士が作ったということや、博士と「息子」である怪物との愛情が伝わらないままだというのが残念です。
そして、伯爵の「サクセース!」も……

吹替えは良かったですね。翻訳は殆ど変わらなかったようだし、DVD版より今回のテレビ版をお奨めしたいです。
主な配役は以下の通り。

ヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン):山寺宏一
アナ王女(ケイト・ベッキンセール):田中敦子
ドラキュラ伯爵(リチャード・ロクスボロ):土師孝也
カール(デイヴィッド・ウェナム):三ツ矢雄二
ヴェルカン(ウィル・ケンプ):藤原啓治
フランケンシュタイン(シュラー・ヘンズリー):銀河万丈

三ツ矢さんがカールを演じると聞いた時には「ええっ!?」と思いましたが、さすがでしたね。可愛かったし、長台詞もばっちり。
カールに芸達者な三ツ矢さん、ヘルシングに、同じく達者だけどそれを抑えた演技も出来る山寺さん、という配役は、元の俳優さんたちにも通じるものがある気がします。
アナ王女の田中さんもカッコよかったです。ヴェルカンは、初め聴いた時、家族が「あ、(クレヨン)しんちゃんパパだ!」……
藤原さん、チョコレート工場のウォンカさん(ジョニー・デップ)だってやってるのに

この映画にご興味を持たれた方には上の「コレクターズエディション」をお奨めします。
本編での雰囲気とまるで別人なNG集のヒューが見もの。私などは、あれを観てヒューにはまってしまったくらいです。
ついでに、前日譚に当たる『アニメーテッド』にもリンクしておきましょう。
ヘルシングとカールは、こちらの方が更に「コンビ」「相棒」という感じです。声をアテているのはヒュー&デイヴィッド自身。

さて、初めてご覧になった方に説明が必要と思われる設定は、「ヴァン・ヘルシングの名前」でしょうか。
ご存知ブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』及び、数多のドラキュラ映画に於ける、アムステルダム大学のヴァン・ヘルシング教授のファーストネームは「エイブラハム」ですが、今回の映画『ヴァン・ヘルシング』では「ガブリエル」。

ガブリエル=「神の左」とは、即ち大天使ガブリエルのことです。女性形で表現されることも多いですが、受胎告知の天使としても知られていますね。
過去の記憶をなくしたこの映画の主人公の正体とは、実はその「ガブリエル」かも知れない、ということが暗示されていますが、映画の中では結局「暗示」にとどまっていました。

もう一つ、鑑賞上のツボは出演者のこと。
主演ヒュー・ジャックマン、ヴァン・ヘルシングの相棒カール役のデイヴィッド・ウェナム、そしてドラキュラ伯爵リチャード・ロクスボロ(「ロクスバーグ」表記が多いけれど、これか「ロクスバラ」の方が本来の発音に忠実らしいです)は、共にオーストラリア映画・演劇界のスター、名優たちでもあります。
彼らの過去の因縁(?)を調べると、次から次へと面白い事実が出て来るんですよ。これについては、新規のお客様のために、また改めて触れるかも知れません。

更に「フランケンシュタインの怪物」役シュラー・ヘンズリーは、ヒュー・ジャックマンが主演した英国ロイヤル・ナショナル・シアターの舞台『オクラホマ!』(演出トレヴァー・ナン)に於いて、ヒューのカーリーに対するライバル、ジャド役を務め、後のブロードウェイ公演では、その役でトニー賞助演男優賞を受賞しています。
ジネット枢機卿ことアラン・アームストロング氏については、上の方のブログ内リンクをご参照下さい。

そんな訳で、何度か書いて来たことですが、一見マンガチックで典型的なポップコーン・ムービーとみなされているこの映画、実は演技の上では、舞台での実績豊富な人たちによって作られているんですね。

多くの方はデイヴィッドを賞賛すると思いますが(本当にこれが『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのファラミア大将と同じ人とは、言われなければ判らないでしょう)、私はやはりヒューを褒めたいです。
実際、自分はこれを観て、ヒュー・ジャックマンという役者の懐深さに気づいたくらいです。

表現の派手さやバカバカしさの陰で、「生きること」の痛みや哀しみがひそやかに描かれている所も、自分がこの映画を好きな理由の一つですが、そこに説得力を持たせることが出来たのは、ヒューの演技の賜物でしょう。
デイヴィッドの達者さや、ロクスさんの怪演に目を奪われがちですが、ヒューはおそらく彼らとは異なる方法論、アプローチの仕方で、この役に臨んでいます。
「誰よりも目立つ」ことだけが主演俳優の仕事ではないのです。作品をバカにせず、コミックブック的な役を人間的なリアリティを以て繊細に演じたヒューこそ、やはりこの映画にとっての「扇の要」だったと、私は思います。

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