「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

欧州に放射性物質が拡散!?

2018-02-15 | 学術全般に関して
昨日付けでScienceに掲載された記事に驚きました。
タイトルは「ロシアでの使用済み核燃料の取り扱いミスによって欧州に放射性物質(放射能)が拡散したのかもしれない Mishandling of spent nuclear fuel in Russia may have caused radioactivity to spread across Europe」となっており、内容は昨年9月と10月に欧州のほぼ全域で検出されたルテニウム106 ruthenium-106という人造放射性同位体元素は、おそらくロシア南部のオジョルスク Ozyorsk近郊にあるマヤーク核技術施設 Mayak nuclear facilityから漏出したものであると、パリのフランス放射線防護・原子力安全研究所 French Institute of Radioprotection and Nuclear Security (IRSN) の研究者が指摘したというものです。
ロシア政府は事故が起きたことを否定しているものの、飛散した放射性物質の由来についてはロシアの科学者たちの間でも意見が割れているようです。

私は恥ずかしながら知らなかったのですが、昨秋に欧州ではルテニウム106を含む「原子雲 nuclear cloud」(広島、長崎の原爆投下後に生じた雲のように放射性物質を含む雲のこと)が見つかったことが大きな問題となっていたようです。ルテニウム106は自然環境には存在しない同位体なので、間違いなく人為的な原因があると考えられていました。
そして、当時の天候などを鑑みたコンピューターモデル解析などを行って、この原子雲が何処から来たのかを欧州中の研究者たちが解析した結果、おそらくロシア南部のマヤーク核技術施設だろうという意見が国際的に支配的であるようです(ただし、もちろん、ロシアは否定)。

思い出されるのは、福島です。
日本では2011年の福島第一原発事故があり、残念ながら、東日本どころか世界中に多量の放射性物質が放出されました。当時、現場レベルで原発事故の拡大を防ぐために様々な対策が執られ、その後も色々な対応が図られてきた結果、なんとか事態は収束に向かいつつあります。しかし、今もなお福島県の一部では放射線の空間線量率が高い地域があり、「完全に元通り」になるにはもうすこし時間がかかることでしょう。

今回どうして人工の放射性物質が欧州中に巻き散らかされたのか?
一刻も早い原因究明と適切な対応が望まれますね。


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