「不可視の両刃」放射線に挑む~英国大学院博士課程留学~

英国に留学して放射線研究に取り組む日本人医師ブログ

公募戦士の忘備録 ~自身のラボを立ち上げるまで

2022-03-12 | 学術全般に関して
「公募戦士」という俗語があります。
大学などのアカデミアのポスト、例えば教授や准教授の場合、公募で集まった国内外の候補者の中から業績や適性などを鑑みて、採用者が決定されます。近年、国内のポストを巡る競争は厳しくなっており、博士号をもつ研究者であっても希望するポジションを得ることは難しくなっています。1件の公募に対して10や20を超えるような応募者が殺到することも珍しくないと聞きます。このような公募戦線であがいている研究者のことを俗に公募戦士と呼ぶことがあります。

公募に応募するのは、正直、しんどいです。
実際、機関ごとに異なる書式の提出書類を準備しなければなりませんし、ときには上司やメンターからの推薦書も集める必要があります。そうして入念に準備をして応募しても、なかなか書類選考を突破できませんし、面接で落とされることもあります。しかし、国立大学などで自身のラボを立ち上げて、やりたい研究を進めていこうと思えば、やはりこの公募という戦場を避けて通ることはできません。

私もまた、ここ数年、公募戦士として戦線に参加していました。
英国大学院で学位取得の目途が立ってから帰国して、民間病院を経て、医局に戻り、助教をしながら臨床、研究、教育に従事していましたが、「自分のやりたい放射線研究をしたい」と思い、学内外の公募、すなわち旧帝国大学や地方国立大学の教授や准教授の公募に応募していました(私の所属医局にはとても理解のある教授がいたのでたいへん助かりましたが、医局によってはなかなか許してもらえないかもしれません)。
例えば、2019年度に某地方国立大学の教授選に応募したところ、面接を経て、最終候補の一人になりましたが、結局、敗北しました。その時に採用された方は、私よりも10歳以上も年長者でしたが、客観的に見て私よりも研究業績が乏しく、10年、20年後の教室の成長や将来性については火を見るより明らかでした。しかし、それでも負けることもあるのです。研究業績だけが評価軸ではなく、人格、教育実績、そしてコネなどの様々な要素が考慮されます。
2020年度に某旧帝国大学の特任准教授ポストの公募に勝つことができ、2021年1月から着任しました。しかし、そのポストは自身のラボを立ち上げて、好きな研究ができるというポストではなかったし、その他にも色々な問題があったので、引き続き、公募戦線に留まることにしました。そして、2021年度の北海道大学の准教授ポストの公募に挑み、なんとか採用されたのでした。
こうして、なんとか自身のラボを立ち上げることができることになりました。

ラボの運営は、新規性のある成果を出して論文として発表したり、特許を取得しながら、一方で学生や若手研究者を指導して、後進を育成することもしなければなりません。研究と教育を高水準で達成する必要があります。
ラボ設立に向けて期待と不安が胸がいっぱいです。


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