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水上勉「飢餓海峡」

2010年02月02日 21時31分46秒 | ブログ

最近、ミステリー小説にハマっている。だいたい一冊を2日で読むペース。
移動時間やお風呂、寝る前も熟読してしまうほどなのです。
その中でも面白かった作品を紹介したいと思います。

水上勉 『飢餓海峡』 評価★★★★★

これはかなり古い作品で、昭和37年から「週刊朝日」で1年間連載され、完結しなかったので、続編を半年かかって書き足して発行された小説。

昭和29年9月26日の岩内町の大火災と、同日に起きた洞爺丸の転覆事故をヒントにこの作品を書いたと言う。その後、内田吐夢監督によって飢餓海峡は映画化されました。三国廉太郎が主演を務め、日本映画の歴史に残る作品となったそうです。テレビドラマや舞台にもなっているらしい。

[ストーリー]
 戦後間もない頃、北海道を襲った台風により層雲丸が転覆し多数の死者を出す事故が発生。遺体収容にあたった函館警察は、乗客名簿に記載がなく、身元不明の遺体が2体あることを発見する。同じ日、北海道岩幌町で街のほとんどを焼失する大火が発生し、同町の質屋に押し入って大金を強奪したうえ、一家を惨殺して放火した強盗殺人事件が原因と判明していた。
 函館署の弓坂刑事は、身元不明の二つの死体が質店襲撃犯3人のうちの2人であり、強奪した金をめぐる仲間割れで殺されたと推測する。同じ頃、青森県の大湊の娼妓・杉戸八重は、ふらりと現れ一夜を共にした犬飼と名乗る見知らぬ客から、思いがけず大金を渡される。現在の悲惨な境涯から抜け出したいと願っていながら、現実に押しつぶされかけていた八重に、その大金は思いがけない希望を与えてくれるものだった。その後、犬飼を追跡する弓坂刑事が大湊に現れ八重を尋問するが、八重は犬飼をかばって何も話さなかった。八重は借金を清算して娼家を辞め東京に出るが、犬飼の恩を忘れることはなく、金を包んであった新聞と自分が貸して犬飼が使った安全剃刀を肌身はなさず持っていた…。

[映画と小説の違い]
小説では八重が肌身離さず持っていたのは安全剃刀でしたが、映画では爪。
樽見が八重を殺害するシーンでは毒殺なのですが、映画では扼刹になっている。
弓坂は定年退職後、剣道の講師をしているが、映画では退職に追い込まれている。
樽見京一郎と妻の関係や、何故樽見が澱粉工場を作ったかなどの経緯は省略されている。
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これは推理小説というよりもヒューマンドラマがメインのミステリー。最初に犯人が誰かってことに触れているので、推理サスペンスではない。
超長編で字も小さいので読むのは大変でしたが、登場人物の描写も詳細で思わず物語に入り込んでしまいます。
弓坂刑事は執念の捜査を続けますが、八重の嘘を信じてしまったばかりに犬飼多吉に辿りづけず・・。
10年後に八重が殺されたことで、過去の事件の真相が明らかになるわけですが、樽見は八重が会いに来なければ、逮捕されることはなかったでしょうねぇ。
篤志家となった樽見が、刑務所に大金を寄付したことが新聞に掲載されたことが運命の尽きだったのかもしれません。
八重の純真で樽見への感謝の気持ちが、自分を死に追いやってしまったというのが、切なかった。

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