アルツハイマー病は当初臨床医学や古典的病理学の手法で行われていたため、なかなか原因を捕らえることができませんでした。しかし、1980年代頃から基礎研究が導入されて基礎が築かれ、1990年代に入って研究は飛躍的に進歩しました。その主役は、生化学(タンパク質化学)、遺伝学、分子生物学、細胞生物学、発生工学といった生命科学の最先端の分析です。今や、アルツハイマー病の基礎研究と疾患研究は互いに影響を与えるだけでなく、研究の現場ではすでに融合していると言ってよいでしょう。
以降、20世後半から飛躍的に進歩したアルツハイマー病研究の現状と将来への展望を解説することにします。一部、専門的な知識がないとわかりづらいところがあるかも知れませんが、そんなところは読み飛ばしてください。アルツハイマー病研究の概要を理解することが一番大切です。その気になれば詳しいことはいつでも勉強できます。