東京ステーションギャラリーで開催中の「大野麥風(おおのばくふう)展 『大日本魚類画集』と博物画にみる魚たち」にやっと行くことができました。


仕事のあいまにひょんな間ができて、新幹線まちの1時間弱という短い時間でしたが行ってきました!
本展覧会では、大野麥風(1888-1976年)の代表作『大日本魚類画集』の木版画全72点を中心に、江戸時代から現代までの魚類を描いた日本人作家の系譜が紹介されます。

(『大日本魚類画集』より採録した絵がはき各種。ミュージアムショップで売っています。)
今回の展覧会でわたしが一番おすすめしたいのは、麥風が描く原画(絹本彩色)と刷り見本と完成した木版画の3点が並べて展示されているコーナーです。
「原色木版二百度手摺り」といわれる色鮮やかで繊細な色調の木版画で知られる麥風が、限定500部という豪華本のために擦り師に与えた指示。
そこには、画家が木版という媒体を通して、自分のイメージする表現に近づこうとする試行錯誤がうかがえます。
その指示も、「キレイ二」というような抽象的な指示から、「線ヲホソク」「スミヲトル」といったような具体的な指示までさまざまあり、擦り見本と完成図を比較するとやはり完成図が格段に垢抜けて、洗練された色調になっているのがよくわかります。
最初から完成図だけ見ていたら、もしかしたら見過ごしてしまうかもしれません。
こうした資料はなかなか目にする機会はないので、大変貴重です。
個人的にはちょうど今、仕事で色校正に悩まされているせいもあるのか、よい勉強になりました。
というわけで、印刷業界におつとめの方、編集を生業にしておられる方にもおすすめです。
水族館で観察するだけでは飽き足らず、潜水艇に乗って魚の生態を間近に観察して、細部にまでこだわった作品を作り上げたという麥風。
魚の生態、表現の細やかさはさることながら、その背景に描かれた海底の動植物や水、海の表現の豊かさに心を奪われました。
たとえば、水面を勢いよく飛んでいく飛魚を描いた作品では、飛魚もさることながら、微妙に階調の異なる青を重ねた波の表現の繊細さに息をのみます。

(大野麥風「飛魚」『大日本魚類画集』より、姫路市立美術館蔵、絵はがきより。この写真だとちょっと見づらいですが、波が微妙に階調の異なる青で表現されています。)
彫り師や擦り師の技も確かで、これらの作品が1937年から1944年という太平洋戦争まっただなかの時代に作られたことを考えると、よくまあこれだけのことができたものだと改めて驚嘆させられます。
そのほか本展覧会では、江戸時代の「本草学」に基づき博物学的な視点で魚類を描いた作品群(栗本丹洲、高木春山)や、奈良坂源一郎や平瀬與一郎による明治・大正時代の魚貝類の資料も紹介されていて、観察眼の鋭さ、色の再現性にほれぼれとします。
美術に興味がなくても、魚好き、釣り好きという方は必見の展覧会。

(展覧会チケットもひとくふう)
もちろん、美術、特に木版画に愛を感じる方はぜひとも見ていただきたい展覧会です。
9月23日(月・祝)まで東京駅・丸の内の東京ステーションギャラリーにて開催中。


仕事のあいまにひょんな間ができて、新幹線まちの1時間弱という短い時間でしたが行ってきました!
本展覧会では、大野麥風(1888-1976年)の代表作『大日本魚類画集』の木版画全72点を中心に、江戸時代から現代までの魚類を描いた日本人作家の系譜が紹介されます。

(『大日本魚類画集』より採録した絵がはき各種。ミュージアムショップで売っています。)
今回の展覧会でわたしが一番おすすめしたいのは、麥風が描く原画(絹本彩色)と刷り見本と完成した木版画の3点が並べて展示されているコーナーです。
「原色木版二百度手摺り」といわれる色鮮やかで繊細な色調の木版画で知られる麥風が、限定500部という豪華本のために擦り師に与えた指示。
そこには、画家が木版という媒体を通して、自分のイメージする表現に近づこうとする試行錯誤がうかがえます。
その指示も、「キレイ二」というような抽象的な指示から、「線ヲホソク」「スミヲトル」といったような具体的な指示までさまざまあり、擦り見本と完成図を比較するとやはり完成図が格段に垢抜けて、洗練された色調になっているのがよくわかります。
最初から完成図だけ見ていたら、もしかしたら見過ごしてしまうかもしれません。
こうした資料はなかなか目にする機会はないので、大変貴重です。
個人的にはちょうど今、仕事で色校正に悩まされているせいもあるのか、よい勉強になりました。
というわけで、印刷業界におつとめの方、編集を生業にしておられる方にもおすすめです。
水族館で観察するだけでは飽き足らず、潜水艇に乗って魚の生態を間近に観察して、細部にまでこだわった作品を作り上げたという麥風。
魚の生態、表現の細やかさはさることながら、その背景に描かれた海底の動植物や水、海の表現の豊かさに心を奪われました。
たとえば、水面を勢いよく飛んでいく飛魚を描いた作品では、飛魚もさることながら、微妙に階調の異なる青を重ねた波の表現の繊細さに息をのみます。

(大野麥風「飛魚」『大日本魚類画集』より、姫路市立美術館蔵、絵はがきより。この写真だとちょっと見づらいですが、波が微妙に階調の異なる青で表現されています。)
彫り師や擦り師の技も確かで、これらの作品が1937年から1944年という太平洋戦争まっただなかの時代に作られたことを考えると、よくまあこれだけのことができたものだと改めて驚嘆させられます。
そのほか本展覧会では、江戸時代の「本草学」に基づき博物学的な視点で魚類を描いた作品群(栗本丹洲、高木春山)や、奈良坂源一郎や平瀬與一郎による明治・大正時代の魚貝類の資料も紹介されていて、観察眼の鋭さ、色の再現性にほれぼれとします。
美術に興味がなくても、魚好き、釣り好きという方は必見の展覧会。

(展覧会チケットもひとくふう)
もちろん、美術、特に木版画に愛を感じる方はぜひとも見ていただきたい展覧会です。
9月23日(月・祝)まで東京駅・丸の内の東京ステーションギャラリーにて開催中。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます