どうもこんばんは、令和無色です。
久しぶりに図書館に行って、読書しました。
まぁなんといってもまた古本を買ってきましたんで、
そいつを読んでいきましょう。
では本題。
{本編}
今回紹介する書籍はこちら。
『片眼の猿』
道尾秀介さんの作品。2007年に刊行された作品。
単に安かったのと、裏表紙に描かれたあらすじに「盗聴」という文字が見えて
変わった設定に心惹かれたことが購入の動機である。
ちょっとネタバレになります。あくまで自分の感想になるので、
一切読書しない方や、ネタバレを気にしない方はどうぞご覧ください。
主人公は三梨という男性で、特徴的な耳を持ち合わせて、
探偵事務所ファントム?という探偵会社を営んでいる。
ちょっと変わった設定ではあるものの展開自体は
テレビで見る2時間ほどのミステリーやサスペンスみたいに、
犯人が二転三転して真相にたどり着くもの…
とは全く違います。これはハッキリ言っておこう。
いろんな事件が複雑に絡み合って、
最終的に一つのピースに繋がることは違いないけど、
終盤になって、怒涛の( ゚д゚)ラッシュである。
すごく小説の利点を活かした作品でした。
まず普通にストーリーとして面白かったですね(´∀`)
ミステリーって基本警察が主人公になることが多いけど、
この作品の主人公は探偵、しかも盗聴を得手とする
っていう犯罪スレスレの手法を使う。
しかもなかなか大胆である。
本作のキーパーソンである冬絵という女性をスカウトするのだが、
仕事の盗聴中に聞いた話がスカウトするキッカケになっている。
いや盗み聞きして面白そうだと思った人を調べて、
スカウトするって普通に変である。
少し話が逸れたが、ストーリーをまとめて話すと
ライバル会社がクライアントの楽器のデザインを盗用してないか
調査するよう依頼される
↓
先日スカウトした冬絵とライバル会社に侵入する
↓
クライアントから手がかりを聞きつけ、
盗聴するとライバル会社で殺人事件が発生
↓
殺人事件から冬絵に似た容疑者が浮かび上がる。
↓
冬絵が前に働いていた探偵事務所『四菱エージェンシー』に連れ去られる
↓
なんとかして冬絵を取り戻し、データベースのpcを奪う
↓
過去に同居してた秋絵の死に「四菱エージェンシー」が関与してたことを知る。
↓
クライアントの部下「刈田」は過去に冬絵に強請られており、
愛人の部下と殺人事件を起こして、
冬絵に復讐しようとしたことを主人公と答え合わせした
↓
包丁で刺されたけど、ポケットのゴム人形のおかげで助かる。
↓
クライアントから口止め料をもらい、刈田たちは警察に捕まる。
終わり
と言った感じ。最後に点と点が結びつくので、
納得したエンディングとなった。
最初の主人公と同居してた”秋絵”の話は、
刑事ものでよく見る
身内を殺した犯人が見つかってない展開かなと考えてました。
途中で秋絵の家で主人公が泊まるシーンで、
秋絵の両親が他殺なんじゃないかと実は考えてるっていう
あの描写とか、読んでる自分もそうなんじゃないかと考えてた。
でもそんな簡単な話じゃなかった。
秋絵っていう名前で髪が綺麗で身長が高いのとと同居・同棲って言葉から
勝手に主人公の奥さんかと思い込んでいた。
でも実は秋絵っていうのは体は男性で、
心は女性っていう性同一性障害に近い人物像だったことが、
データベースのpcを見ることで、判明。驚きのあまり頭を抱えました。
( ゚д゚)「え、男性だったの?」
しかもそこから、「ローズ・フラット」の住民たちのことも
続々と明かされていった。
隣の部屋に住む双子の女の子たちはそれぞれ片腕を失っていたり、
助手の帆坂くんは生まれつきの病気で足を失っていたり…
( ̄ー ̄ )?「そんな様子全然書いてなかったやん」
と思っていましたが、実は全然関係ないような日常編みたいなところとか、
住民たちが主人公のピンチを救いに来た時とかに
実は伏線があったんですよ。
例えば
・隣の部屋に住む双子の少女たちはテレビゲームをするときに一つのコントローラーを2人で持ってゲームをしてる
・みんなで焼き豚パーティーをしている際にまき子おばあちゃんが帆坂くんの頭を撫でようとするんだけど、微妙に位置がズレている
・主人公が四菱エージェンシーから逃げるときに、帆坂くんではなく双子の少女が運転してる。
↑これなんかは「なんで少女が運転できるの?」と
そっちに意識が向いてしまうため全然気が付かなかった。
そして主人公の「特徴的な耳」という表現も
最初はスゴいデカいのかと思ったら、
まさかの耳がなかったっていう真相。
これに関してはちゃんとミスリードも用意されていた。
それは主人公が耳を隠すために使っているヘッドフォンの説明で
「耳が全て隠れるようなタイプ」を使っているっていう部分。
これをみたら大抵デカいと想像してしまうだろう。
小説は基本文字で情報を読み取っていく。
つまり、登場人物や空間の雰囲気や料理の表現など
全て言語化して読者に伝わっていく。
最初は今後どんな展開になっていくのかに注目してしまい、
本筋からズレた部分はすらっと読み進んでしまうが、
実はそんな描写に、最終的に明かされる登場人物の秘密が詰まっていた。
これをドラマでは表現できないというか、
最初から思いっきりネタバレである_:(´ཀ`」 ∠):
そんな変わった目で見られてしまう身体的な特徴をしている登場人物たち。
実はこの本の題名でもある『片眼の猿』は現実にある話で、
「999匹の猿の世界でみんな片眼しかないその世界に生まれた
両目の猿が最終的には自分でその片眼を取ってしまう」
というまぁなんとも言えない後味の悪いような話ではあるが、
これが登場人物たちの話とうまいことリンクしている。
自分はその教養がなかったので、勉強になったのと共に、
秋絵や冬絵のように身体的な特徴で深く傷つく人間と
ローズフェルトの住民のように障害を吹き飛ばすように
前向きに笑っていられる人間とその違いは一体何なのか。
それは『人を見て「人」だと思える感覚だ』
という主人公の結論に集約されていると私は思う。
同情や偏見といった眼差しではなく、1人の人間としてみること。
それは決して特別なものではないが、簡単に身につくものでもない。
でもそういった教訓をこの本から学びとれた気がします。
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