桐生の小6女児自殺:明子さん告別式、母親の号泣響く 児童ら90人が参列 /群馬毎日新聞 10月27日(水)11時35分配信
「上村明子さんへ。上村さんと過ごした日々を振り返って見ると、いろいろな思い出がありました」。26日に営まれた桐生市立新里東小6年、上村明子さん(12)の告別式。児童代表の男児が弔辞を読み上げた。正面には明子さんがほほ笑む遺影。「授業中は静かに集中して取り組んでいて、上村さんは僕のお手本でした」。会場には母親(41)の号泣が響いた。【塩田彩、角田直哉】
告別式はみどり市内の斎場で、午後1時半に始まった。参列したのは同じクラスの児童38人を含む約90人。会場に入りきらず、外にあふれる参列者もいた。
児童代表の弔辞では、修学旅行で鎌倉に行った時のことや、運動会を前に明子さんがマーチングの練習に一生懸命取り組んでいたことなどが報告され、「突然亡くなってしまってとても悲しいです。天国で安らかに眠れるようにいつまでも願っています」と結ばれた。
続いて「原因は学校でのいじめ」と訴える父竜二さん(50)があいさつに立ち、「明子は平成22年10月23日午後1時12分、たった12歳という若さで生涯を閉じました」と切り出した。竜二さんは参列者に明子さんのことを「とても明るい子で、勉強も運動も一生懸命頑張っていた。ただ、寂しがり屋だったので、学校では友達をたくさん作りたいといつも言っていました」と家庭での様子を語った。
そして多くの児童が最後の別れに集まってきてくれたことに感謝し、「心からお礼を申し上げます。本日は本当にありがとうございました」と述べた。竜二さんのあいさつの途中から、母の涙が止まらなくなり、会場は大きな悲しみに包まれた。
一方、岸洋一校長(59)は弔辞で「明子さんのつらかった、苦しかった思いを精いっぱい受け止めて二度とこのようなことが絶対起きない、起こさないことを明子さんの前に誓い、全力で取り組みます」と述べた。
明子さんの思い出として、図書室の本の整理など、みんなが使う図書室づくりにまじめに取り組んでいた姿や、運動が得意だったことを紹介し「何事にも一生懸命取り組む優しい人でした。しかし、教室の明子さんの机に明子さんが座っていないのを目の当たりにして、とても悲しく心が痛みます」と語った。
告別式後、竜二さんは報道陣に「明子は自慢の子だった。いじめた側や学校を許したわけではない。学校関係者には、もう一度明子のお骨の前で謝ってもらいたい」と話した。
10月27日朝刊
桐生の小6女児自殺:娘は学校でひとりぼっち 父親「解決策示されず」 /群馬
桐生市立新里東小6年、上村明子さん(12)が23日、同市新里町新川の自宅で首をつって自殺した。派遣社員の父竜二さん(50)は25日、「学校でのいじめが原因」と訴え、実名での取材に応じた。「娘は学校でいつも一人ぼっちだった。私が学校に相談に行っても解決策が示されなかった」と涙ながらに話した。SOSはなぜ届かなかったのか。教育現場に重い課題を突きつけている。【塩田彩、角田直哉】
◇引っ越し計画の矢先
竜二さんと母親(41)によると、事件は引っ越しを計画していた矢先に起きた。明子さんはクラスメートに無視されるなどのいじめを受け続けていると訴え、「お父さん、お母さん、転校したい」「どんなに遠い学校でもいいから歩いて行く」と話していた。このため、来春の中学進学を機に、引っ越しで校区を変えることを考えていたという。
明子さんは先週、火曜日から2日連続で学校を休んでいた。今秋から給食は決められた席ではなく、班をつくって食べるようになり、明子さんが孤立したのが原因と両親は見ている。木曜の校外学習に出席すると、同級生には「こんな時だけ学校に来るな」と責められ、母親に「もう学校に行きたくない」と涙ながらに訴えたという。竜二さんはこの日、学校に電話し、いじめや給食時のグループ分けについて「なんとかしてほしい」と頼んだ。担任は「話し合ってみます」と応じたという。金曜日にはまた学校を休み、事件は土曜日に起きた。
この日朝、明子さんは午前9時ごろに起き、朝食も食べた。明子さんに普段と変わった様子はなく、竜二さんは明子さんに「ジュースを買って」と頼まれ、外出してグレープソーダの缶ジュースを買ってあげたという。竜二さんは午前11時ごろ外出した。正午ごろ、母親が子供部屋で物音がしないのを不審に思って部屋をのぞくと、カーテンレールを使って首をつっていたという。遺書は見つかっていない。
明子さんは竜二さんの仕事の都合で転校を繰り返し、新里東小は4校目。以前通っていた名古屋市内の小学校では、友達も多く明るく振る舞っていたという。
竜二さんは「娘には『あと少しだけ我慢しよう』と言い聞かせていたが、もう我慢できなかったのか……」と話し、肩を落とした。
◇泣きじゃくる妹、声響く通夜式場
明子さんの通夜が25日午後6時から、みどり市内の式場で営まれた。明子さんが通っていた新里東小の児童の親や学校関係者ら約70人が参列。父竜二さんは焼香する参列者に頭を下げ、母親は終始うつむいて顔を手で覆っていた。また、明子さんの小4の妹(10)の泣きじゃくる声が式場内に響いた。
通夜には同小の岸洋一校長も駆け付け、遺族に深々と頭を下げて焼香した。明子さんの母親が「(娘を)返して」と泣き叫ぶと、岸校長はしばらく立ちつくした。校長はその後、両親の前へと歩み、両ひざを床について椅子に座る両親に話しかけた。
岸校長は通夜終了後報道陣に「二度と同じことを繰り返さないと約束しにきた。明子さんにつらい思いをさせてしまい申し訳ないと謝った」と話した。26日の告別式には同じクラスの子供たちを参列させる予定という。
参列した小4女児の母親(36)は「明子さんは礼儀正しくてあいさつもできる良い子だった。かわいそうとしか言いようがない」と話した。小5女児の父親(41)は「同年代の子供を持つ父親として焼香しに来た。自分の娘だったらと思うとやりきれない」と話した。【塩田彩】
◇「いじめ判断できず」 両親訴えに校長が釈明
新里東小の岸洋一校長(59)は25日午後5時から、同小の視聴覚室で記者会見に臨んだ。6年生になってからの明子さんの欠席日数は9月までに1日だけだったが、10月は5回に及んだという。
岸校長は明子さんについて「低学年の子や特別学級の子の面倒見が良かった半面、同級生と仲良くするのは苦手だったようで、1人でいることが多かった」と話した。
両親は「学校でのいじめが原因」と訴えているが、岸校長は「(一部同級生との関係が)良くない状態にあったのは間違いないが、いじめという認識はなかった。明子さんからの話を聞く機会もあったが、いじめとは判断できなかった」と釈明した。
明子さんの父竜二さんは、いじめ対策について学校側に何度も申し入れたと話しているが、岸校長は「5年生の2学期ごろに相談があったが、その時は子供たちに指導し改善した。6年生になってからは1、2回相談があり、21日にも給食について相談を受けた。(自殺前日の)22日に(給食について)改善したとの報告をするため担任が家庭訪問したが、家族は出かけていてお会いできなかった」と話した。【喜屋武真之介】
◇いじめに関する報告はなかった--市教委
市教委によると、23日午後2時20分ごろ、同校の教頭から「児童が死亡した」と連絡があった。24日に岸校長らと意見交換したが「最近休みが多くなった以外、問題は浮かばない」との報告を受けた。
また同校からこれまで、明子さんのいじめに関する報告を受けたことはないという。児童が月6日以上欠席すると、学校は市教委に書面で報告するが、明子さんについては報告が上がったことはなかった。【塚本英夫】
◇全校集会と緊急保護者会を開く
明子さんの自殺を受け、新里東小体育館で25日午前8時半から全校集会が開かれた。岸洋一校長によると、自殺という言葉は使わず「23日に明子さんが命を絶った」と報告すると、児童らは驚きの表情を浮かべたという。
一方、25日午後4時からは同体育館で緊急保護者会が開かれ、約200人が集まった。参加した保護者によると、岸校長からは「いじめがあったかどうか、現段階では分からない。事実関係を調査している」との説明があった。
小5男児の父親(43)は「『調査中』ではなく、今、学校が把握していることを聞きたかった」と話した。また、小6男児の母親は「突然のことで親も子供もショックを受けている。当事者の保護者の気持ちを考えるといたたまれない」と話した。【鈴木敦子、喜屋武真之介】