企業価値を高めようという号令を職場で聞くことがあるがよく分からないという人は多いのではないか。
かつて自分もそのようなことがあったが本や関連資料を読んでも長々としてよくわからず、企業価値向上といっても具体的に誰が何をすれば良いということなのか悶々とした。
日本公認会計士協会が2013年に出した『企業価値評価ガイドライン』は公開されていて無料でダウンロード出来るものの170ページあって読み難く、
マッキンゼー社の『企業価値評価』は上下そろえると9,000円を超え読み難く、
結果として「企業価値」という言葉は号令に使われるもののあまり関わることのないもののように思われる。
企業価値を向上した取り組みとはどのようなものなのか調べると、日本取引所が具体的に説明をつけて企業を表彰しているウェブサイトが見つかる。
このサイトの中で企業価値を高めた取組みとして認めた企業の評価ポイントを数年分さかのぼってみていくと、
・ROE(Return On Equity)という「企業の自前の資産額」に対する年間利益額の比率、
・ROIC(Return On Invested Capital )という「企業が事業に用いる総額」に対する年間利益額の比率
といった指標を用いて、「資本生産性を踏まえた経営管理の仕組みを構築」するということになっている。
この経営管理の仕組みとは何かみていくと、2014年度に大賞を取ったオムロン社が具体的に説明している。
(オムロン社は立石一真氏による創業以来の優良企業であることに加え、2007年から有力経営コンサルタントである冨山和彦氏が長く社外取締役を務めた会社でもあり、その経営管理システムには当代一流の知見が結集されているのではないかとも思っている)
このウェブサイトの説明(特にページ下部のPDF)によれば、この経営管理の仕組みではROICの式から指標を一つ一つ導き出し、
・一人あたり生産台数
・在庫月数
等といったレベルに分解して社員全員へ共有している。会社の業務成績と活動が結び付き、共有のものさしとして機能するよう検討されているのだ。
また、経営陣の製品・サービス群の管理もROICの観点から行われている。
(これらはダイヤモンド誌のウェブ記事でも説明されている。)
そしてこの経営管理のもと、その後も優良な業績が続いている。
つまり、「企業価値向上に努めなさい」と呼びかけられた場合、具体的に何をするとどれくらい企業価値に貢献するのか分かるような指標の設定や説明が無かったら、それは経営陣の努力不足、或いは一流の仕事をしていないということではないかと考え、
・「(ドラフトを作って)こんな感じで作ってはどうでしょうか」
・「一流企業はこんなものを作ってますがうちでも作りませんか」
と提案してみるタイミングであると考えるのが良いのではないか。ROICは大前研一氏の企業参謀(1975年)にも紹介されている指標であり、長く有効活用されている優れた分析ツールであると思う。
レポートバンクの作品一覧
様々な業界の企業をみたレポート