銀行の数が多くあって相互に競争することは、「金利の引き下げ」「接客サービスの向上」「アプリ機能向上」など良いことが多いのだが、特定行向けATMや他行振込手数料など負の側面もあった。
特にオンラインサービスとコンビニATMで入出金・振込み・住宅ローンまで出来るようになった現代において、店舗が地元に沢山あることは消費者にとって昔ほど良いことでもない。
そうなると、消費者の視点からは銀行が多数あることについて、他行振込料金の負担など負の側面に自然と目がいくことになる。
この点について、2019年には三菱と三井住友でATMの共同利用化が行われ(プレスリリース)、地方銀行の統合によって店舗等も統合が進むなど、確実に消費者を取り巻く環境は負の側面撤廃に向けて前進を続けていて、今なおその途上にある。
【背景】
その背景には銀行ビジネスが「低金利の長期化」や日銀の金融資産購入による「社会のお金の量増加」により儲かりにくくなったことが挙げられる。
お金が沢山社会にあるので貸す時に高い金利を取りづらくなったのだ。また、日本の国債も金利を付けてくれなくなり、国債で人々の預金を運用しても儲かりにくくなっている。
NHKの記事で赤字になっている地方銀行も報道されるなど厳しい経営環境は、やるべく店舗やATMの維持費を減らすことに銀行を向かわせており、これが共通化や統合に進めるのだ。
直接消費者から見えないところでは、決済や資金運用を担う後方部門やシステムの共通化も取り組まれていて、SBIグループはこれを提供することで地銀を助けつつ銀行連合の結成を意図している。
そして規模が大きくなった銀行は実際に稼ぎに占める経費の割合が低い。(独立行政法人のまとめた説明)
加えて、菅政権の改革の一つとして地銀再編に対する独占禁止法の特例を作ったことがあり、地銀の数は2020年に100行を下回った(ウェブ記事)など再編の気運は加速している。
【今後】
こうした動きは今後も続くはずだ。例えば背景の一つである低金利は、
「資金を借りたい人」<「資金を貸したい人」
という図式があるから成り立つのだが、日本は少子高齢化で20-65歳あたりの人口は減っている一方でお金を持つ高齢者は増えており、この図式が崩れることは当分ないことが大体予測できるからだ。
但しこれは先進国の必然ではない。移民を受け入れ、先進国でありながら人口が増え続けているアメリカはこのようなことがなく経済成長を続けている。
ラグビーで民族多様性を感じさせた日本ではあるが、積極的にチャレンジして経済的成功を掴もうとする移民受け入れが仮に進むのであれば他の在り方もあるのかもしれない。
マクロ環境を反映する銀行の経営状況をみていくと今後の社会の豊かさをどう確保するべきか考えさせられる。
これからの動向も引き続き見ていきたいと思う。
様々な業界について過去のトレンドもふまえつつ動向をみているレポート。銀行業界もみている。