ある税理士のつぶやき(旧:とある明石の弁護士、つれづれ日記)

弁護士(りんどう法律事務所)を廃業し、現在、姫路市で税理士をやっています。折に触れ、生活情報等をつぶやきたいと思います。

遺留分その2-遺留分に対処するには

2011-09-07 18:42:46 | 遺言・相続

すみません、以前に遺留分のことを書いてから、ずいぶん期間が経ってしまいました。

前回は、「遺留分とは?」と言うことを書いたのですが、あまりに期間が経ってしまったので、再度遺留分について、簡単にまとめたいと思います。

その後に、「どうしても、あの子には遺産をやりたくない。」という時にはどうしたらよいか、と言うことを述べたいと思います。

遺留分とは:
一定の相続人(配偶者・子供(孫)・親等。)であれば、たとえ遺言で何も相続させてもらえないように書かれていても
、請求することによって必ずもらえる相続分の割合

 例えば、「全財産は、妻とB子に相続させる。」という遺言があっても、長男A男が「自分にもよこせ。」と請求すれば、本来の法定相続分の1/2はもらえるということなのです。

その割合は、親だけが相続人の場合は、本来の法定相続分の1/3
        親と妻、妻と子供、子供だけ等それ以外の時は1/2
        です。

参考:民法1028条
    兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。
    1 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
    2 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

では、どうしても遺産をあげたくない子供等について、どのようにすればあげないですむか、について述べたいと思います。

まず、遺留分権利者の遺留分を完全に無くす方法を考えたいと思います。

これによれば、「A子に全財産を相続させる。」という遺言をすれば、財産をあげたくない相続人が、「遺産をよこせ。」と請求しても、遺留分がないのでもらえません。

一つめは、前にお話しした「廃除」(民法892条)を利用することです

  • 廃除は、生前に家庭裁判所に申し立てます。
  • 遺言で申し立てることもできます。その場合は、遺言執行者が家庭裁判所に申し立てます。遺言執行者は、弁護士等である必要はなく、身内の者でも構いません。

  ただ、

  • 裁判所が判断するので、申立てたからといって必ず廃除できるとは限りません。
  • そして、裁判所が、廃除を認めてくれる場合が、かなり限られています。
  • また、前にも述べたように、廃除される人に子供がいれば、その子供が相続人になるため(代襲相続)、子供が未成年の場合等、親である廃除したい人が、結局、遺留分を行使して、財産をいいように使ってしまう恐れがあります。

   → 結局、実際に相当な虐待が行われていたというような場合出ない限り、単に「廃除し
     たい」という思いだけでは廃除できませんし、確実性がないので、あまり使える制度で
     はないと思います。

     認められた裁判例で、ちょっと変わったものとして

   「小中高校時代に非行を繰り返し、反対したにもかかわらず、暴力団の一員と結婚し、披露宴の招待状に、招待者として父の名を印刷し、父母の知合いにも送付した。」

   というものがあります。 

二つめは、「遺留分を放棄」(民法1043条)してもらうことです

  • 生前(相続開始前)の放棄は、家庭裁判所の許可が必要です。
  • 遺留分権利者が申し立てるので、裁判所の許可は出やすいです。

  そして、

  • 通常は、ある程度のお金を支払って、遺留分権利者に遺留分を放棄してもらいます。
  • 遺留分を放棄してもらいたいような人は、放蕩息子・娘、道楽息子・娘が多いですから、目の前にお金を積まれて、説得されれば、自分から放棄してくれる人が多いのではないのでしょうか。ですから、本来の遺産の何分の一、何十分の一で遺留分を放棄してくれるかも知れません。
  • また、地方では、まだ長男の家督制度らしきものが残っていて、長男以外の兄弟姉妹に予め遺留分を放棄(相続放棄ではありません。)してもらって、親が「長男に後を継がす」というような遺言書を作ることで、後の遺産相続争い防いでおく。。。という利用のされ方もあるようです。

次回は、遺留分を行使されても、できるだけ財産を渡さない、という観点で遺留分対策を考えたいと思います。