定年夫婦のピースボート乗船記
乗船にあたって
37年にわたる公務員生活を終え、頑張った自分達へのご褒美として、また新たな人生のスタートをきる節目として2006年4月5日出航の第53回ピースボート世界一周の船旅に参加した。
世界一周船の旅は私にとって片思いのように、かなえられないあきらめが含まれた長年の夢であった。30年代後半から40年代始めに向かえた私たちの青春時代は圧倒的な欧米文化の洪水の中にあった。欧米に恋い焦がれていた私はいつか日本を脱出して海外に行ってみたい、住んでみたいとの思いに取り憑かれていた。そして小田実の「1日1ドル世界貧乏旅行記」、ミッキー安川の「風来坊留学記」や兼高かおるの世界旅行のテレビ番組に心躍らせた。
しかし,就職し家庭を持ち、日常に埋没して思いはいつしか萎んでいった。海外旅行が自由化され自由に海外に行けるようになった時は30歳を超えていた。時間とお金をやりくりして10回程アジア、ヨーロッパへ行くことができたが所詮1週間から10日間の名所旧跡を訪ねる忙しい旅であった。それでも飛行に乗り初めて異国の地に着いた時、どれだけ感動したか今でもよく覚えている。
数年滞在して現地の人々との交流ができたら、あるいはゆっくり船で世界がまわれたらとの思いが常にあった。そんな時ピースボートの世界一周船の旅がスタートしたとの報道を見て夢が現実に近づいたように思えた。しかし、豪華客船に比べ大幅に安い船賃であったが100日間職場を休むことは不可能であったし安いとは言え4人の子供の教育費等考えると二人分の船賃を捻出することは到底無理であった。
50歳台は仕事のこと子供のこと無我夢中で過ごし気がついたら定年が迫っていた。定年の前年の夏、旭川にいる息子に会いに行った時、忘れかけていた青春時代の夢をかなえるチャンスが巡ってきた。レンタカーの事務所で定年直後の4月5日に出航するピースボートのポスターを見た妻から船に乗ろうと言う思いがけない提案があったのだ。定年後は自分のやりたい仕事をする、勤めはしないと決めていたので当面時間はたっぷりあり、子供達も独り立ちしたし、船賃も何とかなりそうであったので思い切って乗船する決断をした。
旅は準備、旅、思い出と3度楽しむものと言うが、日々の生活に追われながらも寄港地に関する勉強や持っていくものの準備は楽しく定年と言う不安をあまり感じないで済んだ。
準備しながら定年後は子供や仕事中心から夫婦の思いを最優先させていこう、船の中でゆっくり自分達のこれまでの人生を総括し、定年後は何をなすべきか考えよう。そして船の旅をしっかり楽しんで寄港地ではなるべく多くのものを見て、地元の人との交流をしていこう。この体験を自分だけのものではなく子供達や友人や盛岡の人にも伝えよう。自分の目で見、感じた風景を写真を撮り、その思いを記録しよう、そして自分にとって夫婦にとって最高の旅にしようと決心した。
長い報告になると思いますがピースボートに参加した気分になっていただければと思っています。
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