「読まなかったことにしてくれ!!」

タイダイ染め,絞り染めで浮かび上がるマンダラ模様に今日も必死(-v-)

2006/10/27

2006-10-27 12:40:14 | Weblog
五年ほど前、旅っていうか仕入れの途中で、いつものように飛行機に乗り込んだ時の事だ。
妙に落ち着かない奴がいる。
痩せた、ひ弱そうな、優しそうな欧米の、十代も終わりかけてるくらいの、少年。
メガネの奥の目は、いつも人に迷惑かけないように休まる事がない。
だからだろうか、ああ、また人に席を譲ってる。
彼が最初に座るはずだった席とは随分離れてしまった。たらいまわしだね。
一人で来たんだな。一人で旅を決意して、安心して眠れるはずの、いつものベッドに別れを告げたんだよな。世界や、まだ見ぬ人や、まだ見ない夜や昼、膨大な孤独を覚悟してでも、まだ見ぬ自分、家族が欲しかったんだよな。
だから一人で旅に出たんだよな。まぁな、アイツラにゃ一生わかんねえよ!!と言ってやりたいところだが。
飛行機が離陸すると、その少年の反対側の窓際に座ってる老人が、シャッターをきっている。フラッシュたきまくり。いや夜だけど、夜景はフラッシュたいたくらいじゃ写んないじゃないか?心配させやがるジジイだぜ。
ジジイはそれでもシャッターをきりまくる。その眼は小さな子供にチョコレートをあげた時と同じ。キラキラしてる。苦渋と年輪を感じさせるしわくちゃの顔に、子供と同じ目が光っている。おそらくは家族のために、おそらくは愚直にそのシワ一本一本に生活を刻んできたのではないか。
そして人生の最期のあたりで、どうしても世界を見たかったんじゃないか。
家族は心配しても、最後にはいってらっしゃいと言ってくれたんじゃないか。
ずっっと夢見た世界に、今まさにいるんじゃないか。考えてる内にバンコクに着いた。短い、一時間ほどのフライトだったからね。
飛行機からタラップをおりた通路で、先程の二人が、偶然にも横に並ぶ。そして、ジジイが少年に話かけた。少年は嬉しそうに返事をしていた。
そこから後は知らない。
ひょっとすると空港を出てすぐ別れてしまったのかもしれない。
ただ俺はあの後、あの愛すべきキャラの二人が一緒に旅をしたんだと想像するのが好きだ。
どんな旅だったろう。良い旅を!で別れるまで、どんな言葉をかわすだろうか。少年の気持ちは大体わかるけど、老人の気持ちはまだわからない。いつか家族のために闘いぬいたら、ジジイの気持ちがわかるかもしれない。
そしたら小説として書いてみようかと思う。
きっと自費出版だな。一生インディーズやな(>_<)
上、中、下巻にして、中くらいでくたばるのがクズらしくて良いかもしれない。
コメント
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